「心はロンリー気持ちは『・・・』FINAL」総合演出・三宅恵介「このドラマは地上波、リアルタイムで見てください。なぜならば…」

21年ぶりに明石家さんまさん主演のドラマシリーズが復活! 4月27日に「心はロンリー気持ちは『・・・』FINAL」がフジテレビ系で放送されます。

同シリーズは、1984年12月17日に初回が放送されてから11作品が制作された大ヒットドラマ。シリアスな物語の中にたくさんのナンセンスギャグを散りばめた遊び心満載のドラマです。前作放送から21年ぶりに放送される待望の12作目の見どころ、ドラマの裏話などを総合演出を務める三宅恵介さんにお伺いしました。

――21年ぶりの新作ですが、この21年の間に復活させようという話はあったのでしょうか?

「いや、全くなかったんですよ(笑)」

――では、なぜこのタイミングで12作目が復活したのでしょうか?

「2年前くらいにバラエティー制作の局員だった男性が異動になるということで、僕の所に来た際『“心はロンリー”を見て、こんなドラマが作りたいと思ってフジテレビに入社したけれど、機会がなく異動になってしまう』という話を聞いていたんです。それをさんまさんに伝えたら『ありがたい話なのだからやりましょう!』となりました」

――さんまさんからも21年の間に復活させましょうという話はなかったのでしょうか?

「さんまさんとしては、『心はロンリー』シリーズは手間暇がかかるのと予算がかなりかかるというので、もうできないだろうなと思っていたらしいです。なので、『心はロンリー』に憧れを持った人がきっかけをくれたことが決め手になったと言っていましたね。さんまさんはね、“人”と仕事をする人なんです」

――では、もう「すぐにやろう!」と決まった感じなのでしょうか?

「いや…(笑)。さんまさんのラジオ収録前にこの話を持っていったら、そのラジオで話してしまって…。さんまさんが話したら“やる”という事実になってしまうので、決まりました(笑)」

――本シリーズ1作目を作ることになったきっかけを教えてください。

「時期的には『オレたちひょうきん族』(フジテレビ系)が始まった頃、さんまさんは東京での仕事が増えていたので、大阪から東京に引っ越してきたんです。みんな忙しかったのですが、さんまさんの参宮橋のマンションに、ぼくと大岩賞介さん、藤沢めぐみさん、君塚良一さんの5人が毎週金曜日に集まって『あれをやってみたいねー』とか『こういうのをやってみたい』と話していた。その流れから生まれたのが『心はロンリー』でした。今回のFINALでも企画としてクレジットされている“参宮橋金曜サークル”は、この5人のことなんです」

――すごい方たちの集まりですね。ほかにも生まれた番組はあったのでしょうか?

「『踊る!さんま御殿!!』(日本テレビ系)はこの話し合いから生まれました。なので、大岩さんも藤沢さんもスタッフとして入っています」

――そうだったのですね! 話を戻して、なぜドラマの中にギャグを入れようと思ったのでしょうか?

「僕たちが好きだったアメリカの『フライングハイ』という映画があるのですが、これがコメディーではなくてギャグなんです。ある設定をちょっとオーバーにした笑いが散りばめられているのを見て、こういうドラマを作りたいねと話をしたりしていて…。でも、当時は話題になった漫画を実写化したドラマも多くて、そういうドラマで役者さんが喜怒哀楽をオーバーに表現しているのを見て、なんか違うなと感じていました。もちろん、そういう笑いもあるんでしょうけど、僕たちからすると、もっと違う笑いもあるんだけどな…と思ったので、このようなシリアスなドラマの中にギャグを散りばめる手法を取り入れました」

――そこから伝説のドラマが生まれたのですね。

「視聴率15%を取るのが当たり前だった時代で、初回は16%取れたんです。でも、この番組が王道になってはいけないということで、その後は20%を超えたら、または10%を切ったら終了しようと僕たちの中で決めていて。そしたら5作目で19.7%!(笑)。これは、まだいけるなと思って続けていたんですが、9作目が9.1%でいったん終了してしまいました。10作目は映画でやりたいね、なんて話していたんですけどね」

――映画館の大画面で見たらもっと面白そうです! そこから10作目が生まれたのはどうしてですか?

