今井翼「完璧ではなく心を踊らせることが大事」 2年半ぶりのライブ、仕事と私生活への向き合い方に変化

今井翼が、2年半ぶりにステージに立つ。凛とした立ち姿、体の先まで神経の行き届いたダンス、そして力強い歌声……。その光景を想像しただけで、背筋が伸びるようだ。

「4月26日、27日にZepp Yokohamaにてライブを開催致します」と、今年1月23日にInstagramにてファンに報告していた今井。「ライブのセットリストを考える時間は、ギフトを選んでいる時のような気分」と当日に向けた準備やリハーサルの様子も丁寧にファンへと届けられてきた。

ライブを目前に控えた今井に、本公演のタイトル『ROUTE283』に込められた思い、そして“今井翼”を表現し続けるために意識していることについて聞いた。(佐藤結衣)【インタビュー最後にプレゼント情報あり】

■“ファンと歩んできた道=これまで歌ってきた楽曲”を辿るライブに

――いよいよ本番が近づいてきました。2年半ぶりとなるライブに向けて、今のお気持ちはいかがですか?

今井翼(以下、今井):気持ちとしては、今の僕をみなさんに届けたいっていう思いがあって。今回のライブのテーマとして、“ファンと歩んできたこれまでの道を、歩みを止めずに辿る”というのが1つのポイントになっています。なので、今回の構成は新曲は一切やらずに、これまで歌ってきた楽曲を表現していく形になります。音楽そのものの力もそうですし、ファンそれぞれが持つ楽曲への思いっていうのもあると思うので、音が鳴った瞬間にワクワクしてもらえるような、そんな時間になったらいいなと思いますね。

――イントロを聴いた瞬間に「わーっ!」と湧くようなイメージですか?

今井:そうですね。そうしたファンの皆さんのリアクションを想像しながらライブの構想を練りました。

――個人的には踊る今井さんの姿にも期待が高まります。

今井:ありがとうございます。今回はスローなナンバーもありますが、前半は踊って、後半はバンドセッションという2つの表情を持った構成にしています。前半も後半も共通して言えるのは、ファンなら期待の楽曲ばかりという感じなので、楽しみにしていてほしいです。

――Instagramでは「ギフトを選んでいる時のような気分」でセットリストを考えられたと綴られていましたね。今のお話でもファンのみなさんを喜ばせたいという気持ちが伝わってきました。

今井:プレゼントをする醍醐味として、嬉しい驚きを届けたいという思いがあるんですよね。今回のライブでは頭のブロックからファンの方々に楽しんでもらいたいと考えてきました。「もうちょっとマイナーチェンジしてみたら面白いかな?」「こんなふうにアレンジをしたらどうだろう」と、そういうことを日々考えながら過ごすのは、僕としても幸せな時間でした。

――ライブ演出や衣装など見せ方の部分でも、今井さんのアイデアが発揮されているのでしょうか?

今井:はい、自分で考えて形にしていっています。とはいえ、基本的には1人でステージに立っているので、大きな衣装チェンジなどがあるわけではないんですが、きっとオープニングから盛り上がっていただけるんじゃないかなと思っています。

――ライブの「この瞬間が好き」というタイミングはありますか?

今井:やっぱりファンのみなさんと同じ時間を同じ思いで共有できるという瞬間が一番ですね。トータルに言えば楽曲でしょうか。その楽曲が持つ力が原動力になるかなと思います。お互いに生身で接して、一緒に踊れる曲を踊ったり、口ずさんで歌える1曲を共有できることが、自分にとっての高揚感につながる瞬間だなと思いますね。

――では今回、会場に来たお客さんには音楽に身を委ねて楽しんでいただきたいですか?

今井:そうですね、ぜひ!

■パーフェクトを求めるよりも、より柔軟に、楽しみを紡ぐ日々を

――今井さんといえば舞台でのご活躍も印象的です。ライブと舞台、それぞれの魅力は?

今井:大きな違いは、やはり何を表現するのかというところだと思います。ライブっていうのは、僕、今井翼を現在進行形でお届けしていくことがメインになっていて、お芝居の舞台はやっぱりストーリーや背景、それから役柄というものがあるので。そこは180度違う世界だなと思います。なので、ライブはずっと応援してくださっているファンの方はもちろん、初めていらっしゃる方も含めてみんなで創り上げて楽しむ空間というイメージが強いですね。

――活動休止からの復帰、久しぶりのライブとなることについて、不安に感じることはありませんでしたか?

