美大3校舎記憶つないで 校舎解体きっかけ、思い出の写真募集

リモートで米村さんと打ち合わせをする寺井教授=金沢美大

  ●卒業生、教授ら企画「魅力を凝縮」 11月の美大祭で展示

 金沢美大の卒業生有志が、歴代の3キャンパスで在学中に撮影した写真を募る活動に乗り出した。県立図書館に隣接する小立野2丁目で昨年10月に新キャンパスが新設され、小立野5丁目の前校舎が取り壊しとなるのを機に、十人十色の青春を謳歌(おうか)した思い出の一枚を集め、秋の美大祭で写真展を開催する。1985(昭和60)年卒のOBが中心となって、若い世代にも投稿を呼び掛けている。

 写真募集に向けて、「1946 2024 金沢美大校舎の記憶」と銘打つ特設サイトが開設された。前キャンパスのほぼ全ての教室や、本多町3番丁(現出羽町)の初代の赤れんが校舎、現キャンパスの外観を収めた写真が掲載されている。OBのフォトグラファー下簗(しもやな)健一さんが撮影した写真で、同窓生が建物、フロア別に懐かしい写真やコメントを投稿して共有できる。

 写真の募集や写真展の企画は、85年に同大商業デザイン科を卒業したクリエーティブディレクター米村浩さん(62)=同大非常勤講師=が昨年6月、寺井剛敏教授(62)から前校舎の解体予定を聞いたことがきっかけとなった。同期の下簗さん、クリエーティブディレクター柏本(かしもと)郷司さんと2年後輩のアートディレクター水口克夫さんに声を掛け、5人で実行委員を務める。

 金沢出身の米村さんにとって、金沢美大は同じ事柄に興味を持つ人と初めて語り合える空間だった。校内で唯一、ベランダがあった3階の教室は思い出の居場所で、たばこを吸ったり、恋愛話に花を咲かせたりした。

 さまざまな世代が各校舎で過ごした時間を共有し、創立から78年にわたる縦のつながりを実感してもらおうと、写真の投稿を呼び掛けることにした。米村さんは「異なる時代を生きているのに話が通じる。美大生には不思議な関係がある気がする」と語った。

 クラウドファンディングで資金を集めて返礼品として写真集を贈り、11月の美大祭で展示する。母校で23年間教職を務める寺井教授は「卒業後も違う学生が違う人生を歩んでいたことが見えるはず」と話し、米村さんは「校舎はいろいろな風景をずっと見てきた。かけがえのない場所の魅力が凝縮された企画にしたい」と意欲を示した。

 ★金沢美大のキャンパス 金沢美大は戦後間もない1946(昭和21)年、本多町3番丁(現出羽町)にあった旧陸軍兵器庫を使用して、金沢美術工芸専門学校として設立された。赤れんがの建物は現在、県立歴史博物館として活用されている。72年には金大宝町キャンパスに近い小立野5丁目に移転。昨年10月には小立野2丁目の新キャンパスが開設された。新校舎はガラス張りで開放的な造りが特徴となる。

1972年に開設された前キャンパス=小立野5丁目
昨年10月に供用開始された現在のキャンパス=小立野2丁目

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