『Destiny』亀梨和也の無邪気さにかき乱される 「絶対に離さない」奏と真樹の12年が交差

真樹(亀梨和也)はどうしてこうも心をかき乱してくるのか。空白の12年間に見事夢を叶え検事になった奏(石原さとみ)に「すごいな、頑張ったんだな」と欲しかった言葉を簡単に差し出し、知美(宮澤エマ)から“どうして来たのか”と問われれば「会いたかったから、皆に」と素直に答える。

奏に結婚相手がいると知れば「良いなぁ、奏と結婚か」とこぼし、「離しちゃダメだぞ」と絶対に離れない手の繋ぎ方をやって見せる。

“あなたにだけは言われたくない”ということを事もなげに素直に口にする。彼の無邪気さは12年経った今も変わっていない。そんな無邪気さが、12年前のあの事件を引き起こす一因になってしまったのかもしれない。

『Destiny』(テレビ朝日系)第3話では、奏の父親・辻英介(佐々木蔵之介)と真樹の父で弁護士の野木浩一郎(仲村トオル)の繋がりが見え始め、そして奏と真樹がまた惹かれ始めた。

英介は最後に担当した「環境エネルギー汚職事件」で検察が捏造した事件だとして逮捕に追い込まれるが、その際に英介を糾弾した弁護士が浩一郎で、さらに彼ら2人は元々同期だったことがわかる。

そしてこの事実に行き着いた12年前の知美は、それをカオリ(田中みな実)に伝えたのだろう。そもそも奏と真樹との交際に反対していたカオリは、この事実を車内で彼に告げ、“そんな2人が付き合ってはいけないんだ”と訴えたのだろう。

カオリが亡くなることになってしまったのも「ずっと友達でいようね」と約束した5人の関係をバラバラにしてしまったのも自分のせいだという思いが知美の中にはあるようだ。だからこそ、真樹が奏に近づくことを許さない。それは奏を心配してのことなのか、それとも自身の罪がバレたくないからなのか。夫・祐希(矢本悠馬)の前で「だって全部私が悪いから」とこれまで12年間秘め続けてきた思いをこぼし泣き崩れた知美の姿に、彼女にとってもこの時間はとてつもなく長く重いものだったのだろうと想いを馳せずにいられない。知美がカオリの両親に「1日たりとも忘れたことはありません」と伝えていた言葉がリフレインする。

奏は知美に検事になって常々思うこととして「罪を犯すか犯さないかって紙一重」「踏み越えるか越えないか」だけで、人は簡単に間違うことを伝えていたが、あの時の知美の罪も紙一重と言えるだろう。自分だけが知ってしまった真実を1人では抱えておけず、真樹に好意があることが明らかな、そして就活がうまくいかず不安定なカオリにますます穏やかではいられないような情報を与えてしまった。そして、それを2人に伝えた方が良いというカオリを「そんな子どもじみたことに巻き込まないでほしい」と切り捨て十分にケアしなかった。

カオリの通夜に現れた真樹は道を挟んで「ごめん、俺がカオリを……」と言いかけ、トラックが通過した後そこに彼の姿はなく、12年が過ぎた。

そして、今度は真樹の前から奏がいなくなろうとしている。結婚相手がいると知り「絶対に離さないように」としたジェスチャーが、2人が交際していた12年前の思い出を一気に蘇らせる。そこにトラックが通過するも、真樹はそこからいなくはならなかった。時折織り込まれるこの12年前と現在の交差が、彼ら2人が巻き込まれてしまった運命の残酷さを際立たせ、彼らにとってどれだけあの日々が鮮烈でかけがえのない日々だったかを印象付ける。

貴志(安藤政信)がいながらも真樹と惹かれ合うことを止められない奏。“踏み越えてしまった”2人に待ち受ける運命はどんな展開だろうか。

浩一郎に奏と会っていないか確認していた黒塗りの車の男もまた気になるところだ。
(文=佳香(かこ))

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