久保建英は「アジア杯後スランプに」 各紙は辛口評価…スペイン人記者が感じた今季浮沈の原因【現地発コラム】

ソシエダでプレーする久保建英【写真:Getty Images】

久保にとって古巣ヘタフェ戦は後半から出場、右ウイングとトップ下で好プレーも

2試合連続でベンチスタートとなった久保建英は、ヘタフェ戦に後半最初から出場したものの、チームはまたもや良い結果を得られなかった。

今シーズンも残すところあと1か月となるなか、6位につけるレアル・ソシエダは現実的な目標として、UEFAヨーロッパリーグ(EL)出場権獲得を目指す戦いを続けている。

久保は3月31日のラ・リーガ第30節アラベス戦で右足ハムストリングを負傷。そのため第31節アルメリア戦は大事をとって後半25分からの出場となったが、特に目立つことなく試合を終えた一方、久保のポジションで先発出場したシェラルド・ベッカーは1得点1アシストを記録し、スペインメディアがこぞって最高点をつけるほどの活躍を見せた。

その状況で迎えた第32節ヘタフェ戦、スペイン各紙が試合前に予想したとおり、久保は2試合連続でベンチスタート、かたやベッカーは再びスタメン入りした。

ヘタフェは久保が在籍していた時と同じホセ・ボルダラス監督が率いるチーム。3月に15ゴールでラ・リーガの得点王争いをしていたボルハ・マジョラルが今季絶望の怪我を負ったことで、FW陣に大きな問題を抱えている。しかし、期限付き移籍の2選手、マンチェスター・ユナイテッドから来たメイソン・グリーンウッドの突破力や、ソシエダからやって来たディエゴ・リコの高いアシスト能力などを武器に、例年に比べ攻撃的なサッカーを展開し10位につけていた。

試合はスペインのランチタイムとなる14時、気温20度強の快晴のなかでスタート。日曜昼下がりのバルでギリギリまで飲んでいる人が多かったからか、試合が始まる直前でも何百人ものサポーターが入場口で列を作り、とてもキックオフには間に合わない様子だった。

序盤はソシエダが主導権を握り、前半13分にベッカーが入れたピンポイントクロスを、ファーポストで飛び込んだアンデル・バレネチェアが頭で合わせて先制に成功。それ以降は徐々に流れがヘタフェへ移っていき、前半29分に波状攻撃からフアン・ミゲル・ラタサが同点弾を記録し、試合を振り出しに戻した。

失点後のソシエダのベンチワークは迅速だった。イマノル・アルグアシル監督はまだ前半にもかかわらず、すぐさま久保にアップを命じて後半頭から投入。久保はいつもどおり4-3-3の右ウイングに入り、ベッカーが左に移っていた。

久保はテンポ良くボールに触わってチャンスメイクを狙い、途中からシステムが3-4-1-2に変更され、トップ下にポジションチェンジ。そして後半34分に決定機を演出する。久保が左サイドで1人かわして深い位置から見事なマイナスのパスを送るが、ウマル・サディクがシュートを大きく外し、試合はそのまま1-1で終了。ソシエダは2戦連続のドローとなった。

ヘタフェ戦の売店(左)と入場口で並ぶファンの様子(右)【写真:高橋智行】

スペイン各紙の久保評「サディクに好パスを2回」「最もチャンスを作った」

久保は何度か決定機を演出したが、スペイン各紙の評価はそこまで高くなかった。クラブの地元紙「エル・ディアリオ・バスコ」は、「サディクに好パスを2回出し、電光石火のプレーを見せた後半のパフォーマンスは非常に良かった」と高評価するも、3点(最高5点)にとどまった。

もう1つの地元紙「ノティシアス・デ・ギプスコア」も、「予想どおり良くはなかったが、素早く敵陣に入り、最もチャンスを作った選手だった」と相手にとって怖い存在だったことを認めながらも、5点(最高10点)とやや厳しめだった。全国紙「マルカ」紙、「AS」紙の評価も1点(最高3点)と低かった。

試合後、スペインのラジオ局「オンダ・セロ」でヘタフェの番記者を務めるアルベルト・フェルナンデス・ガルシア氏に、この日の久保のパフォーマンスを振り返ってもらった。同氏は久保が過去ヘタフェに在籍していた経緯から、思い入れのあるコメントをしてくれた。

「後半からピッチに入り、最初の時間は良かったと思う。勇猛果敢にドリブルを仕掛けていたし、相手をかわし、有利な状態で味方にボールを渡そうという意図が伝わってきた。でも時間の経過とともに、チーム全体が少しずつレベルを落とし始めると、タケも同じように調子を落としていった。その時のチーム状態が、途中から入った彼にも伝わってしまったようだ。途中からトップ下にポジションを移したが、何度かミスがあった」

「チームが調子を崩し始めた雰囲気が彼にも伝染してしまったけど、それでも意欲あふれるプレーをしていたと思う。正直に言うと、タケにはこの試合は先発メンバーとして出場してほしかった。ラ・レアルで成功を収めて古巣のコリセウムに戻ってきたわけだし、彼の劇的なゴールのおかげでヘタフェは1部残留を決めることができたからね。ここの人たちは少なからず、今でもタケに愛情を持っている。おそらく今日はみんな、彼がここでスタメンとしてプレーする姿を見たかったんじゃないかな」

久保建英について語ったスペインラジオ局「オンダ・セロ」のアルベルト・フェルナンデス・ガルシア氏【写真:高橋智行】

今シーズンの久保をスペイン人記者はどう見るか? 「スランプの原因は…」

また同記者は、今シーズンの久保に次のような感想を持っていた。

「2023年はとても良かったけど、アジアカップから戻ったあとは少しスランプに陥っていたように見えた。私はその原因が代表も含めた過密日程、国王杯準決勝やチャンピオンズリーグのPSG戦といった重要な試合におけるプレッシャーのせいだと思っている。さらにアウェーゲームも多かったしね。でもそれはタケだけでなく、純粋にチーム力が落ちていたからだ。だからタケも前半戦のような素晴らしいパフォーマンスを発揮できなくなったんだと感じているよ」

今シーズンも残すところあと6試合となったが、その対戦相手はレアル・マドリード、ラス・パルマス、FCバルセロナ、バレンシア、ベティス、アトレティコ・マドリード。ビッグ3およびEL出場権を争う直接のライバルたちが残っており、すべての試合が気の抜けない“決勝戦”となる。ソシエダがこの状況を乗り越えるためにも、久保が前半戦で放った輝きを取り戻すことが必要不可欠だ。(高橋智行 / Tomoyuki Takahashi)

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