「彼女たちを遠ざけてしまったのは自分」世羅りさが孤独な闘いに一区切り。プロミネンスが2周年を機に不定期開催へ

23日、東京都・新木場1stRINGにて『プロミネンス 第23戦 ~プロミネンス旗揚げ2周年記念大会~』が開催。プロミネンスが定期大会開催に一区切りを付けた。

プロミネンスとは、2021年末を以てアイスリボンを退団した世羅りさ、柊くるみ、夏実もち(※宮城もちから改名)、藤田あかね、鈴季すずの5名が結成したデスマッチ&ハードコアユニット。全員フリーランスながらユニットとして活動をともにしていく形式であり、男子団体・女子団体を問わず幅広く参戦している。

すずは昨年4月にプロミネンスから離脱して現在はスターダムに所属しているが、プロミネンスとスターダムの関係は良好。度々ビッグマッチには登場して王座戦線に絡み続けてきており、直近でも今月21日のスターダム大阪大会で世羅&くるみがタッグ王座に挑戦している。
また、今月15日にはレギュラー参戦中の石川奈青がロッシー小川の新団体『マリーゴールド』の所属となることが発表。石川は今後もプロミネンスへの継続参戦を希望していることから、マリーゴールドとのつながりも生まれていきそうだ。

旗揚げ以来、基本的に月に1度の大会開催を維持してきたが、今大会を以て定期開催に一区切りを付けることに。
この日のメインイベントでは、世羅りさvs佐々木貴のデスマッチが実施。旗揚げ戦でも同じカードで試合が行われていた。

佐々木が入場するなり世羅が竹刀で奇襲し、蛍光灯扇でぶん殴ってからの羅紗鋏と速攻をかける。
なおも畳み掛ける世羅だったが、耐えきった佐々木が蛍光灯の束を脳天に振り下ろし、サッカーボールキック with 蛍光灯から世羅の額を血まみれに。
佐々木はリング中央に蛍光灯を積み上げ、「おい世羅!旗揚げ2周年おめでとう!」と自らビッグバンプ。世羅も倣って蛍光灯の山の上で受け身を取り、2人は不敵な笑みを浮かべながら見つめ合う。
佐々木が「3年目のプロミネンスはどうすんだオイッ!」と世羅の覚悟を問いながらミドルキック with 蛍光灯を連打。世羅は蛍光灯を使いながらの串刺しダブルニーアタック、リバーススプラッシュ式ダブルニードロップで返礼。さらに蛍光灯の山を佐々木の上に築いてからダイビング・ダブルニードロップを狙う。

佐々木は蛍光灯の山を投げつけて「世羅!プロミネンス2周年おめでとうッ!こっからプロレスラーとしての生き様、見せてみろッ!」と雪崩式ブレーンバスター。世羅は血みどろになりながらも立ち上がり、竹刀で滅多打ちにしてからブレーンバスター。ありったけの蛍光灯を積み上げてからダイビング・ダブルニードロップを叩き込み、佐々木のバックドロップ、DDT、右脚を耐え抜いてカウント1で肩を上げる。

ならばと佐々木は蛍光灯の山の上にDガイストで突き刺し、右脚 with 蛍光灯の束で3カウント。2年前の旗揚げ戦と全く同じ結末となった。

マイクを取った佐々木は、「今日でプロミネンスの月1定期開催、とりあえず一旦終了らしいじゃないか。そう言えば聞こえはいいかもしれないけど、俺から言わせてもらえばそんなもんプロミネンスの活動休止だよ。俺だってどんだけつらくても、どんだけイヤな思いしても、FREEDOMSを15年やって来たぞ」と団体の長として厳しい言葉を世羅に投げかける。

