中部整備局/天竜川水系河川整備計画変更原案、気候変動踏まえ目標流量見直し

中部地方整備局は、天竜川水系河川整備計画(国管理区間)の変更原案をまとめた。気候変動の影響による降雨量の増大を見込み上下流基準地点の目標流量を見直す。洪水調節機能や治水機能を強化するため既存ダムを最大限活用し、さらに増強する必要がある場合は放流能力増強などに関する調査・検討を行う。あらゆる関係者が協働する「流域治水」の対策も追加する。今後、地域住民や関係機関の意見を踏まえ早期の計画策定を目指す。
現在の計画は2009年に策定したが、気候変動などで豪雨災害が多発。今後も降雨量の増大が見込まれる。一方、水災害対策はあらゆる関係機関が協働し流域全体で取り組む「流域治水」に転換したため計画を変更する。
目標流量は上流基準地点(天竜峡)で700立方メートル増の毎秒5700立方メートル、下流基準地点(鹿島)は1400立方メートル増の毎秒1万6400立方メートルに変更。河道を掘削し流量を増やす。洪水調節機能や治水機能の強化・増強では、事前放流や操作方法の見直し、利水・治水の貯水容量の再編など既存ダムを最大限活用するための調査、検討を行う。さらに機能の増強が必要な場合は、既設ダムの放流能力の増強や堤体かさ上げ、ダムの新設などに関する調査、検討を進める。
河川環境の整備・保全にも力を入れる。下流域では湿地やワンド・たまりなどを保全、再生し生物多様性の向上と地域活性化を両立する良好な自然環境を創出する。中・上流域では砂れき河原や工夫した河道掘削で瀬、淵、水際環境を創出する。
流域治水では、実証実験で効果を検証中の「田んぼダム」について、情報を流域自治体などで共有し取り組みを拡大する。まちづくりや住まい方を誘導し災害に強いまちづくりに取り組む自治体に対する技術的支援も行う。洪水氾濫の切迫度や危険度を的確に把握できるよう、浸水センサーの設置や3D管内図による浸水想定区域図の作成などインフラDXを活用し、情報伝達手段を強化する。

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