クマによる人身被害は過去最悪…柿の木伐採には補助上限なし、カメラトラップでクマを撮影 新たな対策はどこまで有効か 富山

昨年度、人里に大量出没したクマ。人身被害は219人(全国)と過去最悪を大きく更新する事態となりました。そんななか、中山間地が多い富山県では、被害防止のため、柿の木などクマを寄せつける誘因物の除去や撤去にかかる費用補助の上限を撤廃します。

冬眠明けのクマが活発化するこの時期、富山県は、環境省や各市町村の担当者、猟友会などを集めた会議を開いていて、23日は約60人が参加して今年度の対策について意見を交わしました。

国のまとめによりますと、クマの人身被害は2023年度、速報値で全国219人にのぼり、過去最悪だった2020年の158人を大きく上回りました。富山県内でも2023年に9人が被害を受け、うち1人が死亡しています。

こうした状況から県は今年度、「被害防除」「生育環境管理」「個体数管理」といった3つの対策を打ち出しました。

被害防除では、県はこれまで市町村に対し、クマの餌となるカキの木などの伐採に50万円を上限に補助金を出していましたが、今年度からは上限を撤廃します。

富山県生活環境文化部・林里香理事 「今年度、クマ対策推進事業補助金を拡充いたしましてパトロール経費や誘因物の除去経費などの上限額を撤廃するとともに新たなメニューとして(クマ対策の)訓練や研修開催を追加致しました。市町村のみなさまにおかれましては、是非、積極的なご活用をお願いしたいと思います」

また、環境省が設置した専門家による検討会は、クマを「指定管理鳥獣」に追加し、生育状況を適切にモニタリングした上で捕獲することを国が支援すべきだとする方針を提言しています。指定管理鳥獣は、生態系や生活環境農作物に被害を与えるため個体数の管理が必要な動物を指していて、これまでに指定されているのはイノシシと二ホンジカです。指定されたことで、都道府県がクマを捕獲をする際に国から交付金が受けられるようになります。

そうしたことを受け、富山県は、個体数を管理するため、カメラトラップを県内100か所に設置。これは、トラップの周辺に設置した自動撮影カメラでクマの胸の模様を撮影して、個体を識別し、生息数を調べるというものです。

また、狩猟の担い手確保のため、若手ハンターのインタビューやジビエ料理の作り方といったPR動画を作成し、SNSで周知するほか、狩猟の体験イベントなどを開催する予定です。

さらに被害防止対策として、GPS装置搭載の首輪をクマにつけ、行動圏の調査を行います。

富山県自然博物園「ねいの里」赤座久明さん: 「平野部へ出て、人身被害を繰り返すような個体はやむをえず駆除しなきゃいけない部分はあるけど、そうではなくて、なぜこの時期にこういうところにでてくるんだっていう原因をしっかり踏まえて、あまり感情的にならず、クールな頭とあったかいハートで野生動物を管理していかなきゃいけない。理にかなって計画的に進めていくような、そういう流れが進んでいけばいい」

富山県、特に富山市では、平野部もクマにとって場合によっては、いい餌場になっています。中山間地が広がる富山市南部では、柿の木にくわえ、深く茂った屋敷林が、人里に出てしまったクマの良い隠れ家になってしまうこともあります。森に手をくわえるだけじゃなくて、平野部の農村の環境整備も同時に進める必要があります。

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