世帯年収「1000万円」以上の約12%は金融資産ゼロ? 裕福に暮らせない2つの理由とは

年収1000万円以上の世帯のうち約12%は金融資産ゼロ

厚生労働省の2022(令和4)年国民生活基礎調査の概況によると、1000万円以上所得のある家庭は、全世帯のうち12.6%です。1世帯当たりの平均所得額は545万7000円であることからも、1000万円の収入があれば何不自由なく生活できるのではないかと感じる人も多いでしょう。しかし、1000万円以上の収入があっても、貯蓄ができていない世帯もあります。金融広報中央委員会の家計の金融行動に関する世論調査によると、年間収入1000万円~1200万円未満の方のうち、12.2%は金融資産がないと回答しています。つまり、1000万円以上の収入があっても、貯蓄に回すほど生活に余裕のない世帯がおよそ10件に1件あるということです。

年収1000万円以上でもお金が足りないと感じる理由

年収1000万円以上の収入がありながら特別散財していなくても、生活が楽ではないと感じているケースもあるようです。その大きな原因は2つ考えられます。

税負担が多く手取り額が少ない

年収1000万円といっても、手取り額は税金を引かれた額です。一般的に、手取り額は年収の75%~85%といわれています。日本では所得が多くなるにつれて課税額が高くなっていく累進課税制度が適用されています。そのことを考慮し、75%手元に残ると仮定すると1000万円×75%でおよそ750万円が手取りです。ボーナスが年に給料の4ヶ月分出るとすると、750万円÷16ヶ月でおよそ47万円の月収となります。1000万円以上の年収があっても、家賃などの住居費にお金がかかることも考えると、手元に残る現金はそれほど多くないでしょう。

子育てなど公的補助の対象から外れてしまう

1000万円以上の年収になると、公的補助の対象から外れてしまい、想像以上に出費が多くなることがあります。例えば、高校の授業料を支援してもらえる高等学校等就学支援金制度は、年収や家族構成などによって支援金が異なります。家族構成などによっても異なりますが、年収1000万円の人の多くは、支援の対象外となる可能性があります。

日本生命保険相互会社の「NISSAYペンギンプロジェクト子育て現役世代の大規模実態調査について」によると、1000万円以上の世帯年収がある家庭でも、子育てにかかる費用について負担を感じている割合が57%に上ります。年収の高い家庭は、子どもによい教育を受けさせようと教育費にお金をかける傾向があり、補助がなければ、収入に対し大きな負担となる場合があります。

年収1000万円でも税負担の多さや公的補助の対象外となることで生活は苦しくなる

年収1000万円以上の世帯は全体の12.6%あります。しかし、そのうち11.5%は金融資産がありません。原因はいくつか考えられますが、大きな理由は税負担が多く手取り額が少ないことや公的補助の対象外となることなどが挙げられます。1000万円の年収でも、必ずしも生活が楽になるわけではないため、家計に気をつける姿勢が求められるでしょう。

出典

厚生労働省 2022(令和4)年国民生活基礎調査の概況(9、10ページ)
金融広報中央委員会 知るぽると 家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査] 各種分類別データ(令和5年) 統計表番号2 金融資産の有無、金融資産非保有世帯の預貯金口座または証券会社等の口座の有無および現在の預貯金残高
日本生命保険相互会社 NISSAYペンギンプロジェクト子育て現役世代の大規模実態調査について 質問1子育てにかかる費用について、精神的な負担を感じていますか?(2ページ)

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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