ひろゆきさんもエール 輪島塗とは似て非なる漆の技術「芯漆」を発信する兄弟

石川県輪島市では、輪島塗とは一線を画し下地を一切使わず漆だけを塗り重ねる「芯漆(しんしつ)」と呼ばれる技法で仕上げる漆器があります。

手間も暇もかけた唯一無二の作品を作る輪島市の兄弟は、能登半島地震で作品作りをあきらめかけましたが、世界に発信するチャンスを得たこともあり、再び芯漆に取り組む意欲を見せています。

山崖宗陽さん「(漆の被害は)かなり受けましたね。3割、うん百万円じゃないですか?」

輪島市鳳至町で17代続く老舗塗師屋「山崖松花堂(やまぎししょうかどう)」の山崖宗陽(やまぎしそうよう)さんと、弟の松堂(しょうどう)さん。

地震で工房は傾き、作品や道具は散乱、建物の修復は不可能と判断されました。

兄・山崖宗陽さん「(作業場は)全く使えないですね。品物と道具と救助するのが手一杯で、悲しいけど見捨てなければいけない品物もあると思います」
弟・山崖松堂さん「もう悲しいですね。僕からすると情が移るというか、我が子がけがをするというか、すごく悲しいです」

2人が手掛けるのは、木や布などの下地を一切使わない「芯漆」と呼ばれる独自の技法です。国産の漆を何百回も塗り重ね芯から細部、表面までを漆だけで仕上げるもので、1つの作品を完成させるまでに10年から20年かかるといいます。

仏像のほか、ぐいのみなどの漆器を作ってきました。

ただ、現在は工房が使えず作品作りは行っていません。となりの事務所に作品や漆、道具などを避難させている状態です。

弟・松堂さん「だいたいこれで400回くらい漆を塗って、この厚みでおよそ20年かかります。20年はすごく長いんですけど、これができあがってしまうと、半永久的に何万年、何十万年もしくはさらにその先まで器が持続するのが芯漆の特徴です」
兄・宗陽さん「最初はやっぱり辞めようかなと思いました。ただ整理に入って作品を見ていると、どうしてもこれは残していかないといけないなと、日に日にその気持ちが強くなってきました」

再起をあきらめることも考えていた2人でしたが、海外から個展の依頼が来たことで徐々に前向きな気持ちになってきました。ことしの夏にオーストラリアで、秋にはニューヨークでの個展が決まっています。

弟・松堂さん「うれしかったですね。僕らの目標は日本の国産の漆を使って最高の物を作って、世界の人たちに見てもらおうっていうのが僕らの人生だし僕らの願いなので、触れてもらいたいというのが一番だったので」
兄・宗陽さん「漆というのは木から出た樹液で琥珀みたいなものなんですよね。おそらく1万年、100万年経っても化石化することはあっても劣化はないです。世界中の方々にわかっていただければ素晴らしいことじゃないかなと思います」

2人はクラウドファンディングを立ち上げ、新たに工房を建てる目標を立てています。実業家のひろゆきさんも、Xでクラウドファンディングで支援をしたと書いています。

唯一無二の作品「芯漆」を世界に。二人三脚での再挑戦が始まりました。

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