味の印象が変わる!?…日本酒を飲むときの「器」の選び方【お酒の専門家が解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

日本酒と一言でいっても「旨口」「フルーティー」など、味の系統は様々です。そんな日本酒を美味しく味わうには、「日本酒の種類と相性の合う酒器を選ぶことが大切」と、日本酒エキスパートの近藤淳子氏は言います。葉石かおり氏・監修、近藤淳子氏・著『人生を豊かにしたい人のための日本酒』(マイナビ出版)より、日本酒を飲むときの「酒器」や「グラス」の選び方について見ていきましょう。

日本酒の魅力が際立つ「酒器」の選び方

今、様々な酒器が出ています。日本酒の個性を一層深く味わうために、「日本酒と酒器の関係」を学びましょう。

まず、酒器の素材と日本酒の相性についてお話しします。酒器の素材は主に①ガラス製、②陶磁器、③木製、④錫などが挙げられます。

①「ガラス製」は、ワイングラス、ショットグラス、極薄の冷酒グラスなど様々な大きさや形、厚さのグラスがあります。冷蔵室(約2~5℃)でよく冷やした状態から常温、お燗酒(耐熱ガラスに限る)にも対応できます。極薄ガラスは、きめの細かい吟醸酒タイプのきれいな酒質をより上品に味わえる傾向があります。厚みのあるガラスは、米の旨味にあふれるしっかりとした味わいの純米酒タイプに向いているといえるでしょう。

②「陶磁器」は、冷たい日本酒は冷たいままに、温かい日本酒は温かいままに楽しめます。日本酒を口に含むとき、唇が陶磁器に触れる感触がツルンと滑らかで、快適な飲み心地を感じることができます。全国には様々な焼き物があるので、好みのものを探したり、焼き物の地元の日本酒と合わせてみたりしてはいかがでしょうか?

③ヒノキやスギなど「木製」の酒器は、軽くて保温性があります。ヒノキやスギなどの自然のアロマが日本酒に溶け込んで、酒質に馴染んでいくタイプもあります。日本酒を味わいつつ、ゆったりとリラックス効果も感じられるでしょう。温度帯は、冷酒からお燗まで幅広く楽しむことができます。

④「錫」は最も保温性に優れています。注いだお酒の雑味を取り、まろやかな口当たりに。錫には抗菌性があり、金属臭もあまりないので、日本酒の風味をそのまま楽しめます。また、割れたりさびたりすることもないので、長く愛用できます。

このように酒器の素材一つ取ってみても、日本酒の味わい方が個性豊かに広がるのです。

「グラスの口径」が味の印象を決定する

次に、「グラスの口径による日本酒の味わいの違い」についてご紹介します。

ここではワイングラスを例に、口径のすぼまりが緩やかなグラスと、口径のすぼまりが強いグラスで比較してみます。

すぼまりが緩やかなグラスで口に含むと、顔をあまり上げないで良いので、舌の面積の中心に日本酒が乗って、四方にゆっくりと広がります。

そうすると、一口の量がすぼまりの強いグラスよりも多くなるため、ボリュームも旨味もアップして感じられ、主に旨口タイプに向いています。

口径のすぼまりが強いグラスでは、日本酒は舌先から直線的に奥へ素早く流れます。顔を上にしっかり上げないと飲めないので、少なめにしか口に入らず、舌の両側に落ちにくくなります。

これにより、アルコール感をダウンさせて、スッキリ、軽やかに感じられるので、日本酒慣れしていないビギナーにもおすすめです。主に向いているのは軽快タイプとフルーティタイプです。

日本酒をあれこれと吟味するように、酒器にもこだわりをもってみると、より味わい深い体験ができるはずです。

近藤 淳子
一般社団法人ジャパン・サケ・アソシエーション
副理事長、フリーアナウンサー

葉石 かおり
一般社団法人ジャパン・サケ・アソシエーション
理事長 酒ジャーナリスト、エッセイスト

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