「マツコの知らない世界」にも出演 クレシーニ・アンさんが目指す多様性尊重の社会

アメリカ生まれで、現在は北九州市立大学で英語を教えるクレシーニ・アンさん、去年日本国籍を取得しましたが、SNS上には誹謗中傷の言葉が投稿されました。どうすれば、「偏見のない、多様性を尊重する社会」が実現できるのか、発信を続けています。

クレシーニ・アンさん「立派な日本人になります」去年、日本国籍を取得したクレシーニ・アンさんが若者たちに伝えたいことは・・・。「いちばん強調したいのは、正しい・正しくないではなく、違い」

マツコさんに「和製英語」の魅力を紹介

北九州市立大学で准教授として英語を教えているアンさん。

「(日本語は)英語と全然違うし、日本語は美しい」

和製英語研究のスペシャリストとしてメディアでも活躍。TBS系列で放送されている「マツコの知らない世界」で、マツコさんに和製英語の魅力をプレゼンするなど日本のことが大好きな、キャラ濃い目の福岡県宗像市民です。

母国アメリカと日本の対戦となった去年のWBC=ワールド・ベースボール・クラシックの決勝では侍ジャパンを応援しました。

日本国籍取得「立派な日本人に」

そんなアンさんが、日本国籍を取得したのは去年の11月でした。

クレシーニ・アンさん「日本人です。これ2年前に原宿で買って、日本人になるまでは(このTシャツを)着ないと決めて。許可されたらこのTシャツ着て、市役所に行くと決めていた。2年ぶりこのTシャツ着ます」

住民票を取るため市役所窓口を訪れたアンさん「感動しますね。ありがとうございました。立派な日本人になります!」住民票には、アメリカ国籍の時は名前がアルファベットで表記されていましたが、日本国籍となりカタカナで「クレシーニアン」と記されています。

夫と子供3人の5人家族のアンさんですが、日本国籍を取得したのはアンさんだけ。

夫リズさん「子供はアメリカの大学に行きたいから、(私が日本に)国籍を変えたら複雑になる」

アンさん「これだけはなかなか言葉に表せない。心の深いところからきているから、この理由で日本人になりたいという表現ができない」

アンさんの友人「内面は無茶むちゃ日本人だから」

アンさん「外見はアメリカ人でも心は日本人だから」

SNSには心ない言葉が

「心は既に日本人」というアンさんですが、その気持ちを踏みにじる事件が起こります。アンさんの日本国籍取得をSNS上で非難する人たちが現れたのです。

SNS上にはこんな言葉が・・・「お前なんか日本人やめてしまえ」「あなたはいつまでも外人だ」「日本から出ていけ」「あなたは決して日本人にはなれません」

クレシーニ・アンさん「ものすごく痛いよ。3日くらい食べられなくて。かなり心折れたんですよね。こんなに日本が好きだったのに、ひどいこと言われるとすごく考えさせられるよね」

「大好きな日本のために」と全国どこへでも出向き、英語と日本語の架け橋を目指してきたアンさん。国籍をアメリカから日本に変えるほど、この国を愛しているアンさんの心は深く傷つきました。それでも日本の若い世代の可能性を信じる、教育者としての思いは揺らぐことはありませんでした。

クレシーニ・アンさん「若者が大好きだし、可能性を感じる」

「違いを受け入れる」

アンさんが若者たちに最も伝えたいこと。それは「違いを受け入れること」

クレシーニ・アンさん「自分の文化だけが正しいとか、自分の考え方が正しいとかそう思うと、他の人が間違っていることになる。いちばん強調したいのは、正しい・正しくないではなく、違いしかない。国によって、文化によって、価値観によって、面白い価値観があって。お互いから見習うことが大事」

福岡市早良区の内野公民館。アンさんの講演を聞くために、およそ30人の市民が集まりました。テーマは「多様性社会」について。

クレシーニ・アンさん「いろんな人・考え・ジェンダー・国籍・人種・宗教・価値観があるのはあたり前というのが多様性。友人のこどもはハーフなんだけど日本語上手・・・よく言われるって・・・。友達は日本人なんだけど、娘は日本生まれ、お母さんは日本人、母語は日本語、育ちは日本。なのに『日本語上手』ってよく言われる。やはり外見で判断する人が多い。ちょっとずつ、どうやって理解ある人になれるかが大事なんです」

来場者は「お客さんで外国の方が来た時に最初に日本語しゃべれますか?見た目で判断していて、英語で聞いたけど。ほとんどの方が日本語書けますという方が多い」

学生の来場者「偏見は無くした方がいいと思う。外国人に対して、自分の意見を押しつけるのではなく、会話とか交流を通して、意見を言って(相手の)考え方を尊重してあげることが大事だと思う」

法務省によると、日本に在留する外国人は、去年12月末の時点で340万人を超え、過去最多となりました。お互いを理解しあって、皆が住みやすい日本にしていくにはどうすればいいのか。

福岡で続く「異文化交流」の活動

福岡には、国際交流・異文化相互理解を促す事業として「アジア太平洋こども会議」があります。今年、36年目を迎えます。

アジア太平洋こども会議・イン福岡大隈聡子事務局長「ハーフのお子さんも、日本では『外国の人』と言われるし、お父さんとお母さんの母国では『アジアの人』と言われ、行き場が無いという話を聞く。区別というか、見えない差別とかがあるのかもしれない」「直接交流することで、『それぞれ個性があっていいんだ。違いがあっていいんだ』ということを学べる事業にしたい。ひいては世界平和。友だちの国とは戦争なんてしないし、クラスで違う子がいてもいじめにならないのではないか」

多様性で日本の文化はさらに素敵に

クレシーニ・アンさん「(日本には)多様性を恐れている人がいる。多様性によって、日本の文化が壊されると思っている人がいるけど、日本の文化は無くなるのではなく、さらに素敵になると私は思います」

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