「漫画から飛び出してきたような2人」。TBSドラマストリーム『からかい上手の高木さん』がスタートしてから各所で叫ばれている言葉だ。本作は、山本崇一朗によるシリーズ累計発行部数1200万部を突破した同名コミック(小学館『ゲッサン少年サンデーコミックス』刊)をドラマ化した、“照れたら負けのからかい青春ラブコメディ”。
実写映画の公開も5月31日に控える中、映画版と同様に今泉力哉が監督を務め、思春期の淡い恋模様を甘酸っぱく描き出している。主人公となる高木さん役の月島琉衣と西片役の黒川想矢はどんな思いで撮影に臨んでいたのか。放送前の3月某日に話を聞いた。
●今泉力哉監督は「思い出すとちょっと泣けてくるぐらい優しい」
――『からかい上手の高木さん』は小豆島で1カ月間撮影をしたそうですね。島での撮影はいかがでしたか?
月島琉衣(以下、月島): 1カ月もの期間、一人でどこかに行くこと自体が初めての経験でしたが、一人暮らしは楽しいものだと気づきました。小豆島の景色は綺麗だし、いつも海が見えているので清々しい気持ちで撮影ができました。小豆島のエキストラの方とも交流しましたが、街の皆さんが温かくてすごくいい島です。
黒川想矢(以下、黒川):毎朝、カーテンを開けたら海があってフェリーが通っている生活はすごく刺激的でした。それを1カ月も続けられたことが楽しかったです。西片が島で生まれ14年間生活をしていく中でどんなことを考えていたのかも、実際に島に滞在したことで色々と感じることができました。すごく気持ちが良くて楽しかったです。
――月島さんは、自分が高木さんと似ていると思う部分はありますか?
月島:私は、性格の面では高木さんと正反対ですね。だから撮影に入るまでは、原作を読んで高木さんの凛とした大人っぽい性格を理解したり、声のトーンや話し方のテンポなどを意識的に変えようとしたりしました。実際に撮影期間に入ったら、いい意味で何も考えずに自然体で演じることができたので、そこは良かったと思っています。あとは、高木さんの攻略本(※からかい上手の高木さん公式ファンブック『私のわき腹をつついてみてよ。』(小学館))を買って島に持って行きました(笑)。
――まさに参考にするのにぴったりな本があったわけですね。
月島:それを西片に見せてあげたかったけれど、見せませんでした(笑)。
黒川:そういう本があるなら、(からかい勝負に)勝てたかもしれないのに(笑)。
――黒川さんは西片と似ている部分はありましたか?
黒川:役と似ているかどうかは自分ではわからなくて。でも月島さんや今泉監督が似ていると言ってくれているので、似ている部分もあるのかもしれません。
――本作のほとんどが高木さんと西片の掛け合いのシーンになりますが、初共演の2人がコミュニケーションをどのように取っていたのかを教えてください。
月島:高木さんと西片の関係は普段の何気ない雰囲気を出すことが重要だと思ったので、撮影期間中も普段から仲良くしていました。撮影の合間には読み合わせなどをして過ごし、一緒に作り上げていくことができたと思います。監督から、中学生らしい「楽しさ」とか「明るさ」は常に保っていてほしいと言われていたので、そこも意識しながら演じました。
黒川:最初に会った日は何も喋らないで終わってしまい「どうしよう……」と思いました。まずは「高木さん」と呼びかけるところからのスタートでした。撮影期間中はいろいろ話せるようになり、読み合わせを一緒にする中で徐々にお互いのことを知りながら撮影ができたので、すごく楽しかったです。
――月島さんから見た黒川さんの印象を聞かせてください。
月島:最初はお互いに話せなかったので、このまま撮影に入って大丈夫かなと思ったこともありました。でもクランクアップのときには、島での思い出がありすぎて終わってしまうのが寂しいと思うくらい仲良くなれました。
――黒川さんから見た月島さんの印象はいかがですか。最初とは変わりましたか?
黒川:だいぶ変わりましたね。たくさん話しかけたり、本読みをしていくうちに、明るくてずっと笑っている元気な人なんだなと思いました。真面目だけれど、すごく面白い人です。
――腕相撲のシーン、自転車のシーンなどキュンとするシーンがいっぱいありますが、演技をする上で2人の距離感が変わるような工夫はありましたか?
月島:工夫というほどのことはしていませんが、撮影が進むにつれて撮影以外でも会話が増えて距離感も縮まったし、一緒に作り上げていけたのだと思います。
黒川:たしかに距離感はすごく意識して演じました。
――今泉監督の印象を聞かせてください。
月島:本当に優しくて穏やかで、はじめからずっと印象が変わりません。ちょっとふんわりした感じで、たまに何を考えているかわからないところがありました(笑)。演技では私たちの自然体なお芝居を大切にしてくれたりと、本当にやりやすかったです。
黒川:思い出すとちょっと泣けてくるぐらい優しくて、何か困ったらすぐに相談できる方です。とにかく優しくて良い人ですね。
――担任の田辺先生役の江口洋介さんの印象は?
