「1人で亡くなった気持ちが分かりますか」遺族が元理事長に直接質問 園児バス置き去り死事件 初公判=静岡・牧之原市

2022年9月、静岡県牧之原市で3歳の河本千奈ちゃんが通園バスに置き去りにされ、重度の熱中症で亡くなった事件の初公判が4月23日開かれ、元理事長らは起訴内容を認めました。

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裁判で千奈ちゃんの父親は「1人で亡くなった気持ちがわかりますか」と被告に質問を投げかけました。

かわいらしい笑顔を見せているのは、河本千奈ちゃんです。2022年9月、静岡県牧之原市の「川崎幼稚園」で通園バスの中に約5時間もの間置き去りにされ、重度の熱中症で死亡しました。当時3歳でした。

<河本千奈ちゃんの父親>
「朝、妻が結んでくれた三つ編みも汗でびっしょり濡れているような状態でした」「あんな幼稚園に通わせてしまったとか、助けてあげられなかったとか、申し訳ないって気持ちが大きいですね」

<川崎幼稚園 元理事長>(おととし9月)
「亡くなられた園児及びご遺族に心よりお詫び申し上げます」

事件をめぐっては、当時バスを運転していた元理事長(74)と、元クラス担任(48)が業務上過失致死の罪で在宅起訴されました。

4月23日、静岡地裁で開かれた初公判。傍聴券を求めて続々と人が集まりました。

<傍聴券を求めて並んだ人>
「どうして気が付いてあげられなかったのかなということを知りたい」

起訴状によりますと元理事長は園児をバスから降ろす際、座席の確認を怠って、千奈ちゃんを車内に置き去りにしたなどの過失、元クラス担任は千奈ちゃんが登園していないと気付いたにもかかわらず「欠席」と信じ込み、確認しなかった過失があったとして、千奈ちゃんを死亡させた罪に問われています。

2人は裁判長から起訴内容が間違いないか問われると、元理事長は「はい」、元クラス担任は「間違いありません」と答えました。また、元理事長は「悲しい思いをさせてしまったことを言葉では表せない。こんな悲惨な姿にしてしまって申し訳なく思った」と謝罪の気持ちを述べました。

23日は千奈ちゃんの父親が被害者参加制度を使って法廷に立ち、ついたての奥から元理事長に質問をしました。

<千奈ちゃんの父親>
「千奈がバスの中で、自分ではどうすることもできなく、1人で亡くなっていった気持ちがわかりますか」
<元理事長>
「はい。苦しい思いをしていたんだなと思います」
<千奈ちゃんの父親>
「廃園にするとあなたは約束しましたね」
<元理事長>
「誠に申し訳ございませんが、私の言葉からは言えません」
<千奈ちゃんの父親>
「廃園にすることが、千奈と私への償いだと思いませんか」
<元理事長>
「申し訳ございませんが、廃園にすることは言えません」

元理事長は事件直後に遺族に対して「川崎幼稚園を廃園にする」と約束していました。園の運営法人は「希望者がいる以上は園を継続しなければいけない」として川崎幼稚園は存続しています。

次回の公判では、元クラス担任への被告人質問が行われ、千奈ちゃんの父親が元クラス担任に直接質問する予定です。

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