すごくぜいたく、でもいい思い出がない…俳優・柿沢勇人さん、“勝負の場所”でハムレット「命懸けで挑む」

ハムレット役を演じる俳優の柿沢勇人さん(彩の国さいたま芸術劇場提供、PHOTO・宮川舞子)

 彩の国さいたま芸術劇場(埼玉県さいたま市中央区)で5月に開幕する「彩の国シェイクスピア・シリーズ2nd(セカンド)」。好評だった前シリーズに引き続き、俳優の吉田鋼太郎さん(65)が芸術監督を務め、シェークスピアの新たな魅力を埼玉から発信する企画だ。記念すべき第1弾「ハムレット」で主演を演じるのは俳優の柿沢勇人さん(36)。大役に「文字通り命懸けで挑みたい」と意気込む。

 叔父クローディアス(吉田さん)が父を毒殺したことを知り、王子ハムレットが復讐(ふくしゅう)を決意する物語。世界中で繰り返し上演されてきた傑作だ。約3年前、吉田さんと共演した舞台の千秋楽で「俺、おまえのハムレット、見えたわ」と打診されたという。柿沢さんは「そのときはすごくうれしかった。けれど、とんでもなく難しい役と分かったので、今は逃げ出したい心境」と話す。

 敵への怒りを抱えながら復讐に葛藤するハムレット。「一般的に影のある青年のイメージだが、悪いやつでも見捨てないところが王子らしい。頭が良く、本来愛らしい性格なのに、狂気を演じているうちに染まってしまったかわいそうな人」と解釈する。

 シェークスピアが活躍していた400年前、現代のようなセットはなかった。柿沢さんは「シェークスピア劇のせりふに修飾語が多いのは、(役者が)言葉の表現だけで、夜などの場面をお客さんに想像させなくてはいけなかったから。吉田さんは『言葉に集中していた。それこそシェークスピアの究極で、そこを目指す』と言っていた」。稽古ではせりふの一字一句を指導されているという。

 神奈川県出身。「劇団四季」を経て、舞台や映画で幅広く活躍。大河ドラマ「鎌倉殿の13人」では源実朝を演じた。同劇場の2代目芸術監督である故蜷川幸雄さんが演出した「海辺のカフカ」(2012年初演)に出演するなど、さいたま芸術劇場にはなじみがある。「すごくぜいたくな空間。けれど蜷川さんにも吉田さんにも常に怒られているから、いい思い出がない。僕にとっては『勝負の場所』」と笑う。

 ハムレットは同劇場大ホールで、5月7~26日上演。当日券あり。問い合わせはSAFチケットセンター(電話0570.064.939)へ。

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