プロに聞いた! 腰痛対策で押さえておきたい「寝具」の選び方

マットレスが腰の負担に影響する(写真はイメージ)/(C)iStock

寝具大手の「フランスベッド」が今年2月、20~69歳の男女1000人を対象に夏の睡眠に関する調査を実施。夜の寝苦しさを感じない人のうち、夏に寝具を取り換えている人が8割で、その8割以上が寝苦しさの項目全てを感じないと回答した。夏の夜の寝苦しさを吹き飛ばす寝具。実は、日本人の自覚症状トップ(2022年国民生活基礎調査)に位置する腰痛の対策にも寝具選びは大事だ。フランスベッドインテリア商品企画課課長の三浦貴洋さんに話を聞いた。

「悪い姿勢や、デスクワークが中心で同じ姿勢を取り続けることで腰に負担がかかって腰痛が生じている方では、どんな寝具を使うかで、腰のつらさが随分変わってくるはずです」

ただし腰痛には、椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、腰椎すべり症などやがんの転移といった可能性もあるので、「いつもと違う」と感じた場合は病院で検査を受けることが大前提。

三浦さんは仕事柄、お客さまの話を直接聞くことも多い。

「どういう感じがいいですか、と尋ねると、『腰痛対策には硬いマットレスの方がいいんですよね』といった返答がよくあります。固定観念があるんですね。しかし一概に硬いマットレスがいいとは言えないんです」

■寝ているときは体重の45%が腰に集中する

マットレス選びのポイントは2つ。まず、適度な反発力。次に、体圧分散。寝返りがしやすく、1カ所(腰)に負担が集中しにくくなることだ。

睡眠に要する時間は個人差があるとはいえ、だいたい6~8時間だろう。毎日これだけの時間、同じような姿勢を取り続けると、デスクワーク中の同じ姿勢と同様に腰に負担がかかる。

「寝た状態で体重の圧が最もかかるのは腰で、体重の44~45%が集中するといわれています。だから寝返りを無理なく打て、血流の流れをよくできるマットレスがいい。15~20年くらい前までは低反発のマットレスが人気でした。反発力が少なく体が包み込まれるような感じで、同じ姿勢でいても楽なんですが、寝返りを打ちにくい。そこで高反発で寝返りがしやすいマットレスが現在は業界全体でも多く見られます」

とはいえ、性別や体形、好みによって合うマットレスは異なる。三浦さんが「一概に硬いマットレスが腰痛対策にいいとは言えない」と話すゆえんだ。実際に、横になって試してから選ぶべきだろう。

マットレスは手入れの仕方でも腰痛に影響を与える。

「マットレスは基本的にスプリングがあり、その上にウレタンなどの軟らかい層があります。長く使っているとウレタン部分などがへたってくる。腰のあたりが『く』のような形にへたってしまうんですね。そこでマットレスは定期的に上下をひっくりかえして使うことをお勧めします。当社の商品では3カ月ごとが目安。目視ではへたっていなくても、本当にそうとは限りません」

なお、マットレスの寿命は一般的に10年といわれている。長く使い過ぎると反発性も落ちてくるので、腰痛対策の面から見ても10年周期で買い替えるべきだ。

寝具でもうひとつ大事なのが枕の高さ。人間の体は首から腰まで適度なS字カーブを保っている。寝ているときにも適度なS字カーブをいかに保つかが腰痛の起こしにくさにつながる。

「頭の下のへこみにフィットし、顎が上がりすぎず、また沈みすぎない高さの枕がちょうどいい。ですから枕についてもまずは試していただきたいのですが、忘れてはいけないのがマットレスとセットで試すことです」

これは別に、枕とマットレスを同時に新調しよう、と言っているわけではない。マットレスの体の沈み具合で枕のベターな高さが変わってくる。枕だけ試してちょうどよい高さと感じても、家に持ち帰り、軟らかめのマットレスで寝たら、その枕は「やや高い」となるかもしれない。

メーカーによっては、寝姿勢を機械で計測し、寝具を選ぶサービスを行っているところも。毎日使うものだからこそ、選ぶ過程から気合を入れたい。

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