「その時は、なんでだったかな? でも、やっぱりまたやろう!という雰囲気になって再開しました。9作目から8年後でしたね。世間では『北の国から』(フジテレビ系)が話題になっていて、あのワンカット長回しのスタイルをやりたいと思って、北海道ではなく沖縄を舞台にして『南の国から’97』というサブタイトルで作りました」

――(笑)。

「『北の国から』で田中邦衛さん演じる五郎さんはすごく真面目な男でしたので、さんまさんにはお任せで、何でもオッケーという不真面目な役を演じてもらいました(笑)。沖縄ロケを2回やったんですが、おかげで大赤字で(笑)。プロデューサーが上層部からかなり怒られたみたいです(笑)。なので、そこからまた当分お休みになってしまったんですよね」

――だから次は6年後だったのですね(笑)。

「そうです。その頃はサスペンスがはやっていたので、題材をサスペンスにしようと決めました」

――21年ぶりの今作ですが、さんまさんが刑事役なのには理由があるのでしょうか?

「“参宮橋金曜サークル”のメンバーで集まった時にさんまさんが『刑事役をやったことがないからやりたい』と言ったのが始まりです。そしたらその後、木村拓哉さんと一緒にドラマに出ていて警察官役をやっていましたけどね!(笑)」

――収録はいつ頃だったのでしょうか?

「クランクインが10月の後半で、全体のクランクアップが11月29日だったんですけど、さんまさんは昨日がクランクアップでした(※取材日は4月12日)。『ナインティナインのオールナイトニッポン』(ニッポン放送)に聞き込みに行くというシーンを撮ったので、これから大急ぎで編集して仕上げます(笑)」

――「心はロンリー気持ちは『・・・』」というタイトルを付けた経緯を教えてください。

「最初、君塚さんは『あっぱれ花屋さん』というタイトルを提案してきたんです。これは、1作目ではさんまさんが花屋さんの役だったから。その次が『心はロンリー気持ちはガンジー』だったんですが、ちょうどその頃マハトマ・ガンジーさんがお亡くなりになられてしまったので、これはやめようと。でも、何も思いつかなくて『・・・』にした…ような気がします。あまり思い出せないんですけど、みんなに聞いたら分かるかな?(笑)」

――川口春奈さん扮(ふん)する娘・和来(わく)という名前の由来はありますか?

「この名前を付けたのは、さんまさんです。実際に2人目の女の子が生まれたら付けようと思っていた名前らしいです。由来は、ドラマの中でセリフとして語られますので、ぜひ放送を見てください。娘・和来の『なんでパパとママは仲がいいのに離婚したの?』というセリフもあるのですが、これは実際に僕がさんまさんから聞いたことを台本にしています。このドラマはフィクションですが、さんまさんのドキュメンタリーでもあるんです。今回、大竹しのぶさんに出演していただいたのも、さんまさんのドキュメンタリーでもあるこの作品に、しのぶさんは欠かせない存在だから。お二人のやりとりは見事でしたね。撮影中、思わず鳥肌が立ちました」

――最後に見どころを教えてください。

「フジテレビ開局65周年、さんまさん芸歴50周年ということで、さんまさんが今までやってきた番組が随所に出てきます。他局の番組が入っていたりもして、これができるのがフジテレビなんだなと思います。そして、“心はロンリー気持ちは『・・・』FINAL”は、地上波のリアルタイムで見てください。なぜかというと、さまざまなギャグが散りばめてあるドラマなのですが、その一つに音楽のギャグというのが結構あります。意味のある音楽を使ってギャグをするのですが、版権の問題でDVDなどになってしまうと音楽が変わってしまって、意味が分からなくなってしまうのです(笑)。なので絶対に地上波、リアルタイムで見てください」

――これは絶対リアルタイム必須ですね! ありがとうございました。

【プロフィール】

三宅恵介(みやけ けいすけ)
1949年生まれ、東京都出身。株式会社千代田企画代表取締役。71年に慶應義塾大学経済学部を卒業してフジテレビに入社。以来、バラエティー番組制作一筋。「スター千一夜」「欽ちゃんのドンとやってみよう!」「笑ってる場合ですよ!」「ライオンのいただきます」「オレたちひょうきん族」「あっぱれさんま大先生」「明石家サンタの史上最大のクリスマスプレゼントショー」「おそく起きた朝は…」「FNS27時間テレビ」など、フジテレビを代表する数々のバラエティー番組の制作に携わる。現在は「はやく起きた朝は…」のプロデューサーを務める。

【番組情報】

フジテレビ開局65周年記念企画「心はロンリー気持ちは『・・・』FINAL」
フジテレビ系
4月27日 午後9:00~11:40

取材・文・撮影/五條 亜唯(フジテレビ・関西テレビ担当)

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