東通原発1号機(青森県)の安全対策工事 2024年度中の完了断念 延期幅は「想定困難」

宮下知事(左)に東通原発の工程見直しを説明する樋口社長(右)=22日、県庁

 東北電力の樋口康二郎社長は22日、東通原発1号機(青森県東通村)の再稼働に向けた安全対策工事を巡り、目標としていた2024年度中の完了を断念して延期すると正式に表明した。追加工事を伴う津波対策を新たに検討する必要が生じ、「明確なスケジュールを想定することが困難」として延期幅や新工程は示さなかった。規制当局のプラント(設備)審査に向け、津波対策の検討を含めた準備に1年半を要するため、新たな工事完了時期は25年9月末ごろまでに示すとした。

 工程の延期は6回目。樋口社長が県庁で宮下宗一郎知事、髙野広充副社長が東通村役場で畑中稔朗村長に対し、24年度中の工事完了は困難との判断を伝えた。

 東北電によると、原子力規制委員会の安全審査で今後議論の対象となる「1千万年に1回程度発生する可能性のある津波」が、東通原発の敷地(海抜13メートル)を超える可能性が高いことが判明。津波対策の目安となる、2月に決まった「基準津波」(最大12.1メートル)を上回る。

 「1千万年に1回」の津波は発生頻度が極めて低い一方、想定される高さが大きくなる傾向がある。東北電が9月ごろの再稼働を目指す女川原発2号機(宮城県)は基準津波23.1メートルに対し、「1千万年に1回」は33.9メートルと策定した。

 基準津波は「敷地に浸入させない」ことを前提とする一方、「1千万年に1回」は浸水したとしても炉心損傷の確率を下げることが求められる。東北電は対応策として「建屋の水密化、浸水を防ぐための壁」(樋口社長)を例示。その検討を中心とした審査準備の期間を1年半と見積もった。

 東通原発には13年に完成した高さ約3メートル、長さ約2キロの防潮堤がある。しかし東日本大震災後に緊急的に建てた設備のため、新規制基準に適合していない。浸水防護対策は防潮堤が無いという前提で検討する必要があるという。防潮堤の作り直しも手法の一つだが、「いろんな選択肢からベストな対策を考える」(同)との説明にとどめた。

 東通原発は11年2月に定期検査入りして以降、13年超にわたって運転停止中。樋口社長は報道陣に「再稼働に対する期待に添えていないことを重く受け止めている」と述べた。

© 株式会社東奥日報社