「コーチ」の「マイケル・コース」買収阻止へ、米FTCが提訴

Abigail Summerville Granth Vanaik Jasper Ward

[22日 ロイター] - 米連邦取引委員会(FTC)は22日、高級皮革ブランド「コーチ」親会社の米タペストリーが「マイケル・コース」などのブランドを展開するカプリ・ホールディングスを85億ドルで買収する計画を阻止するため、訴訟を起こした。

両社の傘下にある高級ハンドバックメーカーの「真っ向からの直接競争」が妨げられ、従業員の賃金と福利厚生が減る恐れがあるとしている。

また「(合併により)価格競争、割引、プロモーション、イノベーション、デザイン、マーケティング、広告など、タペストリーとカプリの真っ向からの競争で生じる恩恵を何百万人もの米消費者が失う恐れがある」とも指摘した。

反トラスト法(独占禁止法)専門の弁護士によると、FTCが高級ファッションメーカーの合併に反トラスト法訴訟を起こすのは異例で、今後の高級ブランドの合併規制の前例になる可能性がある。

タペストリーのジョアン・クレボイセラ最高経営責任者(CEO)はロイターとのインタビューで「(従業員に提供している)賃金と福利厚生に誇りを持っている」とし「われわれは人材を調達する一方で、膨大な数の競合他社に人材を奪われている」と反論した。

米国の反トラスト法当局は昨年12月、合併・買収(M&A)に関する新たな指針を最終決定。公正で開かれた競争力のある市場を促進することが目的と説明した。

反トラスト法専門の弁護士は、FTCがこの指針の下で、合併により人材獲得競争が減り、時間給労働者の賃金減少につながると主張すると指摘していた。

大半のアナリストは、両社の合併が期限の8月10日までに完了すると予想。法律事務所ギブソン・ダンのハワード・ホーガン氏は「FTCが提訴を決めたのは驚きだ。ファッション、衣料、アクセサリー業界で競争が不足していることはない」と述べた。

両社の合併は高級ブランド品の世界市場でリードする欧州の競合大手に対抗するのが狙い。「ケイト・スペード」や「スチュアート・ワイツマン」などを抱えるタペストリーは、カプリの買収でマイケル・コースに加えて「ジミー・チュウ」や「ヴェルサーチェ」などのブランドも手中に収める。

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