中国・前漢時代の簡牘「食方」 よみがえる2千年前のレシピ

中国・前漢時代の簡牘「食方」 よみがえる2千年前のレシピ

湖南虎渓山1号漢墓出土の簡牘「食方」。(資料写真、懐化=新華社配信)

 【新華社長沙4月23日】2千年前の中華料理はどのように作られていたのか。中国湖南省懐化市沅陵(げんりょう)県にある湖南虎渓山1号漢墓出土の簡牘(かんどく、文字を記した竹札や木札)「食方」には、現在の湖南省地域の調理法が記載されていた。

 墓の被葬者は初代沅陵侯の呉陽(ご・よう)で、1999年の発掘調査で出土した簡牘1300枚余りのうち、各種料理の調理方法を記したものが300枚余り、約2千字あり、研究者からレシピを意味する「食方」と呼ばれるようになった。長い期間地中に埋まっていたため腐朽が進んでいたが、修復作業により文字を判読できるようになった。

 湖南省文物考古研究院の張春竜(ちょう・しゅんりゅう)研究員によると「食方」に記載された食材は穀物のほか、馬や牛、羊、鹿、ニワトリなどの動物性食材、塩や酢、酒、肉用ソースなどの調味料など多岐にわたり、動物の解体や食材処理、調味料の使い方、盛り付けに至る漢代貴族の食へのこだわりが反映されていた。

 同研究院で簡牘整理を担当する楊先雲(よう・せんうん)さんは「古代の貴族の食文化の中で、米炊きはかなり工夫がこらされていた」と説明。「食方」の数枚には主食の調理が記されており、現代文での大方の意味は次のようになる。

 「米を汁が透明になるまでとぎ、水を切った後にしばらく置く。底の米を蒸したら、ひっくり返してもう一度蒸す。蒸し終わった米を取り出し、鉢の中央か布巾の上に置き、うちわであおいで湯気を飛ばす。水を加えた後に底と表をもう一度ずつ蒸す」

 楊さんは「きれいに米をとぎ、何度も蒸すのは食感を良くするためで、前漢の貴族のこだわりが見て取れる」と指摘。こだわりは衛生面にも向けられ「毛を取る」「水をかける」「あくを取る」「皮と腸を取る」などの言葉が見られるという。

 食材処理の「小技」も記されていた。楊さんによると、ブタの毛を取り除くにはまず火で焼き、燃え残った毛を手で引き抜く。ニワトリの場合は熱湯を使った。

 調理方法も蒸す、煮る、焼く、ゆでるなど多くが記載されており、現代人が好きな牛肉や羊肉の串焼きも好まれた。「茱茰(シュユ)」や「木闌(モクラン)」などの辛味調味料も頻繁に登場し、辛い物が好む湖南の人々の食習慣を反映していた。

 楊さんは「『食方』は前漢初期のさまざまな食品の加工方法を詳細に記録している。王侯貴族の食習慣を直接的に反映し、古代の食物調理方法に関する記録の空白を埋めた」と語った。(記者/張格、白田田)

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