生見愛瑠『くるり』斬新でおもしろそうな設定なのに…主人公も3人の男も「どこかで見たようなキャラ感」にガッカリ

めるること生見愛瑠が、GP帯(ゴールデン・プライムタイム)の連ドラ単独初主演を飾る『くるり~誰が私と恋をした?~』(TBS系)。人気恋愛ドラマ枠である「火曜ドラマ」作品として、4月9日(火)にスタートし、第2話まで放送されている。

ラブコメとミステリーを掛け合わせた設定は斬新でおもしろそう……なのに、酷評するほどつまらなくはないが、グイグイ惹き込まれるおもしろさもないといった感じ。

その原因とは――?

■誰が本命なのかわからない設定は目新しい

主人公・緒方まこと(生見)は事故で頭を打って記憶喪失に。自分のことがわからない状態で、手元には誰かに渡そうとしていた男性用の指輪。

そんな彼女の前に、自称 “元カレ” 西公太郎(瀬戸康史)、自称 “唯一の男友達” 朝日結生(神尾楓珠)、自称 “運命の相手” 板垣律(宮世琉弥)の3人が現れる。まことは誰が自分の本命だったかわからないまま、四角関係状態で振り回されていくというストーリー。

おそらく今後は「こいつが本命なのでは!?」と思わせる演出が3人持ち回りでおこなわれていき、最終話まで引っ張っていくのだろう。

普通のラブコメ作品では誰が本命なのかが明確化されており、「どうせ最後はこいつと結ばれてハッピーエンドなんだろ」と、ラストが読めてしまうことが多いので、そういう意味で今作は “引き” がある設定。

そもそもなぜ頭を打つ事故にあってしまったのか不明だし、記憶を失う前のまことがどんな人物だったのか、自称 “運命の相手” がなにかを企んでいるのではないかなど、気になる謎も散りばめられている。

ここ1~2年で俳優としての力を高く評価され、ついに主演までジャンプアップしためるるの演技にも注目だし、3人の男性はそれぞれキャラが異なるため、視聴者的には自分の好みのタイプを見つけて “推せる” というのもドラマの構造として巧い。

……なのに、筆者はいまいちハマれなかった。惹き込まれないのだ。

■どこか他の恋愛ドラマでも見たようなキャラ

物語の設定は目新しくていいし、その設定を土台にした構造や仕掛けもいいので、つまらなくはない。だが、すごくおもしろいわけでもない。

原因は、キャラの魅力不足と、セリフの掛け合いの弱さにあると感じた。

まず主人公。記憶喪失前のもともとの性格はもしかすると尖ったキャラなのかもしれないが、記憶喪失後の現在は、よくも悪くも「火曜ドラマ」にありがちなヒロイン像。

そして本命候補の男3人。元カレ・男友達・運命の相手と主人公との関係は違うし、性格や職業もまるで違うのだが、個性が際立っているかと言われるとそうでもなく、3人ともどこか既視感のあるキャラクター。

要するに主要キャラ4人が、全員テンプレ感があるのだ。

どこかの恋愛ドラマに出ていたようなクセの薄いキャラばかりで、本作ならではのパンチが弱い。それはセリフにも表れていて、キャラ同士の掛け合いの妙もないのである。

あくまで個人的な感想だが、たとえば昨年10月期の『セクシー田中さん』(日本テレビ系)でめるるが演じたのは、憧れの人(主人公)を守るために性格の悪さがどんどん出てくるというナイスキャラだったと思う。

同じく昨年10月期の『いちばんすきな花』(フジテレビ系)で神尾楓珠が演じたのは、イケメンで社交的なのに人と深く付き合えないこじらせキャラで、だからこそ彼が友達に救われて成長していく姿にほっこりした。

残念ながら『くるり』の4人は、表面的にはそれぞれ個性がありそうな設定なのに、一皮むけばどこかで見たことがあるようなテンプレキャラになっている。これが興味のわかない原因だろう。

ただ、まだ第2話まで放送されたのみ。これから各キャラの多面性が出て、意外な一面などがどんどん描かれていけば、キャラ同士のセリフの掛け合いもおもしろくなってくるかもしれない。今夜放送の第3話以降の展開に期待したい。

堺屋大地

恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。『日刊SPA!』にて恋愛コラムを連載中。ほかに『現代ビジネス』『文春オンライン』『集英社オンライン』『女子SPA!』などにコラムを寄稿

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