幻のかんきつ「直七」を使ったクラフトビールとリキュール誕生 老舗料理店から全国へ

高知県宿毛市の幻のかんきつ=「直七」を使った新たなアルコール飲料が誕生しました。コロナ禍の、生産者たちの苦難を救おうという老舗料理店などの取り組みです。

こちらが宿毛市で生産されている幻のかんきつ=直七を使ったビール「直七ビールねぼけHAZY IPA」とリキュールの「Nana」です。それぞれ直七のさわやかさと優しい酸味を楽しめます。

これらの商品を開発したのは高知市にある土佐料理「司」です。創業は1917年。様々な土佐料理を提供し、現在は東京と大阪にも出店している老舗料理店です。直七を使ったクラフトビールとリキュール開発のきっかけは、取引先である直七生産組合からの相談でした。

「直七が売れず困っている買ってほしい」

背景は、新型コロナ。飲食店での需要が激減したことから冷凍果汁の在庫が出るようになり、4年前、司に直談判に訪れたのです。コロナ禍では司もまた、打撃を受けていました。宴会の予約はほぼ無く、休業した時期も。

厳しい状況が続く司でしたが、困っているのはみんな同じ。まとまった量の果汁を購入することにしたのです。

(土佐料理 司 北村宏輔 取締役営業部長)
「当社の社長が決断したのですけれど、僕もちょうど横にいて話を聞いていた『えっ?大丈夫?』『うちも店機能していないけれど、これはいいんだろうか』正直在庫を抱えるのが不安でした」

司では元々、自社のホームページなどで直七を使ったポン酢を販売していました。ポン酢に加えて新商品として開発することにしたのが、クラフトビールとリキュールでした。

クラフトビールを製造しているのが、香美市香北町にある高知カンパーニュブルワリーです。

(高知カンパーニュブルワリー 瀬戸口信弥 代表)
「高知県のいろんな素材とのコラボレーションをしているので、そういう風味を大事にする作り方をしています」

代表の瀬戸口信弥(せとぐち・しんや)さんです。高知の様々な食材でクラフトビールを製造している高知カンパーニュブルワリーでは柑橘をベースにした商品も多く扱ってきましたが、直七を使うのは初めてでした。ジュースのような飲みやすさを意識した試作品からスタートし、ホップの爽やかな苦味が特徴のビール=IPAをベースに全体の絶妙なバランスを整えていきました。

(高知カンパーニュブルワリー 瀬戸口信弥 代表)
「まだちょっと発酵が終わっていないので、まだ甘い感じはあるんですけれど、結構できてきていておいしいです。これからまださらに直七を加えていくんで、まだしっかりと直七を感じるレベルではない」

そうして完成した、「直七ビールねぼけHAZY IPA」。瀬戸口さんは、高知の「直七」がビールを通して全国に広がっていくことに胸を高鳴らせています。

(高知カンパーニュブルワリー 瀬戸口信弥 代表)
「かなり唯一無二のすごくゴージャスで、おもしろい高知県らしいビールに仕上がったと思う。今まで、見たことも出合ったこともない人が食卓で飲んでくださったりとか、司さんでみんなと味わっている風景をイメージするだけでも楽しい・ワクワクしています」

クジラのマークでおなじみの酔鯨酒造。クラフトビールと並行し、リキュールの開発を担当しました。

(酔鯨酒造 上田正人 社長)
「すごく直七を大事にしたい司さんの思いをなんとか具現化できたらなという思いで、酔鯨酒造はその話を受けさせてもらった」

ユズや文旦、イチゴを使ったリキュールはありますが、直七をメインに使うのはこちらも初めて。土佐料理との相性を考えて試行錯誤を重ね、日本酒と果汁の最高の組み合わせにたどり着きました。

(酔鯨酒造 上田正人 社長)
「口の中でどのように広がっていくか、旨味、甘味、のど越しはどうだ。全部の感覚に応えるところはすごくこだわりましたし、私たちの持てるものの中で最高の組み合わせは時間がかかりましたし、どんどんおいしくなっていくし、ワクワクしていくし、楽しい開発でした」

コロナ禍の苦難をきっかけに開発したクラフトビールとリキュールは、司の店舗と、インターネットサイトで販売されています。

(福島からの団体客)
「もう飲んだ瞬間、爽やかさが伝わって、最高です」

「スッキリしていて、飲みやすい酒だと思います」

5類移行に伴って大勢の人が料理や酒を楽しむ光景が戻ってきました。地元、高知で。そして、東京、大阪、インターネットで。高知の「幻の柑橘」は、全国に広がっていきます。

(土佐料理 司 北村宏輔 取締役営業部長)
「うれしいですね。今やっと直七がたくさんの人に認知されて、原料が足りない状況になっています。これからももっと力を入れて販路を伸ばして、地域の活性化というような役に立ちながら、頑張っていきたい」

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