しかし、その後は「プロミネンスという組織を解散させること無く、不定期開催とはいえ組織を引き続き率いながら、その上でさらにプロレスラー・世羅りさ個人としてもっと高みを目指して1人の戦いにも挑もうとしている。こんなスゴい奴、いなくないですか?!自分の居場所を、後輩たちの居場所をしっかり守ってあげた上で、自分個人の闘いに1人で挑もうとする!そんな奴、いなくないですか?!世羅りさ、お前は本当にスゲぇ、本当に侠気のあるプロレスラーだと俺は思ったよ!」と世羅を絶賛。握手の後に世羅の頭を撫で、「ありがとうございました!」と座礼を交わした。

その後、世羅は「自分はプロミネンスからちょっと逃げたかったのかも知れません。2年で解散も考えてました。だけど、仲間がいて、こうしてたくさんのお客様が来てくださって、ゲストも毎回出てくれて、2年で終わるなんてやっぱり出来なかったよねぇ……!自分はプロミネンスとしてリーダーでありながらも、1プロレスラーとしてこれからもっともっと上に行きたい。もっと色んな団体に出たいし、色んな団体のベルトが欲しいし、プロミネンスじゃなくて貪欲に色んな人と組んで、シングルプレイヤーとしても上を目指して……色んなことがもっともっとやりたいんだよ!それをプロミネンスのリーダーとして叶えるのは、世羅にしか出来ないと思う。この背中を色んな奴に見せて『ああいう風になりたい』って思わせるのが世羅りさの務めだと思ってるから。これからだって、好きなことを好きなときに好きなだけやらせてもらいます!これからも皆さんよろしくお願いしますッ!」と絶叫。観衆は大歓声で世羅を支持した。

感動的なムードで終わった大会であったが、バックステージに戻った佐々木は「俺も15年FREEDOMSやってきて、しんどいときもいくらでもありました。意識の差。『結局頑張ってるのは俺だけか』って思ったこともある。すごい孤独感。『俺、1人ぼっちじゃないか』って思うこともある。でも、プロレスラー・佐々木貴がなくなるときはFREEDOMSと一緒だと思ってやって来た。俺は世羅の決断を後押ししたいし、そのためにプロミネンスが足枷になるのも良くないと思う。他のメンバー個人個人が頑張って実力と名を上げて『プロミネンスという場が絶対不可欠だ』と思うなら、世羅が声をかけなくたって自然とこの場は出来上がると思う。だけど、最後に世羅がリングに1人で残って竹刀を杖代わりに立って退場して行く中、他のメンバーはどこ行ったのかと思ったら売店にいましたよ。俺はそれが答えなんじゃないかなって思ってます」と、プロミネンスという組織自体が実質的にもう崩壊しているのではないかと指摘した。

対する世羅は「2年、長かったようで短かった。リーダーとしてみんなを引っ張るのは大切かも知れないけど、世羅りさ個人のプロレス人生をもっと鑑みてもいいのかなって。『もっと貪欲な人間だったんじゃないか?自分は?』って。少なくとも2年前はもっと貪欲だったと思うんです。いつの間にか月1の大会をこなすだけの日々になっていたなって。改めて、世羅りさの1プロレスラーとしての今後をもっと貪欲に生きていきたいと思います。終わりじゃなくて、新しい始まりに。プロレスラー人生をもっと楽しんで、悔いなく出来たらと思います」と、放心状態にも見える様子で淡々と語る。

そして「鈴季すずの脱退も、悲しいというか寂しかった。ずっと一緒にやって来た子だったからねぇ……。唯一寄り添ってくれた子でもある。そんな人がいなくなってすぐ離婚して、人生が90度変わった。戸惑いもあったけど、それを乗り越えてこそ晴れやかな気持ちですね。孤独だったけど、孤独だったからこそ『自分はやり切ったんだぞ』って思える。色々プラスに出来たと思います。色々」と胸中を吐露した。

その後、佐々木が「世羅が1人で退場する中で他メンバーは売店に立っていた」とコメントしていたことを伝えられると、世羅はしばし絶句。
「彼女たちを遠ざけてしまったのは自分なので。『個人でやろうぜ』って意思表示かもしれないですから、自分はなんとも……言えない。難しいですね。……そうなんだ。知らなかったから」と言葉を絞り出し、寂しそうに笑った。

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