「新生Vポイント」でポイ活競争激化! QRコード決済も「PayPay」VS「楽天ペイ」激突! キャッシュレス市場の将来は?

「Tポイント」と「Vポイント」が2024年4月22日に統合して「新生Vポイント」が始まるなど、キャッシュレス決済市場の競争が激化している。

そんななか、QRコード決済ではどのサービスが一番人気なのだろうか。

モバイル専門の市場調査を行うMMD研究所(運営元はMMDLabo、東京都港区)が2024年4月10日に発表した「2024年3月QRコード決済の利用に関する調査」によると、利用者がダントツに多いのは「PayPay」だが、総合満足度では「楽天ペイ」がトップとわかった。

いったい、なぜか。QRコード決済市場の未来はどうなるのか。専門家に聞いた。

人気順位は「PayPay」「楽天ペイ」「d払い」「au PAY」

カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)の「Tポイント」と、三井住友フィナンシャルグループ(FG)の「Vポイント」が2024年4月22日に統合し、「新生Vポイント」がサービスを開始した。会員数は単純合計で約1億5400万人と、国内最大規模。楽天グループなど通信大手による「ポイント経済圏」との争いが激しくなりそうだ。

一方、その楽天グループも4月18日、キャッシュレス決済に関わるアプリを統合すると発表。QRコード決済「楽天ペイ」に、楽天グループで買い物をすると貯まる「楽天ポイント」と、電子マネー「楽天Edy」の機能を集約する。ポイント利用にとどまっているユーザーに決済サービスを活用してもらうことが狙いだ。

このように、「キャッシュレス決済経済圏」の競争が激化するなか、MMD研究所の調査(2024年3月22日~3月25日)は18歳から69歳までの男女2万5000人が対象。予備調査でどのQRコード決済を利用しているかを聞いたあと、本調査として上位4サービスのメイン利用者2000人を対象に詳しく聞いた。

まず、スマホを所有している2万2797人に、現在利用しているQRコード決済を聞くと(複数回答可)、「PayPay」(49.5%)がダントツに多く、次いで「楽天ペイ」(25.9%)、「d払い」(21.2%)、「au PAY」(16.2%)と続いた【図表1】。

(図表1)現在利用しているQRコード決済(MMD研究所の作成)

また、上位4サービスのメイン利用者2000人(各500ずつ)に総合満足度を聞くと、「満足」と「やや満足」を合わせた満足度は、「楽天ペイ」(78.0%)が最も高く、「PayPay」と「d払い」(74.6%)が同率で2位、4位に「au PAY」(70.0%)という結果に【図表2】。

(図表2)QRコード決済4サービスの総合満足度(MMD研究所の作成)

それぞれどこが魅力なのか。フリーコメントの声は――。

【PayPay】
「使える店が多く、よく使うYahoo!ショッピングで使うとお得だから」(50代・男性)」
「還元率や付加時期が、分かりやすい」(60代・男性)

【楽天ペイ】
「楽天カードをメインで使用しているので、楽天ペイを使うと楽天ポイントがたまる。普段買い物する場所でも楽天ペイが使えるので便利」(20代・女性)」
「ポイントがたくさんたまりやすい。お金の管理もしやすい」(60代・女性)

【d払い】
「LOTOとかにも使えるし、携帯と同じ引き落としなので、何重にもならずポイントが貯めやすい」(40代・女性)
「ポイント利用や携帯料金に合わせての引き落としなど、方法が選べる」(60代・男性)

【au PAY】
「じぶん銀行との紐付けで、よりお得になるし、お金の管理が統一できる」(40代・女性)
「マネ活プラン加入により、他社と比較してポイント還元率がよい」(40代・男性)

こういった案配だ。

「PayPay」の強みは、使える店の数とキャンペーンの明快さ

J‐CASTニュースBiz編集部は、調査を行なったMMD研究所の担当者に話を聞いた。

――現在利用しているQRコード決済は、「PayPay」が圧倒的な1位で、「楽天ペイ」「d払い」「au PAY」という順番ですが、過去の調査でも同様ですか。「PayPay」が強い理由とは何でしょうか。

担当者 過去の調査を見ると、2021年7月では「PayPay」「d払い」「楽天ペイ」「au PAY」の順ですが、2022年1月には「d払い」と「楽天ペイ」が逆転し、それ以降、「PayPay」がずっと1位であることは変わりません。

「PayPay」のユーザーに利用している理由を聞くと、「ポイントがたくさん貯まる」「会計がスピーディーに終わる」「よく行く実店舗で取り扱いしている」が上位に並びます。

