築地市場跡地の再開発 期待と懸念の声

先週発表された築地市場跡地の再開発について、小池知事は4月22日、「東京の良さを発信する最高の場所」だと期待をよせました。街からも喜びの声が上がる一方、築地場外市場で働く人からは懸念の声も上がっています。

築地市場跡地の再開発は、5万人収容のマルチスタジアムを中心に、築地ブランドを継承した食文化を発信するエリアが整備され、地下鉄の新駅や空飛ぶクルマといった陸・海・空の交通インフラ活用を目指します。

小池知事:「伝統文化・食文化、このような宝物を抱えている、広大な面積。これをどう活かしていくかというのは、これからの東京の良さを発信する最高の所だと思っています」

築地の街からも再開発への期待が高まっています。

築地に住む人:「この辺って住んでる人にしたら案外不便なんですよ。1時か2時くらいになるとお店屋さんも閉まってしまうので、そういう再開発してもらうことで便利になるじゃないかという期待があります」

築地を訪れた人:「若い方が集まったり、あとインバウンドで外国の方も見えるにはすごくいい構想だと思います。下町の感じも残るではあればなお良いと思います」

オランダからの観光客:「過度な開発ではなく、適度な開発ならいいと思う。このままでも魅力だと思い、開発されていない今の風景を見たい人もいるので。私たちは伝統的な部分も好きだから」

アメリカからの観光客:「新施設ができたら、人々はそこに行ってからそのまま場外市場に来られる。スポーツ観戦して夕飯を食べて、文化を楽しめるのができると思います」

開発を喜ぶ声がある一方、築地場外市場で働く人からは場外市場の存続を危ぶむ声も…

(Q:盛り上がりそうですか?)「いや、逆だろうね、こっちができちゃったらこっちは寂れるでしょう。こっちがまたそのまま残していけないかもしれないし、もうなくなってるかもしれない、築地場外は。いろんなスポーツの総合施設とかそんなのできちゃったらもう無理だよこっちは」

都市政策に詳しい明治大学の市川名誉教授は、10年後の東京の国際競争力向上に期待がかかると話します。

明治大学 市川名誉教授:「東京の中の一つの拠点になる。「人を集める」ということに非常に大きなポイントを置いている。人を集めるための器をつくる、そういう意味では今まで東京(他の再開発)でできなかったことをできることが、大きな期待となっている。だからこれが上手くいくということは、東京が10年経っても力を持っているということ」

再開発の目玉となるのが大規模スタジアムです。可動式の客席を備え、用途に応じて形を変えられるため、収容人数は2万人から最大5万7000人となっています。スポーツの競技場やライブ会場、展示場などにも使用できる多機能性が特徴のマルチスタジアムとなります。そしてこのスタジアムを中心として周辺に商業施設やオフィス、ホテル・住宅などの機能を備えたビルが建てられる予定です。

またこの大規模再開発は、東京都が進めるインフラ計画とも大きく関係しているんです。例えばエリアの脇を流れる隅田川沿いには、船着き場とシアターホールを備える複合施設が造られます。都は現在、川や海、運河を活用し、船で運送する「舟運」の活性化に力を入れていまして、築地の再開発がその中心地となることに期待を寄せています。

さらに臨海エリアに建設を計画している新地下鉄にも関係しています。東京駅から有明の東京ビッグサイトまでの6.1キロを繋げる新地下鉄の計画では、新駅の一つが築地に誕生する予定となっています。ただ、新施設の開業予定が2030年代前半となるなかで、地下鉄の開業は2040年ごろが目標ですので、その時期に数年の差があります。

都市政策に詳しい明治大学の市川名誉教授は、「新地下鉄の2040年という開業目標をいかに早められるかが、一番の課題だ」と指摘しています。

市場移転の延期など紆余曲折を経てきた築地の再開発。今後、スムーズに進んでいくのか、注視していきたいと思います。

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