「遺族年金廃止」トレンド入りで騒然 〝インプレゾンビ〟の仕業も…現実味はあるか

年金を管轄する厚労省

不可思議な現象が起きた。23日、「X」(旧ツイッター)で「遺族年金廃止」が突如としてトレンドワードとなった。遺族年金とは年金に加入していた親や配偶者が亡くなった際に遺族が受け取れる年金だが、廃止とは大ニュース。そのため、Xには「遺族年金廃止する前に議員年金廃止してください」「どーやって生活するんだよ」「岸田のせい?」などと不満の声があふれた。

それだけではない。いわゆる〝インプレゾンビ〟と呼ばれるインプレッションを増やして収益を得ようというアカウントが大量に「遺族年金廃止する前に議員年金廃止してください」と書き込んだことで、ますますカオスな状況となっていた。

実際に遺族年金廃止を伝えるニュースはないが、書き込みをたどるとNHKが昨年7月に報じた「『遺族厚生年金』再来年の制度改正に向け議論へ 厚労省審議会」との記事が見つかった。これを引用し、遺族年金廃止と受け取った投稿が多数あった。

何が書かれている記事なのか。ある社労士は「この記事は遺族厚生年金について、男性と女性で受給要件に差があることが問題視されているから是正しようという内容です」と解説した。

記事によると、現状の制度では子のいる妻と、子がいなくても30歳以上の妻なら受給できるが、夫は55歳以上でないと受給できないという。「〝男性が外で働いて、女性は家庭を守る〟みたいな古い価値観がベースになっているため今の時代に合わないのです。主夫がいても不思議ではないし、多様化の時代に合わせて改正を議論しているということ。この記事から遺族年金廃止とは読み取れませんね。『廃止』は勘違いでしょう」(同)

制度の改正は議論されているが、廃止にまでは踏み込んでいないわけだ。「遺族年金の廃止をやると食べていけない人が出てきてしまうので現実的にはないのではないか。遺族年金を受け取りながら生活保護を受けている人もいるでしょうから」(同)

遺族年金廃止と同時に「議員年金」もトレンドワードとなったが、こちらはすでに廃止されている。政府批判をしたい人たちとインプレゾンビが組み合わさって正しくない情報が拡散されたようだ。それだけ岸田政権が信用されていないということもあるかもしれないが…。

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