『くる恋』瀬戸康史が醸し出す“ポップすぎない”大人の色気 ラストに描かれた波乱の展開

恋愛指南書でよく見かける言葉に、「その人といるときの自分が好き」と思える相手や時間を大切にしようというものがある。好きな人と過ごす時間の中で、自然体でいられたり、一生懸命になったりと好きな自分を感じられることも、やはり幸福だからだ。ドラマ『くるり~誰が私と恋をした?~』(TBS系)第3話では、仕事や自分探しに悩むまこと(生見愛瑠)を本当に笑顔にしてくれるのは誰なのかを考えさせられる展開が待っていた。

指輪職人の道を歩み始めたまことは、やる気に満ち溢れていた。しかし、指輪作りという繊細な手仕事に想像以上に不器用だと気付かされ、落ち込んでしまう。練習を重ねても失敗作の山が積み上がるばかりで、一向に上達の兆しが見えない。それでも、やらないことには上手くならないと信じ、とにかく必死にリングを叩き続けるまこと。しかし、指輪職人の杏璃(ともさかりえ)から「作業が雑になっているから休むように」と忠告されてしまう。

落ち込むまことは、公太郎(瀬戸康史)のフラワーショップを訪れ、自分の苦悩を打ち明ける。すると公太郎は、「下手なヤツが食事も取らないでやってても、下手に磨きがかかるだけ」と手厳しいアドバイスをくれる。相談相手が律(宮世琉弥)や朝日(神尾楓珠)だったらまた違う回答が返ってきたのだと思うが、結局のところ「好きを仕事にした」まことにとって、公太郎は相談相手に適任だったように思う。さらに、リングをなくした客・野沢(別府ともひこ)の相談に乗るまことに対し、公太郎は“忘れられた”側の存在について話し始める。

公太郎との会話を通じ、記憶を取り戻すきっかけになるかもしれないと、自分が転落した場所に行くことを決意するまこと。心配した公太郎と共に事故現場を訪れると、そこに朝日が現れる。また、「今のところあたしのことを一番知っている人」と紹介された公太郎に朝日がやや敵対心を見せるシーンも。イケメン同士の意地の張り合いは、ほのかな緊張感と可愛らしさを同時に感じさせた。

一方、律もまことに会うためにリングショップを訪れる。“リサーチ力”の高さを持つ律の「嘘くさい」という言葉には、謎めいた説得力があるように感じられた(といっても律自身も怪しいのだが)。ここで働いていることを知らないはずの律の来店にやや怯えるまことだったが、コミュ力高めな律のペースにまたもやのまれてしまう。朝日や公太郎とはまた違うタイプの不思議な魅力がある律だが、彼もまたリングがピッタリとハマる“恋人候補”なのである。

第3話を迎え、3人の男性キャラクターの個性も徐々に明らかになってきた頃だが、SNS上では特に公太郎役の瀬戸康史の大人の魅力が「本命すぎる」「ビジュアルも雰囲気も最高!」と話題に。第3話では、過去の自分に罪悪感を抱き「自分ってなんだろうね」と落ち込むまことに、公太郎がナチュラルに頭をポンポンする胸キュンシーンも印象的だった。また、「師匠が弟子を見るんじゃなくて、弟子が師匠を見るんじゃないの?」というプロとしての鋭い発言も。中でも注目を集めているのが、そのベビーフェイスからギャップを感じさせる低めで優しい声のトーンだ。

『寝ても覚めても』や『人間失格 太宰治と3人の女たち』など、数々のドラマや映画に出演してきた実力派俳優のイメージが強い一方で、昨年には声優デビューも果たしている瀬戸。アニメファンからも多くの注目を集めた劇場アニメーション作品『アリスとテレスのまぼろし工場』では、製鉄所の爆発事故をきっかけに失踪する正宗の父親・昭宗役を演じ、名だたる有名声優陣にも負けない存在感を発揮していた。

『くる恋』では、瀬戸の落ち着いたトーンと柔らかな深みのある声が、ラブコメディでありながら“ポップすぎない”大人の色気を醸し出している。本人は「あまりそこに重きは置いてなかったので、お芝居の流れで優しさがこぼれている感じだと思います」と話しているが、視聴者にとっては強く印象に残る要素となっているのではないか。

第3話のラストは、朝日との2人きりのやりとりを公太郎が目撃してしまう波乱の展開に。「違うけど同じ」まことに惹かれる3人の男性たちは、まことの何を知っているのだろうか。彼らからみたこれまでの景色が全て描かれた時、本作の印象は“くるり”と変わって見えてくるのだろう。
(文=すなくじら)

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