膝痛とオサラバ!治療最前線(2)痛みがほぼない超早期から「異変」が生じている

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「変形性膝関節症」は、加齢などで膝関節の軟骨が徐々にすり減り、骨にダイレクトに衝撃が伝わることで歩行時に膝の痛みが生じる病気だ。やがては膝関節が変形し、安静時も膝が痛むようになる。

最近の研究で、軟骨がすり減る前に何が起こっているかがわかってきた。順天堂大学医学部整形外科学講座・石島旨章主任教授が言う。

「まずは、軟骨同士の間に挟まっている半月板の損傷です」

膝の関節は骨同士が接する面が軟骨で覆われており、その軟骨と軟骨の間に挟まる形で半月板がある。軟骨は骨への、半月板は骨や軟骨へのクッションのような役割を果たす。

「半月板が、上下にある軟骨を衝撃から守っているわけです。ところが加齢などで半月板が傷んでくると、歩行時などの衝撃が軟骨にダイレクトに届き、上下の軟骨を傷つけてしまいます。その衝撃が強くなれば、さらに軟骨の上下にある骨まで傷めてしまいます」

では、なぜ半月板が傷むのか? 石島主任教授は順天堂大学スポートロジーセンターとの共同研究で、その原因を探った。

「変形性膝関節症の診断には、通常レントゲン(X線)を用います。しかしレントゲンには軟骨は写らない。そこでMRIで、痛みがほぼない超早期を含めた変形性膝関節症の患者さんの膝の状態を調べたのです」

それができたのは、順天堂大学が、文京区に住む1629人の高齢者を対象にした大規模コホート研究を実施しているから。病院に来る患者だけでは進行期の変形性膝関節症しか調べられない。

「検査の結果、半月板のすぐ下に骨棘(こつきょく)が認められました。骨棘はレントゲン画像で認められる変化で、変形性膝関節症の進行によって骨が変形して形成されると考えられてきました。しかしMRIによって、レントゲンでは見えない小さなレベルの骨棘が、歩行で痛みを感じていない人にも確認できたのです。骨棘が大きくなる過程で半月板が引っ張られて傷み、軟骨への損傷へとつながります」

半月板損傷は“スポーツやケガだけで起こる”と誤解している人が多い。確かに若い人には当てはまるものの、50代以降は変形性膝関節症が絡んでいる。

本題に戻そう。変形性膝関節症は冒頭で触れたように軟骨がすり減って起こるが、その前に半月板損傷が、さらにその前に骨棘の出現がある。変形性膝関節症を発症するかなり前から骨棘が現れている可能性があり、その病態解明が、現在の「痛みが生じてから対症療法的治療」から、「痛みが生じる前に予防的治療」への舵きりになるかもしれない。(つづく)

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