大漢和辞典、不屈の100年 YMC郡山セミナー、苦難乗り越え再興

大漢和辞典の歴史について語った池沢さん

 福島民友新聞社、読売新聞社、福島中央テレビによるYMC郡山セミナー(代表幹事・滝田康雄郡山商工会議所会頭)は23日、郡山市で行われ、元大修館書店編集者の池沢正晃(ただあき)さん(77)=同市出身=が「大漢和辞典の百年―その時代と人物」をテーマに、苦難を乗り越えながら完成した大漢和辞典編さんの歴史を語った。

 池沢さんは、大修館書店の創業者鈴木一平が1923年の関東大震災時、印刷に必要な「紙型(しけい)」を妻が運び出していたことで営業を再開でき、事業発展の礎を築いたと説明した。

 25年に漢学者の諸橋轍次(てつじ)に編集を依頼して大漢和辞典の作成を開始。43年に第1巻が刊行されたものの、その後の太平洋戦争で本社と工場が全焼、原版を焼失した。池沢さんは「戦災を逃れた校正刷の原稿が残っており、それのおかげでやり直すことができた」と語り、30年以上の歳月をかけて60年に初版全13巻の刊行を完了したことを紹介した。

 その後、閉業の危機に直面しながらも、当時の「全集・百科事典・豪華本ブーム」で息を吹き返した。大漢和辞典は現在、デジタル版も発刊されるなど「漢和辞典の最高峰」と称されている。

© 福島民友新聞株式会社