モビリティサービス協会が設立 垣根を越えて横断的に共創し、利用者に最も近い団体へ

4月23日、「一般社団法人モビリティサービス協会」が発足した。

「ユーザー視点に立った多様なモビリティサービスを世に送り出す」をミッションとし、グローバルモビリティサービス 代表取締役社長の中島徳至氏が発起人代表を担う。モビリティ業界のアクティブなハブとなり、ユーザーが求める理想形の実現を目指す。

社会の最適化を「ユーザー視点から」横断的に追求

モビリティサービス協会は、「時代の変化と共に人々が思い描く世界観を実現するために既存の枠組みを超え、共創することで社会の最適化を横断的に追求する」をビジョンに据える。具体的な活動としては、(1)先端情報を共有して教育の場を提供すること、(2)部会活動で議論を深掘りするなどを通し、課題の解決・社会創造に取り組むこと、(3)ルール作りやその提言――の3点に取り組んでいくという。

中島氏は設立趣旨として、自動車業界を取り巻く環境の変化を話す。ユーザーニーズに対応する革新的な技術とサービスの開発が求められ、さまざまなプレーヤーが業界の垣根を越えて挑戦している一方で、「他国に比べてユーザー視点でのサービス開発が少し遅れている」(中島氏)と危機感を口にした。

業界の垣根を越えて新たなサービスの実現を目指す挑戦者を迎えるべく、協会内でさまざまな分野別の部会を設置し、安全かつ安心なモビリティサービスを提供できるガイドラインの策定、認定制度などの構築を目指す。利用者視点で議論してユーザーニーズに適したサービスの育成を促進し、安全性と利便性を両立したサービスの実現に寄与するという。

発起人はさまざまな業界から--モビリティに関わる多様な課題をテーマに

モビリティサービス協会は、発起人代表の中島氏のほか、設立発起人としてローランドベルガー パートナーの貝瀬斉氏、東京大学 大学院情報学環 兼 生産技術研究所 准教授の上條俊介氏、スマートドライブ 代表取締役の北川烈氏、三菱総合研究所 理事長で東京大学元総長の小宮山宏氏、大日本印刷 モビリティ事業部 新事業開発部長の椎名隆之氏、ナイル 代表取締役社長の高橋飛翔氏、NearMe 代表取締役社長の高原幸一郎氏、 東京理科大学 元理事でアクセンチュア元ディレクターの中谷幸俊氏、埼玉大学 名誉教授の長谷川孝明氏、早稲田大学大学院 教授でマッキンゼー・アンド・カンパニー・ジャパン 元支社長の平野正雄氏、ランディット 代表取締役社長CEOの藤林謙太氏、SkyDrive 代表取締役CEOの福澤知浩氏、オートバックスセブン 代表取締役社長の堀井勇吾氏、オプティマインド 代表取締役社長の松下健氏、セブン銀行 代表取締役社長の松橋正明氏、本田技術研究所 元代表取締役社長の松本宣之氏、芥川受賞作家の上田岳弘氏、計18人が設立発起人になる。

モビリティ関連のサービス提供社やコンサルのほか、ドローンメーカーや金融事業者まで、多種多様な顔ぶれだ。

例えばセブン銀行は、セブン-イレブンのATMを中心に事業を展開。セブン銀行 常務執行役員 企画部長の清水健氏は、「正直申し上げて、現時点ではわれわれの銀行とモビリティ業界のつながりは、あまりない。ただ、今後の可能性は無限大にある。非対面での自動車ローンの提供や、運転データでリスクを計算することによるユーザー独自ローンの提供などができる。協会設立の趣旨は、新技術を活用して新たなモビリティサービスを提供し、社会課題の解決に貢献すること。われわれの成長、ストーリーと重なる部分が多々にある」と、参画理由とモビリティ関連サービスの将来的な構想を口にした。

中島氏は、モビリティサービスという業界で見た場合はさまざまな団体が存在するが、「これまで実現できなかった、利用者に一番近い位置を目指す。移動手段がない、配達が遅い、車が買えないなどの多くの課題があるなかで、協会だけでの解決が難しい場合は、行政・自治体・大学・シンクタンクなどと連携できる体制も構築したい。直近では例えば、保険業における危険運転という課題がある。業界としてではなく各社が基準を決めており、早急に(基準を)決める必要がある」と、具体例を挙げて話した。

モビリティサービス協会は、4月24日から参加を受け付ける。入会金や年会費はさまざまなプランを用意しているが、一例として一般会員の場合、入会金が5万円、年会費は15万円となる。

また、中島氏は具体的な参画企業数について、自身が2011年10月に代表幹事として立ち上げた電気自動車普及協議会を引き合いに出し、「EVという1つの枠で250社くらいの企業が参画した。今回(の枠)は『サービス』なので、業界団体としては社数が多くなるのでは」(中島氏)。モビリティ業界が大きな変革期を迎えるなか、多くの参加団体とともにユーザー視点からのさまざまな課題をテーマとする部会を設置・運営し、日本のモビリティサービスの発展に貢献したいと語った。

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