また、自由回答では「使える店の多い」や「キャンペーンがわかりやすい」という声があげられています。PayPayの魅力は、「使える店の多さ」や「キャンペーンのわかりやすさ」が他社と比較して特に強いのではと考えています。

利用者が多いと、利用者間で割り勘やお年玉をあげる際などの金銭のやり取りをPayPayで行うことが増えます。さらに、お賽銭などにも対応しており、他社が広げていない領域でPayPayが使えるようになっていることも利用者が増加するきっかけになっていると考えます。

――2位の「楽天ペイ」ですが、MMD研究所の「経済圏調査」ではいつもトップに君臨しているのに、QRコード決済では「PayPay」に大きく引き離されているのはなぜでしょうか。

担当者 楽天はQRコード決済の「楽天ペイ」の開始の前に、決済サービスとしてクレジットカードの「楽天カード」や、電子マネーの「楽天Edy」を提供しており、多くの利用者を保有していました。そのため、QRコード決済の「楽天ペイ」だけに集中するのではなく、「楽天経済圏」の中でさまざまな決済手段を用意する戦略をとっていました。

逆に、「PayPay」はQRコード決済では後発参入でしたが、そこに集中投資することが功を奏し、利用者を獲得し不動のシェアを確立しました。特に、「SoftBankペイ」や「Yahoo!ペイ」など自社グループのサービスネーミングにしないで、「PayPay」という新しいオープンなサービスにすることによって、新規ユーザーの間口を広く受け入れられたことも他社と違う要因と思います。

楽天が「ペイ」「ポイント」「Edy」を集約する狙いは

――ネーミングのうまさですね。対する楽天は4月18日、QRコード決済「楽天ペイ」に、「楽天ポイント」と「楽天Edy」の機能を集約すると発表しました。この動きをどう見ていますか。

担当者 先ほど述べたとおり、「楽天ペイ」より前に「楽天ポイント」「楽天Edy」のサービスがあり、単独でアプリも提供していました。

「楽天ペイ」アプリでの連携はすでに行っていましたが、アクティブ率が高い「楽天ペイ」にアプリを1本化し、楽天のフィンテックサービス(銀行や証券、保険などの金融分野に、IT技術を組み合わせることで生まれる新サービス)の入り口として強化していくのが狙いと思います。

今後は「楽天ペイ」アプリを中心に楽天の決済・金融サービスを集約し、スーパーアプリ化を目指していくと考えられます。そのためにも「楽天モバイル」の利用拡大がすます重要になるため、今回のアプリ統合で「楽天モバイル」の利用促進に向けた大きな還元も発表されていました。

――ところで、総合満足度では「楽天ペイ」が1位です。この理由は何でしょうか。

それと不思議なのは、「楽天ペイ」「PayPay」「d払い」「auPAY」ともに総合満足度が70%後半~80%前半と、あまり変わらないことです。それぞれの魅力、個性がどこあるのでしょうか。

担当者 決済では、使いやすさや使える店の多さが重視されるのはもちろんですが、ポイントのたまりやすさにフォーカスされる傾向にあると考えます。

2024年3月に「ポイ活意識調査」を行ないましたが、利用者のポイ活意識では、「楽天ペイ」ユーザーがトップとなりました。そうしたポイ活意識が今回の総合満足度で「楽天ペイ」がトップになった要因と考えます。

各サービスの魅力や個性については、以下のように考えております。

楽天ペイ:経済圏としての強さ、ポイント還元率の高さ
PayPay:加盟店の多さ、利用者の多さ
d払い:モバイルとの親和性の高さ(携帯料金とともに支払える)
au PAY:他社が踏み入れていないコンビニ(ローソン)との親和性の高さ

2024年3月の「ポイ活意識調査」

「おつり」の概念を知らない子どもが、大人になる時

――なるほど。今後、QR決済の世界はどうなっていくでしょうか。また、その課題はなんでしょうか。

担当者 円安による家計のひっ迫で、お得にポイント還元が活用できる経済圏利用の需要が高まっています。実店舗での買い物の際にこれまで主流だった現金から、ポイントが還元されるキャッシュレス決済がより普及していくと考えます。

なかでもQRコード決済は、今までの決済方法と比較してスマホ1つでクレジットカードや銀行からも入金ができるため、ECやデリバリーでもスマホで注文から支払いまで完結できる楽さが受け入れられています。

今の子どもたちは「おつり」の概念を知らないというニュースがありましたが、QRコード決済の利用が当たり前といわれる時代がやってくるのではないでしょうか。

ただ、QRコード決済はモバイルで利用できる簡単なサービスだからこその課題もあげられます。不正利用や、通信・システム障害のほか、スマホに慣れていないシニアが対応しきれないことなどです。

(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)

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