茨城県内で農作物や資材の盗難続発 転売、特定は困難 防犯対策「意識変えて」

農作物の盗難被害が相次いでいるため農家の男性(右)に対策を呼びかける警察官=鉾田市鳥栖

茨城県内で農作物の盗難被害が止まらない。今年もすでに10件の被害が確認されたほか、農薬やマルチシートなど農業資材が盗まれるケースも相次ぐ。盗まれた農作物や資材の特定は難しいのが実情で、農業関係者は「誰も盗まないだろうという認識はもはや通用しない」と危機感を募らせる。

県警によると、2018~23年に県内で確認された農作物の盗難被害は年間80~100件で推移。今年2月末現在ですでに9件が確認され、4月には鉾田市の農業用ハウスからメロン約600玉(約60万円相当)が盗まれた。同市では昨年秋にも、植えたばかりのトマトの苗が引き抜かれて盗まれる被害もあった。

また、肥料価格は23年以降に落ち着きを見せたものの、薬剤を含めて「まだ高値が続く状況」(JA関係者)で、盗難被害のリスクが高いという。同市や行方市では3月、土壌の消毒に使う薬剤や殺虫剤、マルチシートが相次ぎ倉庫などから盗まれ、うち1件では無施錠の倉庫から盗まれた。

肥料500キロが自宅倉庫から盗まれたという鹿行地域の40代男性は「価格が上がり始めてから買いためたものだった。倉庫に鍵をかけなかったのを今も悔いている」などと話した。

相次ぐ農作物や肥料などの盗難被害について、JA茨城旭村(鉾田市)の新堀喜一組合長は「大規模経営の農家は肥料を多くストックしており、盗まれればかなりの痛手」と指摘する。

捜査関係者によると、盗まれた農作物などは飲食店に直接持ち込まれたり、インターネットのフリマサイトなどで転売されたりするとみられ、被害品を特定するのは難しいという。

県警は、春から秋に向けて農作物の盗難が増加する傾向にあるとして、防犯カメラやセンサーライトの設置などを推奨。定期的な見回りと併せて複数の対策を呼びかけている。

新堀組合長は、農家の防犯対策は不十分な点が少なくないとして「昔のように『誰も取らないから』という意識を変えなければならない」と警鐘を鳴らす。

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