【社説】海自ヘリ墜落 捜索と原因究明の徹底を

海上自衛隊のSH60K哨戒ヘリコプター2機が、伊豆諸島の鳥島東方海域で訓練中に墜落した。搭乗していた8人のうち、救助された1人は死亡が確認され、残る7人は行方が分かっていない。

墜落したヘリ2機は長崎県の大村航空基地と徳島県の小松島航空基地の所属だった。地元関係者のショックは大きいだろう。捜索に全力を挙げてほしい。

事故は20日深夜、ヘリからつり下げた機器で潜水艦を探知する訓練で起きた。海自が「最重要任務」と位置付ける潜水艦対処の能力を高めるものだ。

海自の護衛艦隊司令官が定期的に部隊の作戦遂行能力を評価する「訓練査閲」の最中で、ヘリ6機と艦艇8隻、潜水艦1隻が参加していた。

捜索現場では破損したヘリの回転翼のブレード(羽根)や機体の一部が見つかった。海自は2機のフライトレコーダー(飛行記録装置)を回収し、データを解析している。

飛行中の機体に異常を示すデータは確認されておらず、2機が空中で衝突し、墜落した可能性が高いとみている。同じ高度で飛行していたとすれば深刻な事態だ。

事故当時はヘリ3機が飛行していて、事故状況を客観視できたとみられるヘリの搭乗員、艦艇の乗組員からの聞き取り調査も進める。原因を徹底解明してほしい。

このところ自衛隊ヘリの事故が相次いでいることを憂慮する。

昨年4月、陸自のヘリが沖縄県の宮古島付近で墜落し、搭乗していた10人全員が死亡した事故は記憶に新しい。

海自の哨戒ヘリも2017年8月、青森県沖での夜間訓練中に墜落し、死者が出た。21年7月には鹿児島県の奄美大島沖で、2機が接触する事故が起きている。これも夜間訓練中だった。

海自は奄美の事故を受け、複数のヘリが展開する現場では、互いの飛行高度を変えるといった再発防止策を実行していたはずだ。

木原稔防衛相は自衛隊の全航空機について、飛行前点検を入念に行い、安全管理や緊急手順の教育を改めて徹底する指示を出した。

形式的な指示にならないように、再発防止策が現場で徹底されているかを厳しく検証してもらいたい。

自衛隊の潜水艦対処は重要度を増している。日本周辺海域では、海洋進出の動きを強める中国の潜水艦の航行が幾度も確認されている。南西諸島はその最前線だ。

中国艦に対処する実任務に追われ、十分な訓練時間を確保するのが困難になっているとの指摘もある。重要任務を遂行する能力を落とさない対策も必要だ。

輸送機オスプレイを含め、自衛隊機やヘリの事故は隊員の命に関わる。基地周辺住民の不安も高め、信頼を損ないかねない。実効性の高い再発防止策を求めたい。

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