“違法”のモペッドが走り回っている2つの理由 ペダル付き原チャリの危険性「事故を起こせば一瞬で人生が台無し」

公道走行にはナンバープレートが必須なモペッド ※画像はAINOHOT公式インスタグラム『@funsedy_ainohot』より

バイクの様な見た目とスピードで街中を走り抜ける車体をご存知だろうか。近年、路上を猛スピードで駆け抜ける姿が頻繁に見受けられる様になったのは、ペダル付き原動機付き自転車・通称モペッドだ。Motor(モーター)とPedal(ペダル)を掛け合わせた造語でもあるMoped(モペッド)とはそもそもなんなのか。

全国紙社会部記者が語る。

「ペダルがついており自転車に似た見た目ですが、手元のスロットルを回せば前へと進む。リチウムイオン電池で作動する原動機を備えていて、法律上は原チャリと同じ扱いです。当然、運転には免許も必要ですし、ナンバープレート装着の義務もあります。ヘルメットも着用しないといけません」

そんなモペッドだが、巷では無免許運転や交通違反が急増中。2022年に東京で起きたモペッドによる人身事故は8件だったのが、23年には24件と3倍にまで増加。警視庁が4月10日に渋谷でモペッドの取り締まりを行なった際には、およそ1時間半の取り締まりで5名・計6件の違反が確認された。

「取り締まられた人のなかには無免許運転をしていた人も……。中には“まさか切符(交通反則切符)を切られるほどとは”と話している人もおり、ユーザーの交通ルールに対する意識の低さがうかがえます。取り締まりを行なう警察サイドにも”大きな事故が起こる前に”との思いがあるようです」(前同)

しかし、街中で見かけるモペッドユーザーの多くは、ヘルメットの着用はおろか、ナンバープレートすらも装着していないケースも珍しくない。なぜ、違法モペッドが平然と街中を走っているのだろうか。弊サイトでは、その原因を探るべく『自転車の安全鉄則』(朝日新聞出版)などの著書があり、自転車評論家として活躍する疋田智氏に話を聞いた。疋田氏によれば「モペッドの売り方にも問題がある」と言う。どういうことか。

「原動機付き自転車は、車と同じで路面店での対面販売が基本でした。かつて原チャリ利用者は購入時に店舗で代理登録をして、ナンバープレートも取得していたわけです。

しかし、時代の変化から、原チャリもネット通販にて購入ができるようになった。そうなると購入者はお住まいの市区町村の役所へと出向いてナンバープレートの申請をする必要があるのですが、モペッド購入者の中には面倒だからとやらない人がいる。それが違法モペッドが街中を走り回る1つ目の原因です」(疋田氏)

■違法モペットで事故発生「一瞬で人生が台無しに」

ネットで気軽に購入できるという販売方法も要因で、街中を走り回る違法モペッド。他にも、違法モペッドが街中を走り回る大きな原因があるそうだ。それを前出の疋田氏は、「モペッドユーザーがモペッドを自転車として利用したいからでは」と指摘する。

「自転車だと思っていました、と言えば交通違反の対象にならないと考えている人が多いのだと思われます。自転車だとヘルメット非装着の罰則もないですし、乗車中に髪型だって乱れない。気軽に使えて近場への移動には便利です」(疋田氏)

しかし、モペッドは決して自転車ではない。法律上の扱いはあくまでも原動機付き自転車だ。疋田氏は続ける。

「歩行者との間で事故が起きた場合は“自転車だと思っていました”と言っても通用しませんよね。ナンバープレートも付けずに原動機付き自転車扱いのモペッドを運転するということは、保険にも加入していないということ。事故を起こせば、道交法違反の乗り物に乗っている方が悪いとなりますし、乗っている側の重大な過失行為と見なされます。大きな事故を起こせば何千万円もの賠償金の支払いを命じられる可能性だってあるのです」(前同)

気をつけなければならないのはそれだけではない。

「重大な過失行為で引き起こされた事故の賠償金は、免責対象にはなりません。つまりは、自己破産をしようが賠償責任は続くということ。違法モペッドに乗っている人は、このリスクを十分に理解して欲しい。一瞬で人生を台無しにしかねませんから」(同)

街中を走り回るモペッド。気軽に乗れるが、間違った乗り方をすれば、一生を台無しにしかねない。

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