【いわきの休園基準】実効性のある運用を(4月24日)

 いわき市は、大雨や地震などが発生した際、保育所や幼稚園などが休園を判断するための基準を独自に設けた。災害が拡大する前に保護者らに引き渡し、被災を防ぐとしている。基準の周知と保護者への連絡体制の確立に努め、実効性のある運用を求めたい。

 公立、私立の保育所、幼稚園、認可外保育施設、放課後児童クラブなど計244施設が対象となる。内郷地区を中心に4100人が被災した昨年9月の台風13号を踏まえ、逃げ遅れをなくす目的で策定した。災害はいつ、どこで起きるか分からない中、県内13市で初となる取り組みはモデルにもなり得る。

 大雨は、高齢者らに避難を求める水準に当たる警戒レベル3の避難情報が出された場合に臨時休園とする。警戒レベル3は全市が範囲となる。市は基準の円滑な運用に加え、地域の状況に応じた柔軟な対応も検討してほしい。

 気象状況などを分析し、洪水浸水想定区域に立地する施設に対しては、基準に満たない段階での休園なども判断すべきだ。大雨が局所的かどうかを調べ、安全が確認できるような地域は休園を一時留保するといった弾力的な運用も考慮したい。

 個々の事情で保護者が迎えに来られなかったり、道路の冠水や渋滞などで遠回りを余儀なくされたりする事態も想定される。警戒レベル4など危険度が増すと予測される際は、施設職員が残された子どもと一緒に避難したり、滞在場所の変更を保護者と随時共有したりする必要がある。保護者も参加しての避難訓練の実施や避難場所の理解醸成、連絡手段の確保も重要だ。

 地震は震度5弱以上で、被災により施設運営が困難になった場合を対象とする。開園前は午前5時の段階で判断する。開園中は速やかに閉園する計画だが、子どもの引き渡しまでに時間を要するなどの懸念がある。施設が避難情報などを確実に入手し、迅速に保護者に伝える仕組みが欠かせない。

 未就学児だけではなく、小中学校の児童生徒、高齢者施設の通所者らも同様の危険にさらされる。庁内の災害担当、各施設の担当部署が連携して独自基準の有効性を検証し、施設に適した子どもや高齢者の命を守る方策も練ってもらいたい。(円谷真路)

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