オール山鹿ロケ映画『骨なし灯籠』異例の大ヒットで上映期間延長 木庭撫子監督が作品に込めた思い【熊本】

熊本市の電気館で上映中の映画『骨なし灯籠』。満員となる回が続いて異例の大ヒットを記録し、上映期間の延長が決まりました。その魅力と、監督が映画に込めた思いに迫ります。

(初日舞台挨拶3/22)
【木庭 撫子(こば・なでしこ)監督】
「オール山鹿ロケで、山鹿の今を切り取った映画だと思います。こんなにたくさんの人たちに来ていただいて、本当にうれしいです」

おととし夏、山鹿市を舞台に撮影された映画『骨なし灯籠』。妻を亡くし、喪失感を抱えてさまよう主人公が山鹿の人々と触れ合い、生き方を見つめ直す物語です。

3月22日、熊本市の電気館で先行上映がスタート。満員となる回が続いて異例の大ヒットを記録し、上映期間の延長が決まりました。

【観客】
「映像がとてもきれいで、とても素晴らしかったです」
「(山鹿には)何回も行っているけど、映像で見ると、またきれいですよね」

(3/25山鹿市役所)
脚本・監督を務めた山鹿市在住の木庭撫子(こばなでしこ)さんです。

この日は、主演の水津 聡(すいつ・さとし)さんとまひろ玲希(たまき)さん、そして、山鹿市出身の俳優、高山 陽平(たかやま・ようへい)さんと知江崎(ちえざき)ハルカさんが山鹿市役所を訪れました。

山鹿市の早田 順一 市長も市民の役で宴会のシーンに出演しています。

【山鹿市 早田 順一 市長】
「とても感動する映画で、私も出演できて本当にうれしく思っています。一生の思い出になると思います。ぜひ、ご覧ください」

木庭監督は『北の国から』などで知られる脚本家・倉本聰さん主宰の『富良野塾(ふらのじゅく)』出身で、主にテレビドラマの脚本を手がけてきました。そして2021年に、東京から夫の祖父母が暮らしていた山鹿市に移住しました。

【プロデューサー 木庭 民夫さん】
「今回は仕事というか、仕事を超えた・・・」

【木庭 撫子 監督】
「仕事じゃない感じがしますね。移住してきた私たちの生きる一つの歩みみたいな映画にしたいと思っている。本当に山鹿はとてもきれいな所だと思っていて、草とか花とか木とか森とか川とかたくさんの森羅万象のものたちの中で自分は生かされていて、みんなが見守ってくれているんだよと。だから一人ぼっちだって思わなくてもいいんだよとこの映画で一番言いたい」

映画には『富良野塾(ふらのじゅく)』出身の俳優たちも出演し、確かな演技を見せてくれます。水津さんもその一人です。

【市井 祐介 役/水津 聡さん】
「大切な人を突然亡くした役なんですが、当たり前の日が続いていくかなと思ったら、突然その人とはいきなり別れるみたいな。生きている意味って何だと、突然、人生を投げ出したくなると思うんです。生きていこうと思うきっかけというか、山鹿のあらゆるものに支えられている自分にどんどん気づいていくところで、彼自身が生きていくんだなと気づいたと思うんです」
「役と同じ所に僕、泊まっていたんです。役が泊まっている部屋という設定の所に(撮影中)お借りして、役ともう同居しているような、すんなりとその土地になじめた気がしました」
「映画館のサイズで見ると人のこともそうですし、山鹿の風景なんかもビシッと入ってくるんじゃないかなと。映画館にぜひという感じです」

まひろ玲希(たまき)さんは、主人公の妻と双子の妹あかりの双子姉妹を演じています。

【市井 ゆかり・あかり役/まひろ 玲希さん】
「(山鹿の街の印象は)日曜日、ひなたぼっこみたいなイメージですかね。ちょっとした路地裏的な所も全部絵になるし、雄大できれいでノスタルジック、本当におしゃれ、味わいがある。映像になると、それがリアルにくっきり出たと思います」
「双子ということでちょっと似ているようで似てない、ニュアンスの違う色をどこまでのラインで出すのか、どこまでなんだろうという微調整は現場で監督にお聞きしながら進めていきました」
「見ていただいた方の今までの人生によって捉え方が違うと思うんですけれども、本当に背中をポンと優しく押してくれる映画だと思っていますので、ぜひ(映画館に)足を運んでください」

【れい役/知江崎ハルカさん】
「自分の出身地で撮った映画が上映されるということが、まず感慨深い。熊本の先行上映で勢いをつけて、たくさんの人に見てもらえたらと思います」

去年11月の東京や大阪で開催されたクラウドファンディングのための上映会で知江崎さんは灯籠踊りの衣装で登場。山鹿灯籠をアピールしました。

【れい役/知江崎ハルカさん】
「『山鹿灯籠』と言ったときに『ああ、これか』と思っていただけるし、すごく反響ありました」「生まれ育った所のはずなんですけど、こんな一角にこんな所があったのかとかここをこういう形で撮ると、こういうふうに見えるんだとか、改めて気づく山鹿の良さとか熊本の良さとか人の良さとかにつながるのかなと思いました」

【木庭 撫子 監督】
「山鹿の中学校の立志式でこの映画について話した時に『あなたたちはいつかこの山鹿を離れるかもしれない。どこか都会に出るかもしれない。でも、この映画を見れば、あなたが中学2年生のころの山鹿が生きている。あなたは一人じゃないんだよ。いつでも山鹿はあなたを待ってるんだよ』と言えました。生きづらさを抱えていたり、自分はすごく孤独だと思っている人たちが『そうじゃないんだ』と思っていただけるようにつくっているので、山鹿の美しい風景があって、少しでもホッとして、前を向けて歩いていけるような感覚に陥ってもらえたらなと思います」

映画『骨なし灯籠』は、熊本市の電気館で上映中です。

3回見た記者によりますと、いろいろな仕掛けがあって、見るたびにその仕掛けに気づく楽しみがあるそうです。

この『骨なし灯籠』ですが、電気館での先行上映は3月22日から当初2週間の予定だったんですが、好評につき、今のところ5月9日(木)までの延長が決まったそうです。

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