「関東のスタートアップと兵庫の中小企業を結びつける」みなと銀行地域戦略部グループリーダーの川上和也氏に聞いた

みなと銀行地域戦略部グループリーダーの川上和也氏

りそなグループのみなと銀行(神戸市)は2024年3月に、ベンチャーキャピタル(VC)のBIG Impact(東京都渋谷区)と連携協定を結んだ。

同行の取引先である兵庫県内の中堅・中小企業と、BIG Impactと関連のある関東を中心とするスタートアップとのマッチングなどが目的だ。

スタートアップが持つ技術やサービスを活用したDX(デジタルトランスフォーメーション=デジタル技術で生活やビジネスを変革する取り組み)化や、AI(人工知能)化をはじめM&Aや事業承継なども支援するという。

そこで、みなと銀行地域戦略部グループリーダーの川上和也氏に、連携協定の狙いや背景、今後の展開などについてお聞きした。

ビジネスマッチングと事業承継を支援

―BIG Impactと連携協定を結んだ狙いを教えて下さい。

狙いとしては大きく二つあります。一つ目はビジネスマッチングで、取引先企業さまの経営課題の解決や第二創業などを、スタートアップと連携することによって、早期に実現できると考えています。

これによって地元企業の成長力の確保が可能になり、スタートアップにとっても販売先の確保という意味で、双方にメリットがあると考えています。

もう一点は事業承継問題です。廃業を考えておられる企業の経営を、スタートアップが引き継ぎ、拡大していくことも想定しています。こうした情報もしっかりと入手して、対応していきたいと考えています。

―関西ではなく、関東のスタートアップとのマッチングを行われるのはなぜでしょうか。

産官学が協力してスタートアップを育成するための組織として2020年に「ひょうご神戸スタートアップ・エコシステムコンソーシアム」がスタートしました。我々もそこに参画してスタートアップの支援を行っており、関西のスタートアップとはこうした組織を通じて、取引先企業さまとのマッチングを行います。

ただ、関西のスタートアップの数はまだそれほど多くありません。一方、関東はスタートアップの数が格段に多く、関西の企業とのマッチングを望む企業もあるようです。このためBIG Impactさんが持つ豊富な情報を提供していただき、取引先企業さまとのマッチングを行うことにしたのです。

―パートナーにBIG Impactを選ばれたポイント何だったのでしょうか。

BIG Impactさんは、兵庫県と神戸市が2021年3月に民間企業と連携して立ち上げた「ひょうご神戸スタートアップファンド」のGP(無限責任組合員)として、このファンドを運営されています。

我々もこのファンドに出資しており、その時からBIG Impactさんとの交流が始まっています。

我々が持っていない関東のスタートアップの情報を提供していただくことができ、取引先企業さまが抱えるいろいろな課題や、新しい事業の立ち上げなどを支援していただけるため、BIG Impactさんと連携させていただくことを決めました。

BIG Impactさんの優れた目利きやハンズオン(投資先企業の経営に深く関わり成長を支援する取り組み)などのノウハウを吸収できればと考えています。

兵庫・神戸をスタートアップが集まる街に

―マッチングはどのように行われるのでしょうか。

我々は兵庫県を中心に100を超える支店のネットワークがあります。それぞれの支店のお客さまに、スタートアップとの連携によって生まれた好事例を紹介するといった地道な中長期的な取り組みを展開する計画です。

どのようなスタートアップがあるのか。どのような連携ができるのかを知っていただくために、セミナーやイベントなども開催する予定です。

また、兵庫県や神戸市に進出すると、みなと銀行がいろいろな企業との連携を作ってくれるとの機運を盛り上げ、兵庫・神戸をスタートアップが集まる街にしていければと考えています。

―マッチングのほかに、スタートアップの支援についてはどのような取り組みを考えていますか。

取引先企業さまにスタートアップの商品をお勧めすることにも取り組みます。すでに関東のスタートアップであるLiberaware(リベラウェア、千葉市)さんとビジネスマッチング契約を結び、超狭小空間点検ドローンを紹介しています。

Liberawareさんは天井にある30センチメートル角ほどの点検口に入っていける超小型ドローンを開発されています。非常に安定した飛行を可能にし、高所など危険な場所のデータ取得などを想定しており、人手不足の解消などにも貢献しています。

また、搭載しているカメラで撮影した映像から三次元データを取得、解析し、正確で迅速な情報共有が可能なソフトウエアも開発されています。

図面の無い建物の屋根裏や、工場の煙突や屋根などの点検などに使うと大幅なコストダウンが可能です。

今後もこうしたしっかりとした技術を持ったスタートアップの商品を取引先企業さまに紹介していきたいと考えています。

川上和也(かわかみ かずや)氏
2000年、甲南大学経営学部卒
2006年、みなと銀行入行
2016年、地域戦略部配属
2021年、みなと銀行地域戦略部グループリーダー
1976年生まれ、兵庫県出身

文:M&A Online

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