【今日の読み切り】「星の恋人」切り落とした僕の指は、美しい人になっていた

by 石井聡(クラフル)

【星の恋人】

著者:市川春子

講談社

4月25日に発売のアフタヌーン6月号で、ついに「宝石の国」が完結する。その作者、市川春子の短編集「虫と歌」には、「宝石の国」にも通じる、市川ワールドのエッセンスが詰まっている。

巻頭作「星の恋人」は、自分を人間だと思っていたさつきと、さつきの切り落とされた指から生まれたつつじとの関係を描いた短編。母親と祖父が海外にいってしまったさつきは、叔父の家に住むことになる。

ところが、家に着いた途端、実は自分は人間ではなかったという衝撃の事実を、さらっと知ることになってしまう。さらに、叔父と一緒に住んでいる少女、つつじが、実は幼いころ切り落としてしまった自分の指が育った姿だと聞かされる。

世界に2人しかいない存在で、優しくかわいく心が通じるつつじに、さつきはどんどん惹かれていく。そんな気持ちを知ってしまったつつじは……。

静かだが激しく、優しいが恐ろしい。相反する感情が、短いストーリーの中に語りきれないほどの物語を生み出している。本作で市川春子の魅力の一端を感じて欲しい。

【あらすじ】

家族が突然海外に行ってしまった中学生のさつきは、叔父の家で生活することになる。叔父は植物の発生学が専門で、実はさつきは叔父によって植物から作られたと告白する。

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