東日本大震災の被災地でも活躍した森林のプロ直伝の「自然の力」を使った森林再生

能登半島地震で多数発生している土砂崩れ。被災地ではコンクリートなどを使わず、能登の森を自然の力で再生させようとするボランティアがいる。東日本大震災の被災地でも森林再生に携わった森林再生のプロを取材した。

地震から3カ月半経っても手つかずの裏山

能登町本木(ほんき)にある民宿「土とディスコ」。能登半島地震で裏山が崩れた。

この民宿を運営する田村早苗さんは「完全にあんなんじゃなかった、あんなにえぐれてなくて普通に斜面という感じで...」と話す。すぐに被害が拡大するわけではないことから地震から約3カ月半経つ今も手つかずのままの状態となっている。

東日本大震災の被災地でも活躍した“森林のプロ”

「この山の斜面自体を強くする作業をする。森って水の道と空気の道が大事。ここに水の道と空気の道を作ってあげると、微生物が分解しやすくなって、木が生えてくる、自然の力で森を回復させている。」こう話すのは横浜の森林保護団体「森のたね」の代表で林業に携わっている村里ゆうきさんだ。

東日本大震災の被災地、宮城県石巻市でも7年前から森作りの復興支援を行ってる村里さん。重機やコンクリートなどを使わず自然の力に頼る長期的な森の再生を行うのが特徴だ。

村里さんは「今歩いたところってすでに溝を掘って木の枝などを埋めてある。これが微生物のご飯になる。まずは土を掘りこんで水が土の中を通るようにしてあげる。すると、微生物も増えるし、土がふわふわになって植物が生えやすくなる」と話す。

土砂崩れに強い森づくり

斜面の崩れた部分をコンクリートで固めると水や空気の流れが止まり、溜まった水が腐って木が生えづらくなる。すると木そのものが死に倒木や土砂崩れの原因となるそうだ。

一方、葉っぱや丸太など自然のものを使えば土に水と空気が行き渡り、栄養のある土が出来上がる。そうすることで新たに木が生え、その根が広がることで森自体が強く、崩れにくくなるというわけだ。村里さんは半年で見た目に変化が現れ、3年もすれば立派な木がたくさん育つと語る。

能登の森の課題は「ツタ」

しかし能登の森には課題もある。村里さんは「ツタ系の植物って木を殺す役目がある。能登にはツタがぐるぐるぐるって巻いてる木が多いんです。自然がこの木はもう殺そうと藪になってツタが育つと木が倒れやすくなる。それでバンって倒れて電線を切ってしまう」と指摘する。人手不足で管理が行き届かず、能登はツタが張った木が多いという。

森を今後どう管理していくかも課題の一つとなっている。依頼した田村早苗さんは「いやあ、すごい。自分ではやり方も分からないし、役場とか公共のところに相談もしたけどあんまりで、まあ大丈夫でしょう、今すぐにどうとでもならないと思うので...みたいな感じやったけど、めっちゃありがたいです」と感謝する。

村里さんは「自然と会話をして落としどころを見つけること。全部自然の都合に合わせていたら人の生活があるから、土砂はどかした方がいいし、道路は通した方がいいと思うけど、自然の都合と人間の都合を合わせて良い森になっていくといいな」と期待を込めた。

1次産業が盛んな能登の復興に欠かせない森作りのあり方。長期的な視点での取り組みが必要だ。

(石川テレビ)

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