お好み焼き店に「常連客が入れない!」 外国人観光客急増で苦渋の決断 ついに県民限定の入店規制 広島

外国人観光客が増加し観光業界が潤う一方、増えすぎる観光客に対応しきれなくなる飲食店もあります。その実態を取材しました。

たくさんのスーツケースが並ぶJR広島駅…。笑顔を見せる外国人やカフェの前でくつろぐ外国人の姿もあります。コロナ禍前のインバウンド需要に復活しつつある県内…。

お好み焼き店では…
【加藤キャスター】
「至る所に英語での案内が書かれていますし、こちらでは音声案内で英語のアナウンスが流れています。行列もすごいですね…お店の外にまでズラリと並んでいるがみなさんインバウンドのお客さんですね」

【お店のスタッフ】「あ~ソーリー予約はできない」
【お店のスタッフ】「Howmany?」「2人、待って下さい」

外国人客が一組帰ったと思えば、次に訪れる客も外国人と、様々な国の言語が飛び交う店内…。

【お好み焼き・鉄板焼き「もみじ亭」藤原 良太 店長】
「きょうはめちゃくちゃいろいろなところからきていますね。アメリカ・イギリス・フランス・ドイツ・スペイン・メキシコ・韓国…チリの人もいましたね」

【常連客】
Q:外国人客は
「めちゃくちゃ増えている。前来たときは6時に並んで8時半とかに入れたので…」

観光庁の「宿泊旅行統計調査」の広島県内に宿泊した外国人の数です。
去年の夏以降はコロナ禍前の2019年を上回る勢いで推移しています。

【外国人観光客】
「みんなこの店をすすめています。グーグルで」
「地元のお好み焼き店を探していて大きなビルに入った店ではなく、こじんまりとした店を探してオンラインでここに行きつきました」

しかし、店の入り口にはある思いがつづられていました。

(もみじ亭からのお知らせ)
「現在あまりにも多すぎる来客のため本来のサービスを提供できない状況となってしまっております」

個人経営でスタッフは店長と従業員の2人のみ…。
これまで多くても1日40人ほどだった客が、いまでは連日100人を超え、常連客もすぐには入れない状況に…。

オープン以来“地域密着”を掲げてきたことから苦渋の決断を強いられていました。

【藤原 良太 店長】
「コロナ禍などの厳しい時を支えてくれた常連さんたちが入れないお店というのは、私たちとしても違うかなというのがあるので…」

そこで今月からスタートさせたのが「県民の日」。毎週金曜日の夜を県内に住む人限定にする“入店規制”です。
県内在住かどうかは客の自己申告にまかせていますが、地元の人を大切にしたい思いからの取り組みです。

【藤原 良太 店長】
「(インバウンド客の入店を断るため)下手をしたら人種差別だとかそういう風に捉えられる危険性のある取り組みだが、ずっと来てくれているお客様にとっては、ここは楽しみの場、安らぎの場と思ってくれているお客様も多々いるので、そういった人たちの場所を週一でもいいので守っていきたいと取り組んでいる」

【常連客】
「(店長が)忙しすぎると接客する余裕ないもんね、久々にちゃんと会話した気がする」

地元の客とインバウンド客、いかに両者に理解してもらうか…。
新たな取り組みの行方から目が離せません。

<スタジオ>
【加藤キャスター】
広島に宿泊した外国人の数ですが、コロナ禍前の2019年と比べて去年はV字回復しています。その良い面もちろんあるんですけれども対応の難しさもあります。

【広島大学大学院・匹田 篤 准教授】(社会情報・メディア論が専門)
「まず、このV字回復がさらに2024年はもっと増えてるっていうのは感覚としてはありますよね。長い目で見ると、これって街またはビジネスが拡大するチャンスなんで店が増えれば解決する問題でもあるんだけれども、

一方で、その間に観光客に不快な思いをさせないっていうことが、すごく大切なことだと思うんですよね
【加藤キャスター】
このお店がなぜインバウンドの方にこれだけ受けているのかというと、オンライン上での口コミが非常にいいんですね。それは、なぜかというと、やはり、おもてなしをすごく重視をしているお店で、1人1人のお客さんと向き合っていきたい。ですから、質の良いサービスを提供したいが故のオーバーワーク気味なところがあって、逆にそれで、今回ちょっと、「時間かかっちゃうんですよ」というと悪い口コミがついたりして、店主の方も非常に悩ましいという話がありました。

【広島大学大学院・匹田 篤 准教授】
「本当に口コミが、すごく大切だと思いますし、そして、この急速に拡大していくビジネスの中で、お客さんを不快にさせない。だけど受け入れ体制は、徐々に増やしていくっていう難しい舵取りだけれども、それを進めて、数年後には街全体で観光客に対応できるようなものになって欲しいですね」

© テレビ新広島