うなぎ登りの最低賃金→「人を雇わず、機械に頼ろう」…「失業者数」と「物価上昇」の厳しい実情

(※写真はイメージです/PIXTA)

日本に明るい未来は見通せるのか? 厚生労働省『毎月勤労統計調査』など、データに表れる「国民のリアル」を見ていきます。

失業者数増加、給与も上昇しているが…

日本の明るい未来は見通せるのか。総務省統計局の発表によると、完全失業者数は2024年2月集計で「177万人」(季節調整値)。3ヵ月ぶりの増加で、前年同月に比べて3万人増加しています。

ただ国際比較統計を見てみると、日本の完全失業率は、主要各国より低い結果を推移しています。

【各国の完全失業率(月次、季節調整済)/2022年12月の結果】

日本・・・2.5%

韓国・・・3.1%

アメリカ・・・3.5%

カナダ・・・5.0%

イギリス・・・3.7%

ドイツ・・・3.0%

イタリア・・・7.9%

フランス・・・7.0%

(総務省統計局)

米カルフォルニア州では、最低賃金20ドル超えを目前にしています。これを受け同州のファストフードフランチャイズは、全店舗に注文用キオスク端末の早急な導入を目指すと明らかにしています。人件費削減が目的です。

最低賃金が上がることは喜ばしいことのようで、働く人員の削減にもつながります。賃金は上がってほしいが、それで雇用が減るのも…という難しい問題に直面しています。

さて、働いている人の雇用環境は現況どうなっているのか。

厚生労働省『毎月勤労統計調査 令和6年2月分結果確報』によると、日本の一般労働者の現金給与総額は「28万1,087円」で前年同月比1.4%増、パートタイム労働者の現金給与総額は「10万5,156円」で前年同月比3.0%増となりました。

産業別に見てみると、もっとも大きく現金給与総額が伸びたのは「学術研究等」で前年同月比3.0%増。不動産市場のバブルっぷりが現れた結果ともいえるでしょうか。一方、給与総額を大きく落としたのは「鉱業、採石業等」で前年同月比14.2%減となりました。

昨年10月には最低賃金が改定され、全国平均賃金は「1,004円」、初の1,000円台となっています。しかし給与が上がろうと、物価の上昇がそれを上回るいま、暮らし向きが上向くわけではありません。実質賃金は減少を続けています。

消費者庁は『物価が上がっているけど、消費者の私たちはどうしたらいいの?』というタイトルの特設サイトを設置しています。サイト内ではまず物価上昇について「新型コロナウイルスの感染拡大によりモノやサービスの提供が滞ったことや、 ロシアによるウクライナ侵略により日本が輸入するモノの国際的な相場が大きく上昇したことなどによります」と解説されています。

「物価上昇のピンチ」をチャンスに!…続くまさかの内容

さらに見ていくと、「バランスの取れた賃上げ&値上げ」を目指すとし、「物価上昇に対応して賃金を引き上げる動きがみられています。(中略)現時点では、賃金の上昇が物価の上昇に追いついていません。 しかし、長らく凍結されていた賃金に上昇の機運が生じてきたのは大きな変化と言えます。 物価上昇のピンチを賃金上昇につなげるチャンスです!」とされています。

最後に「わたしたちにもできること」として、以下の3つが挙げられています。

●消費者の立場からも、この機会に物価と賃金の関係について考えてみる

●行きつけのお店や推しの商品に値上げがあっても、買って応援する

●賃上げを求め、賃上げが実現するよう自分もできることにトライする

ここまで見てきたように平均給与は上昇してきていますが、令和6年2月分の「前年同月比1.4%増」という数字を見ても、「賃金の上昇が物価の上昇に追いついていません」という一節には実感のある方が多そうです。

「物価上昇のピンチを賃金上昇につなげるチャンスです!」と言われて共感できるか……と聞かれたら、少々難しいかもしれません。「わたしたちにもできること」の項目も、そんなことか……とがっかりする内容ではありますが、それしかできることがないのも事実です。

消費者の苦しい生活はまだしばらく続く見込みです。暗いトンネルの出口は、まだ見えていません。

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