女子アナ+書道家+絵師 元九州朝日放送の松下由依さん異例のフリー転向 「昨年夏から考えた」26歳の再出発【インタビュー】

4月からフリーアナウンサーとなった松下由依さん。書家、イラストレータ―としての活動もスタートした

3月31日付で九州朝日放送(KBC)を退社し、4月からフリーアナウンサーとなった松下由依さんが西スポWEB OTTO!のインタビューに答えた。4年間在籍した古巣で、現在も朝の情報番組に継続して出演しながら「書道家・イラストレーター」として本格デビュー。異例のフリー転向を決意した26歳の本音を聞いた。

――フリーランス転向を意識したのはいつからですか?

明確に言うと去年の夏頃。 6、7月あたりぐらいから考えていました。(話すことに加えて)イラスト業とかをずっとしたいと思っていて。会社では(レギュラーの業務が忙しくイラスト業を)お受けすることが叶わなくて。
(番組で)書道とイラストを使ったものを8秒間見せるコーナーをやっているんですけど、見てくださった方から「横断幕書いてください」とか「ウェルカムボード書いてください」という声が届いていて。(その声に)ずっとお返事できない、お答えできないっていう状態が続いて「うわ、どうしようかな?」って悩み始めたのが夏です。

――松下さんを応援していた方にとって電撃的な発表となりました

そうですね。ずっと黙っていました。最後の最後まで本当に辞めるかどうか悩んでいたというのもありますし。「先に表に出てしまってはいけない」とも思っていたので我慢してました。(伝えていたのは)身内だけ。会社の同期にも言っていなくて。固く口を閉じた状態でいました。

――発表直後の周囲の反応はどうでしたか?

怒られると思ったんですよ!(笑) 怒られるというか批判的な意見。今の時代だし、私はインスタグラム、X、TikTokも全部やっていて、YouTubeも。「福岡の地元の放送局で働くことができたのに辞めるなんて」と言われる声の方が多いかなと思っていた。でも、発表した後は全然そんなことなくて。むしろ応援の声が多い。 新聞各社の皆さんも、テレビ関係とかネットニュースも全部温かく載せてくださって。 批判的なコメントを見た覚えがあまりないですね。すごく応援の声の方が多かったから、安心しました。ほっとしました。

松下さんの作品(本人提供)

――「書」と「イラスト」との出会いは?

昔から絵は描いていて…描き写すようなおもちゃなかったですか? 白紙に投影させて、なぞったり。「ちゃお」(小学館発行の小学生向け漫画雑誌)の「きらりん☆レボリューション?(中原杏の児童向け漫画)」とかを描き写したりしていて、昔から。

そこから書写とか、書き方の授業で賞をいただいたり、描いた絵をNHKのコンクールに載せていただいたりとか。絵を描くことはすごく好きで、書の方は中学1年から6年間書道部に入った。書き方を教えてもらいつつ、書道パフォーマンスという道に歩むことになった。パフォーマンスって普通の漢字とは違う「デザインも込みの字」なんですよね。そういうデザインを始めた頃から「好きだな、書くこと」って思いましたね。

――地元・福岡への思いから、現状では東京や大阪への進出は考えていない

(福岡への思いは)強いですね。大学4年間、東京で生活していた。東京の雰囲気ももちろん好きでしたけど、育った街っていうのはやっぱり大きい。地元の人たちに恩返しがしたいというのはやっぱり心のどこかにあったので。 人の温かさとかももちろん大好きですし…。ご飯がやっぱり福岡はいいなって思います。 私の大好物、もつ鍋なんですよ! ほかに焼き鳥1本でも全然違うと思うし、皮のパリパリ感とかは福岡の方が圧倒的。

<次ページ>いずれは結婚、子どもも欲しい

――事務所には所属せず、これからも「完全フリー」で活動する予定

今のところはそう思ってます。今年で27(歳)になるんですけど、自分のわがままを通せる年齢って、若いうちかなって。いずれは結婚したいと思いますし、子どもも欲しいなと思います。そうなった時に子供の面倒を見ながら…家庭を見ながら、全部自分でできるかというと「そうじゃないかもな」とか思ったりする。でも、今は自分のことだけに集中できる年齢で、自分でやった方がいいのかなって。

松下さんの作品(本人提供)

――退社報告の際に「話す仕事以外にも挑戦したいと思うことがたくさん見つかった」とありました。これから挑戦したいことは?

枠に捉われたくないというか、自分の限界を決めたくない! 格好良い言い方をするとそうなんですけど(笑)。私が学生の頃に抱いていたアナウンサー像は、表に立っている時はすごく華やかだけど、泥くさく取材をして自分で見たものを伝える仕事だという印象がすごくあって。性格も負けず嫌いなので「(これからもっと現場に足を運んで)自分で見て取材したことをしゃべりたい」と思うようになりました。

――現在はスポーツ報道中心だが、ジャンルの幅は広げたい

スポーツだけに捉われず、リポートがあったらリポートも行く。起きて欲しくはないが、災害中継にも挑戦したい。自分で見たものをしゃべるという意味では、現地の人たちから話を聞いて「何を求めているか」が伝えられるということに、やりがいを感じる。(ジャンルには)捉われないですね。

――様々な人との「出会い」を大切に、そして学んでいく

理想のアナウンサー、理想のイラストレーターの方からちょっとずつ良いところをつまんで、私という人間が作れたらいいかなと思います。アナウンスの面で目標とする方は、名前を挙げるなら(番組でお世話になっているKBCの)宮本(啓丞)アナウンサーです。言葉巧みに発言ができるアナウンサーとして活躍していきたい。書とイラストの面では原愛梨さん(書道アーティスト)。バラエティー面では赤江珠緒さんが大好きなんですけど(笑)。赤江さんみたいな部分も自分の中に入れつつ、欲張りで、いろんな面を取り入れられる人になりたい。

――今後の「夢」を教えてください。

まずは「福岡でもっといろんな仕事を増やしていきたい」というのはありますね。まだ目の前のことにいっぱいいっぱいすぎて、未来が正直見えないです(笑)。 大きなものを望まないようにしています。(フリー転向で)いろんな方からお声をいただいて、目の前の小さな目標はいっぱいあります。それを1個ずつクリアして、いずれ大きな存在になれればいい。

松下さんの作品(本人提供)

――最後に応援するファンの皆さんへメッセージをお願いします

これからは局のアナウンサーとしてではなく、個人の松下由依として皆さんにお会いできる機会が増えると思います! 私がイベントをする時やイラストのお仕事とかあれば、PayPayドームでも良いですし、たくさん声を掛けていただければうれしいなと思います。よろしくお願いします。

(写真=中村太一、取材/構成=佐藤泰輔)

◆松下由依(まつした・ゆい)
中高一貫校の福岡雙葉を卒業後、アナウンサーを目指しマスコミ講座のある法政大学の法学部法律学科に進学。2020年、九州朝日放送に入社。1997年7月15日生まれ、福岡市東区出身。

<次ページ>このインタビューを動画で見る

© 株式会社西日本新聞社