「ツツジ」の花咲く春の東京「根津神社」「六義園」 江戸の情景が色鮮やかに染まる

色鮮やかに咲きほこるツツジが見ごろを迎えた根津神社(撮影:BRAVO MOUNTAIN編集部)

桜はやはり、あっという間に散ってしまう。それでも春はさまざまな花が咲きみだれ、街を歩いているだけで楽しくなる。そう春は桜だけではない。今、まさに見頃を迎えているのが「ツツジ」。

園芸文化が花開いた江戸時代。当時、江戸で人気を集めた花のひとつが「ツツジ」。そのツツジが今もなお、江戸の情景のなかで咲きほこっているのが「根津神社」と「六義園」。江戸から続く春の絶景スポットで往時に思いをはせてみる。

■東京・谷根千の春を彩るツツジに魅了される「根津神社」

1900年以上の歴史があると伝えられる「根津神社」。文明年間(1469~87年)には、江戸城を築いたとされる太田道灌が社殿を奉建したという記録が残る。

現在の根津神社は、江戸時代に三代将軍・家光の三男、六代将軍・家宣の父である徳川綱重の山手屋敷であった場所であり、六代将軍・家宣の生誕の地でもある。五代将軍・綱吉が家宣を養嗣子に定めると、根津権現社に屋敷地が献納され、遷宮された。

1706年に完成した本殿、拝殿、唐門、楼門などは、昭和20年の戦禍によって、社殿の一部に損害を受けたが、往時の姿を残し、国の重要文化財に指定されている。

■100種3,000株の個性豊かなツツジが美しい「つつじ苑」

春の根津神社といえば、やはりツツジ。境内「つつじ苑」には赤、ピンク、紫、白、黄色と色も様々に100種、3,000株のツツジが一面を鮮やかに染めるように咲き乱れている。

江戸時代、五代将軍・綱吉の兄、甲府藩主であった徳川綱重の屋敷であった頃、敷地内の丘にキリシマツツジを移植したことに始まり、「つつじヶ岡」と呼ばれる名勝地であった。

現在のツツジは戦禍で被災した社殿の修復の後、荒れた状態であった丘に3,000株を増殖したもの。境内に足を踏み入れると、一面のツツジを見上げることができる。視界を埋め尽くすほどに咲く一面のツツジは、極楽浄土かと思わせるほどに見事。

●4/30(火)まで「文京つつじまつり」開催中

ツツジの開花に合わせて、根津神社では「文京つつじまつり」が開催されている。今年は4月30日(火) まで。期間中はツツジの鑑賞だけでなく、境内では様々な催しも行われ、つつじまつり限定の御朱印も頒布されている。根津神社のある“谷根千”は歴史文化に溢れる街。つつじまつりと合わせて散策してみるのもいいだろう。

*つつじまつり限定御朱印は4/21現在、入荷待ち。4/27再頒布予定

●施設概要

根津神社
〒113-0031
東京都文京区根津1-28-9
TEL 03-3822-0753
開門時間:5:30
「つつじ苑」
開苑時間:9:30~17:30
入苑寄進料:500円

■和歌の情景豊かに季節ごとに趣を変える「六義園」

根津神社と同じ文京区、谷根千の隣町、駒込にあるのが「六義園」。江戸時代、五代将軍・綱吉の側用人として仕えた柳沢吉保が下屋敷として与えられた土地を自ら設計、7年かけて造りあげた和歌の庭。

和歌への造詣が深かった柳沢吉保が和歌の分類、六体に倣い「六義園(むくさのその)」と命名。現在では「六義園(りくぎえん)」と読む。その情景豊かな大名庭園は小石川後楽園とならび、江戸を代表する庭園として今もその姿を残している。

■春はもみじではなく「ツツジ」が六義園を赤く染める

園内に足を踏み入れると、すぐ目に飛び込んでくるのが六義園のシンボルともいえる「しだれ桜」。すでに桜は散ってしまい、また秋はもみじなど紅葉も有名な六義園であるが、今の主役はツツジ。大名庭園を赤く染め、訪れる者の心を和ませている。

大きな池を周遊するように園内を散策すると、緑豊かな情景が23区内とは思えないほど、静謐な時間が流れる。その新緑の中に色鮮やかな姿を見せてくれるのがツツジ。

かつては「富士見山」と呼ばれた園内で最も高い築山の「藤代峠」では斜面いっぱいにツツジが咲き、山一面を染め上げたような美しさ。標高35mの頂上からは、ツツジが咲き乱れる園内を一望でき、その美しさが何か名句を詠めるのではと思わせる。

●施設概要

六義園
〒113-0021
東京都文京区本駒込6-16-3
TEL 03-3941-2222
開園時間:9:00~17:00
入園料:一般300円 65歳以上150円(小学生以下および都内在住、在学の中学生は無料)

全国的にも春本番となり、多くの花々がその美しい姿を見せるこの季節。絶景や映えスポットもいいけれど、歴史情緒にふれながら、季節の移ろいを感じてみるっていうのもいいものですね。もちろん散策には欠かせないカフェやスイーツも一緒に楽しみたいですね。

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