宝を次代へ(4月24日)

 果樹畑にもうすぐ大粒の「青いダイヤ」が実る。カリっとした食感、程よい塩味と甘味。丁寧な手仕事が「赤いルビー」へ姿を変える。会津美里町の特産品「高田梅漬け」は、艶やかな色が食欲をそそる▼栽培の起源は室町時代にさかのぼる。先人が保存食として梅漬けを考えた。天日干しはしない。肉厚の特徴が保たれ、独特の歯応えが生まれる。伝統の味には、心配もある。梅の生産・加工者は高齢化や後継者不足で減り、梅漬けを作る家庭も少なくなりつつある。古里の「伝統食」に興味を持つ若い世代が増えてほしいと、関係者は願う▼地域の誇りを次代にどうつないでいくか。悩みは食に限らない。町観光協会は、地元ゆかりの偉人を紹介する子ども向けリーフレットを作った。国の史跡・向羽黒山城[むかいはぐろやまじょう]を築いた蘆名盛氏[あしなもりうじ]、天台宗の高僧・天海大僧正[てんかいだいそうじょう]らの似顔絵が並ぶ。都会に移る若者が増えている。古里を知り、愛着を持つきっかけになれば―。そんな思いがにじむ▼伝来の梅漬けは、砂糖を加えるなどアイデアを重ねて今がある。郷土愛を育む事業が次々と展開されている。人々の創意工夫によって、地域の宝は輝きを深めていく。かむほどに味わいが増すように。<2024.4・24>

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