創業117年、氷見の靴店閉店 本町商店街・クニモト本店、7月にも 「ここまで続けられ満足」

閉店準備を進める国本さん夫婦=氷見市本町

  ●70代夫婦、健康上の理由で

 創業117年となる氷見市本町の靴店「クニモト本店」が7月にも歴史に幕を下ろすことになった。店を営む70代夫婦が健康上の理由で閉店を決意した。中心商店街に店を構え、地域住民に親しまれてきた老舗の店じまいを惜しむ声が絶えないが、夫婦は「ここまで続けてこられて満足」と感謝し、5月5日から始まる閉店セールの準備を進めている。

 クニモト本店は、初代の國本亀次郎さんが1907(明治40)年に氷見駅近くで創業し、長靴を製造した國本ゴム工業所が前身となる。38(昭和13)年の氷見大火を経て、2代目の茂次さんが国道415号に面した本町商店街の一角に店を構えて靴の卸販売を始め、3代目の武志さん(79)と和子さん(76)夫婦は半世紀近く前から靴店に携わってきた。

 商店街が栄えた昭和後半まで最盛期を迎えていたが、靴の量販店やホームセンターなど大型店の進出などで商店街の衰退とともに客足が徐々に減った。それでも、中高年向けを中心に婦人靴や紳士靴のほか、ウオーキングから足の負担が少ないシューズをそろえる店は評判で、コロナ禍では地域の常連客に支えられ、売り上げはそれほど落ち込まないぐらいに住民に親しまれてきた。

 温厚で実直な人柄の武志さんは、世話好きだった先代の茂次さんにならって商店街の会長を歴任するなど地域の世話役も務めてきたが、5年ぐらい前から体調が優れない状態が続いた。代わりに和子さんが中心となって店を切り盛りしてきたが、昨春に健康を崩して入院。いったんは回復し、体調を気遣いながら店に立ち続けたが、今春に再び入院したため、夫婦で相談して潮時だと決断した。

 店はこれまでの愛顧に感謝を込め、5月5日に市中心商店街で行うイベント「百縁笑店街」を皮切りに閉店セールを始める。全品半額以下で販売し、6月いっぱいまで営業を続け、店内の商品がなくなり次第、閉店する予定にしている。

 店では閉店を知った常連客らから残念がる声が相次いでおり、武志さんは「この年までよく続けてこられた。後継者がいれば交代しているが、商店街もこういう状況なので、時代の流れ」と話した。和子さんも「この年まで仕事ができたのは幸せ。いろいろと応援してもらい感謝しかない」と穏やかな表情を浮かべた。

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