愛情たっぷりの長崎和牛の精肉店のコロッケ・役目を終えた母牛をもっとおいしく

長崎にはカステラ・ちゃんぽん・皿うどんだけではない、脈々と受け継がれた味がある。きっとあなたも食べたくなる長崎の味を再発見!西海市の精肉店で販売している長崎和牛を使ったコロッケを紹介。こだわりの和牛を知ってほしいというオーナーの想いが込められている。

西海市のお肉屋さんのコロッケ

西海市西彼町にある国道206号沿いの「まちの駅・ふれあいの里清水」の一角に2023年12月に長崎和牛の精肉店がオープンした。「みくりや畜産精肉店」だ。

一番人気は長崎和牛をたっぷり使ったコロッケ。

テレビ長崎 小助川萌菜アナウンサー:
サクサクの衣と、ジャガイモとお肉がなじんだとろーりとした中身がとてもマッチしている。お肉はしっかりとたくさん入っていて、ジューシー!

店を切り盛りするのは御厨晴美さん。長崎和牛を手軽に食べてもらえたらと、和牛たっぷりのコロッケにして販売を始めた。

ジャガイモは主に長崎県の南島原で生産されたものを使っている。県民が好む味に仕上げたくて、少し甘辛に味付けしているというこだわりだ。

晴美さんは特別な思いで精肉店をオープンさせたのだった。

役目を終えた母牛をおいしく食卓へ

店から車で約15分の山中に20棟を超える牛舎がある。

晴美さんは夫の隆紀さんと長崎和牛となる約800頭の牛を育てている。いま力を入れているのが出産を経験した母牛「経産牛」の肥育だ。

母牛としての役目を終えた牛は「廃用牛」と言われ、加工用やミンチとなっていた。しかし出産後も丁寧に育てるとおいしい肉になることがわかり、最近は「経産牛」として育てる農家が増えている。晴美さんは出産して「経産牛」となった牛を別の牛舎に移し、からだの大きさや脂の付き具合など特徴にあわせて丁寧に育てていく。

脂の質をよくするために発酵飼料を使用したり、肉の付き具合などを見てゆっくりと時間をかけて育て、その個体に合わせて出荷の時期を見極めるという。経産牛はもともと和牛なのでおいしさに関しては自信があると話す晴美さん。脂が抑えられているので家庭でも調理しやすい。

募る“もどかしさ”

夫との出会いは農業大学だった。植物を専攻していた晴美さんは結婚して隆紀さんの家業の「畜産」に初めて携わるようになった。

牛と向き合うようになって6年。晴美さんは牛への愛情を注げば注ぐほど、食用肉になるために飼うことの“もどかしさ“を感じずにはいられなかった。愛情いっぱいに育てた牛がどんな形で消費者のもとへ届くのかもわからない。スタッフが牛に注いでいる愛情を伝え、牛肉を食べる消費者の想いも知りたくて店をオープンさせたのだ。ショーケースに並ぶ牛肉はどんな過程を経てきたかをチラシにして紹介した。

リピーターも増えてきた。店を出して数カ月が経ち、晴美さんは抱いてきたもどかしさを払拭することができたと話す。

御厨晴美さん:
客から「おいしかったよ」という声を聞くことで、牛だけでなく食べ物を生産しているという仕事に自信や誇りを感じられるようになった。客の反応をスタッフに伝えることがやりがいにもつながっている。

西海市の自然がはぐくんだ御厨さん夫婦の長崎和牛。たっぷりの愛情が和牛のうまみとして存分にいかされ、みくりや畜産のコロッケは多くの人の心をつかんでいる。

こんなまちメモ

<西海市>長崎市から車で1時間ほどに位置する。三方を五島灘・佐世保湾・大村湾に囲まれた西彼杵半島北部と、周辺に点在する島からなる。肥沃な土ときれいな水を生かした農業と工業がさかん。美しい海岸や山あいからの絶景を楽しめ、海と山の恵みを存分に味わえる地域色豊かな西海グルメも人気。

(テレビ長崎)

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