プラスチック軽量容器市場に関する調査を実施(2024年)~2023年のプラスチック軽量容器の国内出荷量は前年比98.9%の78万2,050tで着地の見込、物価高を背景に消費者に節約志向が根強く残り、市場は足踏み状態が続く見通し~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役:水越孝)は、国内のプラスチック軽量容器市場を調査し、素材別の動向、参入企業の動向を明らかにした。

1.市場概況

プラスチック軽量容器市場(国内出荷量ベース)は、2022年が79万750t(前年比98.4%)と推計、2023年は78万2,050t(同98.9%)を見込む。

2023年は、飲食店等のテイクアウト・デリバリー向けをはじめとするコロナ禍での特需が沈静化したほか、食品値上げによる物価高を背景に消費者が買い控えの姿勢を強めてきた。そのため、夏場の猛暑の恩恵を受けたPET系容器や紙容器の蓋材需要などが旺盛な透明PP容器を除き、各種のプラスチック容器の市場規模は前年を割り込む見込みである。
また、環境への配慮対応の動きが強まるなか、容器メーカー各社が軽量化に取り組んでいることも重量ベースの市場規模が縮小している要因になっている。

2.注目トピック~PSP容器市場

物価高を背景に消費者の節約志向が高まるなかで内食回帰の動きもみられるが、一方で食品スーパー等での買い上げ点数は伸び悩む傾向にあり、食品トレーの出荷量は弱含みで推移している。
寿司・刺身、総菜、納豆向けなどのトレーはほぼ前年並み、カップ麺向け容器は微減傾向となる見込みである。その結果、PSP容器市場はマイナス成長が続き、2023年はコロナ禍前の2019年の市場規模を下回る見通しである。

3.将来展望

2024年は物価上昇の鈍化と実質賃金の改善が見込まれるものの、消費者の節約志向は根強いものとみられ、プラスチック軽量容器市場は足踏み状態が続く見通しである。一方、主要容器メーカーの設備増強の動きが活発化しており、供給過剰感が強まるものと考える。

こうした環境下、プラスチック軽量容器メーカーは新市場開拓と新素材・新製品開発を両輪とした事業展開を強化している。新市場として注目されているのは介護食・病院食や冷凍食品であり、なかでも冷凍食品向けの容器開発が活発化している。
近年は急速冷凍技術の進化により、冷凍食品の美味しさや簡便さに魅力を感じる消費者が増えている。また、冷凍食品の典型であった「弁当用のおかず」から、主食や総菜、刺身、デザート、ベーカリーなどメニューの多様化が進んでいる。供給面をみても、食品スーパー、コンビニエンスストア、百貨店など小売り各社が冷凍食品の販売を強化しているほか、冷凍食品用の自動販売機も登場した。

コロナ禍で急速に立ち上がったテイクアウト・デリバリー容器においては、液漏れしない嵌合(かんごう)性、輸送時の荷崩れを防止する連結性、スープと麺を分けられる中皿の活用などプラスチック軽量容器メーカーの開発力が需要の拡大を後押しした。
冷凍食品分野においても容器への機能付与のみならず、容器メーカーが売り場づくり・メニュー開発などのソリューションを提供していくことが新たな需要の取り込みにつながるものと考えられる。

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