「井上尚弥はアメリカで戦う必要はない!」米大手プロモーターがモンスターの“海外進出"に異論!「ナルシスト」「身勝手極まりない」

日本が世界に誇る無敵の”モンスター”は、アメリカに進出する必要があるのか。この論争に、大物プロモーターが一石を投じている。

現地4月22日、米ボクシング専門メディア『Boxingscene』が世界スーパーバンタム級4団体統一王者・井上尚弥と共同プロモート契約を結ぶ米興行大手『Top Rank』のトッド・デュボーフ副社長のインタビュー記事を掲載。井上が5月6日に元世界2階級制覇王者ルイス・ネリ(メキシコ)と統一戦を行なう東京ドーム興行について、私見を語っている。

デュボーフ氏は井上について、過去に見てきたボクサーの中でも「最も偉大なファイター」だと評し、「すでに業界のアイコンである」と高く評価している。続けて、「勝手ながら、私は(井上を)アメリカで迎え入れたいと思っている。彼は天才だ。アグレッシブなスタイル、両拳のパワー、ボクシングIQ、ディフェンス、オフェンスなど。彼はすべてをこなしている」と、井上の天才的なスキルに賛辞を送る。
昨年12月にマーロン・タパレス(フィリピン)から2度のダウンを奪い、10ラウンドKOで勝利。テレンス・クロフォード(米国)に続き、史上2人目となる2階級での4団体統一王者となった日本人ボクサーには、母国でタイトル戦を戦い続けるやり方に異論を投げつける識者は少なくない。例えば、元WBC世界ウェルター級王者のショーン・ポーター氏は「ボクシング界で世界最高のスターになりたいなら、こっち(米国)での試合が必要だ」と発言。常にホームアドバンテージをもらう井上の実力を疑問視している。

デュボーフ氏は、そんな周囲の声を理解したうえで、「イノウエはマーケットに恵まれている。彼はアメリカに行く必要はない。日本は経済が完全に発展しているし、大きなスタジアムとメディアプラットフォームがある」と、井上の米国進出に強い反対意見を示す。 次に、ボクシング興行としては34年ぶりに開催される東京ドームでの防衛戦については「マイク・タイソンやジェームス・ダグラスを凌ぐ、ボクシング史上最大のイベントになると思う」と同氏は豪語。世界中を熱狂させ、今もスポーツ史上屈指の番狂わせとしてボクシング界に語り継がれる伝説の試合(タイソンのTKO負け)を超えると予想している。

「イノウエは天才だ。彼をアウェーに連れて行く必要があるのだろうか? 他の国にアピールするために旅に出る必要はあるのか? 『スターになるためには、アメリカに来る必要がある』なんて言うのは、ちょっとナルシストだな。そんなのは、でたらめだ。そんな目で彼を見ないでほしいし、私たちはそれを評価しているんだ」
近年のボクシング界は、テレビ中継からネット配信が主流になった。井上の試合も例外ではなく、ネリとの統一戦は動画配信サービス『Amazonプライムビデオ』で独占ライブ配信される。デュボーフ氏は井上の試合は世界でも注目度が高く、その視聴数は爆発的な数字を叩き出すと言及しながら、時代の転換期と日本人ボクサーの全盛期が重なっていると主張する。

「今の世界はとてもフラットで、私たちはどこでもつながっている。だから、アメリカにいる必要はない。イノウエが試合をすると、あらゆるプラットフォームでその瞬間のナンバー1として世界的なトレンドになる。私たちはライブでシグナルを発信することができ、誰もがそれを見ることができる。だから、彼がスーパースターであるためにアメリカで戦わなければならないと考えるのは、少し身勝手極まりないと思う」

井上が海外で試合をするメリットが少ないと強調したデュボーフ氏は、「私は彼を米国から愛したいと思っている。あの小さな宝石を、できる限り彼の故郷に近づけたいんだ」と日本での興行成功に期待を寄せつつ、モンスターの勝利を誰よりも願っている。

構成●THE DIGEST編集部

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