今井:僕は1つレールを決めたら迷うタイプではないので、そうした思いはありませんでしたね。今の自分にどんな表現ができるのか、僕自身が楽しみにしていたくらい。とはいえ頭で考える部分が多かった時期は早くリハーサルに入りたいなとは思っていました。リハーサルに入ると、いろいろ見えてくるものなので。

――Instagramでは『生きてる証』(タッキー&翼)の歌詞〈自分のためだけに 生きてるんじゃない〉というフレーズを振り返る場面もありましたね。

今井:そうですね。今回のライブが決まって、楽曲をいろいろと考えていくなかで改めて歌詞と向き合う時間にもなりました。そのとき、すごく素敵な歌を歌わせてもらってきたんだなと実感したんですよね。歌っていながら「そうだよな」と前向きに思わせてもらえる歌詞の力っていうのがあるなと。

――最近は、ご自身のコンディションやメンタルを保つために、何か意識されていることはありますか?

今井:最近はプライベートを充実させることを意識しながら過ごしています。僕はどちらかというと、没頭してしまうタイプなので。ちょっと前までは、それこそプライベートを削ってでも仕事に没頭してしまっていたんですよね。もちろん、それはそれで良さもあるんですけど、それだけじゃなくって。自分自身を柔軟にさせるためには、プライベートを充実させることが、仕事にもいい影響を及ぼすんだろうなっていうふうに、気づき始めた感じですね。

――そうした考えに転換するタイミングがあったのですか?

今井:ええ。自分自身を見つめ直して分析する時間があって。これまで軌道に乗っていたときってどんな時期だったのかなって振り返ったときに、やっぱりプライベートの楽しみがあるからこそ、仕事により集中できたように思えて。とは言いながら、昨日も寝る直前にライブのことで「構成をちょっとこういうふうに変えてみようかな」なんて思いついてしまうこともあるんですけど(笑)。だからこそ、トレーニングとか最近始めた陶芸とか、意識的に仕事から離れる時間をちゃんと作る生活をすることって大事なのかなと思っています。

――短期的な勢いだけではなく、長く継続して続けていくためには、そうした時間は必要ですよね。一方で、これまで没頭してきたからこそ、その切り換えは難しくありませんでしたか?

今井:もちろんありましたね。取り越し苦労しやすい性格なので。でも、そこはもう「ケ・セラ・セラ」というか。やらなければならないときというのは、否が応でもくるので。うん……、なるようになる、なんですよね。ある種、人間って開き直ることも必要だと思っていて。考え続けていい結論が出るときもあるので、もちろん没頭してやり続けることにも意味はあるんですけど。どこかで自分を開放する意味で開き直ることで新しい視点が見えてくるというか。今の僕にはそっちが必要な気がしています。

――そこに行くまでには、やはり積み上げてきた努力があってのことだと思います。

今井:いやいや、全然そんなことないですよ。僕もまだまだ発展途上というか、模索しながら生きています。何が正解かって言われたら、わからないんですけど、でも、僕みたいに良くも悪くも没頭するタイプの方は、一度開き直ってみることもいいんじゃないかなって思いますね。

――先ほど陶芸のお話が出ましたが、その魅力について教えてください。

今井:土に触れて、とにかく無心になるっていうことが、すごくいい時間だと思いますね。これまで自分にとって趣味ってなんなんだろうって考えたときに、 どこかに行って何かをやるっていうことがなかったので。料理もするし、その盛り付けで使えるお皿を自分でつくるのもライフワークとしていいかなと思って始めたんですよ。今は2つほど作ったんですが、まだ焼き上がってはいないので、その完成までの時間も楽しみというか。うまく焼けるといいんですけどね。

料理にしても、陶芸にしても、ライブと似たようなところがあるなと思っています。想定した通りにいくようでいかないところもあったりして。そこに対してパーフェクトを求めるのではなく、心を踊らせることが大事というか。「ここがこうなって、ここでちょっと違うギアを入れて……」と試行錯誤しながら完成するまでわからない感じがあるんですよ。それが、僕自身だけじゃなくて、ファンにとっての満足感に繋がればいいなっていう気持ちが根本にあります。

――お話を聞いて器の完成もライブもますます楽しみになりました。今回のライブは、5月にCSチャンネル『日テレプラス ドラマ・アニメ・音楽ライブ』でもオンエアされるとのこと。ライブ会場に来られない方も楽しめる形になりますね。

今井:そうですね。僕ももちろん見るつもりなんですが、自分のパフォーマンスが映像を通してどう映るかっていうのは今はまだ想像がつかないのが正直なところですね。僕にできることっていうのは、あくまでもライブファーストなので。ただ、そうした試みが新たな楽しさにつながっていくと嬉しいなと思います。

――この『ROUTE283』を皮切りに、今後どのようなライブをしていきたいですか?

今井:やっぱり新しい楽曲、アルバムを引っ提げてのツアーもやっていきたいですね。そのためにも、“これまで”から現時点までの歩みを辿る、今回のパッケージをとても大事に思っています。そして、ここからまた新しい物語が始まるので。

(文=佐藤結衣)

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