SBI証券、オンライン取引システムにAWS導入――新NISAで増える取引需要に対応

by 北川 研斗

SBI証券は、国内株式のオンライン取引システムをAWSに移行した。インフラ拡張におけるコストを削減し、2026年を目途に業務システムもAWSに移行する。

左からアマゾン ウェブ サービス ジャパン 飯田哲夫氏、SBI証券 助間考三氏、同 ハン・ギヒョン氏

1日360万件の発注を処理

国内最大規模である1200万の証券口座を抱えるSBI証券の国内株式におけるオンライン取引をAWSが支える。「AWS Cloud Development Kit」(AWS CDK)を活用し、インフラをコード化。従来と比べて半分以下の期間でキャパシティを拡張でき、取引の急増にも対応できるとする。1日につき1億アクセス、360万件の発注を処理する能力があるという。

SBI証券のWebサイトなどからの株式の注文を受け付け、処理する部分が2カ所に分散されている。もし一方で障害が発生しても数分以内にもう片方の部分に切り替わるため、安定したシステムの提供が可能になる。その周辺のシステムも含めれば、実際にはもう少し時間がかかるというが今後、改善していくという。障害発生時の対応を再現する「AWS Fault Injection Service」(AWS FIS)も用いて、冗長性を高める取組みも試みた。

いちユーザーが、直接この取組みのメリットに気づくことは難しいものの、サービスの安定性を高める仕組みとして取引を陰で支えることになる。

新NISAが投資後押し

新NISAで国内の投資機運が大きく高まるなか、証券口座利用者のユーザー体験向上を図る。トレンドを見据えてキャパシティ増強やサービス追加など、システムの変化にあわせて冗長性も進化させるほか、より安定した高品質な仕組みを提供する。

SBI証券 常務取締役兼SBIシンプレクス・ソリューションズ 代表取締役社長の助間考三氏によれば、従来のオンプレミス環境でも処理できる環境は整えられていた。それでもAWSを取り入れたのは、昨今の投資を取り巻く環境の変化があるという。株式取引の急増、米国株人気の広まりなど「読み切れないうれしいサプライズが起きうる世の中」だと現状の認識を示す。

SBI証券は、国内株や新NISAの米国株のほか海外ETFの売買手数料を0円とする「ゼロ革命」で注目を集めており、新NISA含めた総合証券口座数は1200万口座を超えた。多くの利用者を抱えるなかで、安定したサービスの提供は金融機関としての絶対条件といえる。

予想外の事態が起きた場合、オンプレミスでは対応に時間がかかる。金融機関としてあってはならないトラブルを未然に防ぐ意味でAWSの恩恵がある。時に過剰とも映る対策が必要としつつも、実際にはそれほどの対策が必要なかったということになっても調整が効くなどの柔軟性がクラウド化するメリットという。SBI証券では、外国株や投資信託などの取引や業務システムにもAWSを取り入れることを目指す。

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