マイナ保険証低迷、県内利用7% 12月現行廃止、医療機関負担大

公立岩瀬病院に設置されている「マイナ保険証」のカードリーダー。普及には補助や周知の拡大が求められている=須賀川市

 マイナンバーカードに健康保険証の機能を持たせた「マイナ保険証」の利用率が上がらない。現行の保険証廃止が12月に迫る中、県内の3月の利用率は7.47%にとどまる。国は医療機関に来月から集中的な利用促進協力を求める方針だが、利用者や医療現場からは「情報漏えいが不安」「負担が大きい」などと厳しい声が上がる。マイナンバーカードの信頼回復とともに、導入環境の整備、利点の周知が求められる。

 郡山市の日東病院では、1日40~50人の外来患者のうち、マイナ保険証を利用するのはわずか1、2人程度。担当者は「高齢者が多く、暗証番号や顔認証が必要なマイナ保険証の利用を促すのは難しい」と漏らす。

 国は5~7月を「集中取組月間」として、マイナ保険証の利用人数増加に応じて医療機関に最大20万円を支給する方針だ。しかし、医療機関が利用率拡大のため患者一人一人に所有などを確認する負担は大きい。同病院の村上夏樹事務長(44)は「病院側に普及を任せることに疑問を感じる。まずは全ての患者がマイナ保険証を使うことができる環境にしてほしい」と求める。

 マイナンバーカードの本県の保有枚数率は74%(3月末時点)となっているにもかかわらず保険証利用が進まない背景には、必要性への疑問や不信感がある。会津若松市の自営業高橋憲司さん(45)は、「行政の個人情報の取り扱いが不安」と懐疑的。「義務化されてもしばらくは応じるつもりはない」と言い切った。

 「利点周知不足」

 一方、須賀川市の公立岩瀬病院は、マイナ保険証を活用した電子処方箋やオンラインの保険資格確認などを先駆けて展開してきた。同病院の有賀直明事務次長・医事課長は、個人情報が記載されている現行の保険証よりもマイナ保険証の安全性は高いと強調。過去の診療結果や薬の処方歴などが分かることから「医師と患者両者にとって診察がスムーズになる」と語る。こうした利点が周知されていないことが問題だとして、チラシ配布や交流サイト(SNS)での発信なども行う。

 ただ、関連する機材費用やシステムの改修費は国からの補助金では賄い切れないといい、同病院は費用面の課題も導入が進まない要因とする。有賀次長は「医療機関で導入が進まなければメリットは広がらない。県全体で足並みをそろえる必要がある」とする。県の担当者は「利用促進に向けての広報の方法などを検討していく」とした。

 ひも付け誤登録新たに9件

 県は23日、障害者手帳のマイナンバーのひも付け状況を点検した結果、9件の誤登録が新たに判明したと発表した。誤登録があったのは身体障害者手帳7件、精神障害者保健福祉手帳1件、療育手帳1件。マイナンバーカード取得者向けサイト「マイナポータル」上で、ひも付けが解除されるまでの間、本人以外の人が個人を識別できない範囲で他人の手帳情報を閲覧できる状態にあったが、情報が閲覧された履歴はないという。

 県は、交付申請書の誤記載や受付時の確認漏れ、県の機関によるデータ入力の誤りが原因と考えられるという。県はひも付けの修正を行い、対象者への謝罪も行ったという。

 県によると、国から指示のあったマイナンバーの情報連携についての点検では、福島、郡山、いわきの3市を除く精神障害者保健福祉手帳で5件の誤登録が判明していた。県独自の点検を昨年度中に行ったところ、福島、郡山、いわきの3市を除く精神障害者保健福祉手帳など3種類の障害者手帳で新たな誤登録が分かったという。

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 マイナ保険証 マイナンバーカードをマイナポータルなどで健康保険証として利用登録することで利用可能。医療機関のカードリーダーなどで手続きを行う。過去の診療結果や薬の処方などとの比較が可能。今年12月2日で現行の保険証は廃止となる。廃止後も最長1年間は発行済みの健康保険証を使える猶予期間がある。3月の全国平均の利用率は5.47%。

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