「クーソーしてから寝てください」 子ども心に深く刺さった「ファミコン時代のキャッチコピー」

画像はファミコン用ソフト『たけしの挑戦状』(編集部撮影)

ゲームを購入するきっかけはなんだろうか。楽しみにしていたシリーズ最新作の発売だったり、配信されているプレイ動画で興味を持ったりとその動機はさまざまだが、今のようなネットのなかったファミコンやスーパーファミコンの時代は、ゲーム誌や店頭やテレビのCMぐらいしかゲーム情報を知る術はなかった。そして、それらにつけられたちょっとしたキャッチコピーもまた、子どもたちの興味を惹きつけたもので、大人になった今でも思い出す名文も多かった。

今回は、ファミコン時代に刺さりまくった名キャッチコピーを紹介したい。

■「クーソーしてから、寝てください。」

「クーソーしてから、寝てください。」これは、1985年にナムコ(現・バンダイナムコエンターテインメント)から発売されたファミコンソフトのテレビCMで流れたキャッチコピーだ。

このフレーズは、今もゲームファンの間で語り継がれている名文句だが、キャッチコピーの名付け親は、コピーライターの糸井重里さんである。

聞けばすぐに気づくはずだが、「クーソーしてから、寝てください。」というフレーズは、古くからある「クソして寝ろ」という言い回しを巧みにもじったもの。「大便してから寝なさい」と「空想(クーソー)してから寝なさい」という、2つの意味が含まれているあたり、外国人の少女が森でゲームをプレイするCM映像も相まって、子ども心にとてもオシャレに感じたものだった。

なお、ナムコのテレビCMで、この前のバージョンで使われたキャッチコピーは「クーソーは頭のコヤシです」というものだった。これも「クーソー」と「コヤシ」がかかっていると思われる。

プレイヤーの興味を引きつけるだけでなく、ユニークさやユーモアも兼ね備えている、つい口に出してみたくなるキャッチコピーとして、現在まで語り継がれている。

■「エンディングまで、泣くんじゃない。」

続いては、『MOTHER』のキャッチコピー「エンディングまで、泣くんじゃない。」。1989年に任天堂からリリースされた『MOTHER』は、前述の糸井さんがゲームデザイン、シナリオを手掛けたRPGで、ポップなデザインと作りこまれた繊細なストーリー、独創的な世界観、そして糸井さんによる独特のセリフ回しが魅力的な作品だ。

発売時のポスターには2人の少年と1人の少女が山を望み、「エンディングまで、泣くんじゃない。」というキャッチコピーがつけられていた。

ごく普通のアメリカの田舎町に住む少年が地球を救う感動的なストーリーだったが、クリアをした人は、あとからこのコピーにうなずいてしまったはず。同作は、当時流行していたファンタジーをテーマとしたRPGとは違う、現代劇ならではのさまざまな驚きがエンディングまで用意されていた。

ただし、実はこのキャッチコピーは糸井さんではなく、コピーライターの一倉宏さんが考案したもの。

続編のスーパーファミコン用タイトル『MOTHER2 ギーグの逆襲』は、糸井さん自身による「大人も子供も、おねーさんも。」というキャッチコピーが採用。そしてゲームボーイアドバンス用として発売された『MOTHER3』でも「奇妙で、おもしろい。そして、せつない。」という糸井さんのキャッチコピーが使われている。いずれもゲームのキャッチコピーの名フレーズとして、いまだに語り継がれている。

■「謎を解けるか。1億人。」「常識があぶない」

最後は、1986年に発売されたビートたけしさん監修によるファミコン用ソフト『たけしの挑戦状』のキャッチコピー。ゲームのパッケージ表面には「常識があぶない。」とあり、雑誌などの広告には「謎を解けるか。1億人。」という文句が書かれていた。

「常識があぶない。」というキャッチコピーの通り、ゲームの当たり前を覆す前衛的で斬新なゲームとして、瞬く間に世間を騒がせた同作。たとえば、スナックのイベント攻略のためにIIコンのマイクを使ってカラオケを歌う、宝の地図を開くためにリアルに1時間待つなど、理不尽で不条理なゲーム内容が話題を呼んだ。

その内容があまりに過激だったため、ゲームバラエティ番組『ゲームセンターCX』でのインタビューで明かされた話によると、ゲーム攻略本を出版した太田出版が、最初のうちは客からの電話質問に対応していたものの、後に疲れ果てて「担当者は死にました」と嘘を言って逃げたという逸話まである。

当時、攻略情報なしでゲームをクリアできた人は果たしてどれだけいたのだろうか。まさにタイトルと「謎を解けるか。1億人。」というキャッチコピーの通り、ビートたけしさんからの「挑戦状」である本作。その内容のすさまじさも含め、後世にまで語り継がれる一本だろう。

ファミコン時代には、秀逸なキャッチコピーが子どもの心を掴んで離さなかった。その魅力的な言葉は、ゲームの世界へのワクワク感をさらに高め、想像力を刺激するものばかり。ファミコン時代のキャッチコピーは、単なる広告文ではなく、私たちのゲーム体験を豊かにしてくれたのだ。

© 株式会社双葉社