月島:お芝居の時の江口さんの声がカッコよくて、2人で「ワーッ」と盛り上がったことが印象に残っています。
黒川:僕はいつも怒られる役だったので、はじめはちょっと怖い印象がありましたが、職員室のシーンを通して優しい方なんだと思いました。僕に対しても同じ目線で話してくださるので、すごく嬉しかったです。
月島:第1話で田辺先生が西片を怒るところで、ちょっと最初に笑ってそこから怒る表情に変わるシーンがありますが、改めてすごいなと思いました。
●「大人になったら一緒に医者役ができたら」
ーー職員室でのやりとりをはじめ、中学生が主人公の物語だからこその見どころがいろいろとありそうですね。
月島:後半になるにつれてどんどん内容が濃くなっていき季節のイベントのお話が入ってくるところもあるので、ぜひ日常を感じていただけたらうれしいですね。合唱のシーンは、撮影終わりにみんなで歌を練習したので、その歌声をぜひ聞いてもらえたらと思います。それから高木さんの表情のところで一生懸命頑張ったシーンがあるので、そこも見てもらいたいです。
黒川:実はみんなで合唱するシーンが中盤のクライマックスであり、もう少しでみんなとお別れになってしまうなあと思いすごく寂しかったです。そんな思いで歌った合唱にぜひ注目して観ていただけたらうれしいなと思います。
――撮影の合間には2人でどんなことを話していましたか?
月島:ひたすら一緒にセリフの練習をしたり、その日監督に言われたことを整理して一緒にお芝居みたり、次はこうしてみようという相談もしました。
黒川:「昨日はジェラート屋さんに行ってきたんだよね」みたいな、たわいのない話もしていました。
――1カ月も島にいたら、共通のエピソードもたくさんありそうですね。
月島:オリーブそうめんを一緒に食べに行きました。小豆島にはオリーブが練りこまれているそうめんがあるんです。
黒川:焼肉にも行きました!
月島:ご飯屋さんにはスタッフさんたちも一緒に結構行ったよね。あとは同学年の子たちとオリーブ公園に行って、みんなで遊んだりも。同世代だと話しやすいし、撮影の合間もみんなでお昼を食べたりして本当に楽しかったです。
――青春ですね。
黒川:ずっと修学旅行に行っているみたい。
月島:(学校行事の)お泊りみたいな(笑)。
――2人とも現役の学生さんなので、もうすぐ新年度がスタートします。新たに頑張りたいことはありますか?
月島:私は高校2年生になります。勉強も難しくなるので、より一層頑張りたいです。お友達もまた新しく出会えると思うので仲良くしたいし、いろんなところに遊びに行きたいですね。仕事では、いろんな作品と出会ってさらに飛躍していけたらうれしいです。
黒川:僕は中学3年生になるので、学校では先輩の立場になるし受験も控えています。「3年生の年はいままでとは違う!」と月島さんが断言していたので、学校生活を楽しみたいですね。仕事では、今まで「役を演じること」を意識すると不自然な演技になってしまい、監督に注意をされることもあり、力不足を感じていました。新年度は自分なりの「演技」ができるように頑張りたいです。
――最高学年で頑張りたい行事は?
黒川:僕は本気で合唱祭に取り組んでみたいですね。『からかい上手の高木さん』でも、みんなで歌って楽しかったのが記憶に残っているので、中学最後の年の合唱祭にクラスメートみんなで歌えたらいいなと思っています。
――この後、挑戦してみたい役柄があれば教えてください。
月島:私は体を動かすことが好きで、普段から走ったりもしているので、アクション系のお芝居をやってみたいと思っています。女の子だけれど、ちょっとカッコいい作品ができたらうれしいですね。大人になってからは医者の役をやってみたいです。
――なぜ、あえてお医者さんなんですか?
黒川:(両手をあげるポーズをとりながら)「メス!」って言いたいからでしょ(笑)。
月島:実は撮影期間中に、「大人になったら一緒に医者役ができたらいいね」と話していました。やっぱりカッコいいし、「メス!」って言いたいです(笑)。
――再共演したら2人ともメスを握る役ですか。
黒川:僕が「メス」って言う!
月島:いや、私が「メス」って言います(笑)。
――黒川さんの演じてみたい役は他にもありますか?
黒川:僕はヤンキー役をやってみたいです。自分の性格とは違う人間を演じてみたいですね。
(文=Nana Numoto)