公立高入試に前期、後期導入-県民の受け止めは 「望ましい」「課題ある」二分 

公立高の試験に挑む受験生=2024年3月7日、山形市・山形東高

 県教育委員会が2026年度公立高入試から前期(特色)選抜と後期(一般)選抜を導入することを受け、山形新聞の「寄り添うぶんちゃん取材班」は県民の受け止めを聞いた。「望ましい」「課題がある」は、ほぼ半分に割れた。受験機会の複数化を支持する一方、モチベーションや公平感を維持できるのか不安視する声もあった。

 県教委が23年度に示した新たな入試制度では、推薦入試がない普通科でも受験機会の複数化を挙げた。前期は個人面接、集団面接、作文、発表、その他(小論文、実技、口頭試問、学校ごとの学力検査など)から一~三つを学校が選ぶことになり、後期は現行の学力検査で3月7日に行う。

 回答は50人ほどからあり、「望ましい」が42%、「課題がある」が37%と意見が分かれた。「どちらとも言えない」は17%、「その他」は4%だった。

 「望ましい」の意見では「リベンジのチャンスを与えて」(舟形町の40代主婦)との声があった。「県立高校の定員割れを防ぐ効果もあるのでは」(大蔵村の60代主婦)、「探究的な学習などが前期で問われることで3年間の学びが評価される」(天童市の50代中学教諭男性)との意見もあった。

 「課題がある」とする意見について、受験機会が増えることの影響を懸念し「生徒も教師も負担増」(鶴岡市の70代無職男性)との考えが寄せられた。「後期選抜の受験生のモチベーション維持が心配」(山形市の50代パート従業員女性)とする意見があった一方で、「高校受験だけ学力重視以外で間口を広げても、本当に子どもたちの将来のためになるのか」(山形市の50代看護師女性)との指摘があった。

 「どちらとも言えない」との回答では「全体像が見えないと何とも言えない」(山形市の50代公務員女性)などがあり、これらに該当しない意見では変更の必要はなかったとする考えも寄せられた。

定員割れ是正期待/学力差生じる懸念・学習塾関係者  県教委の入試改革に関し、県内で学習塾を展開する関係者は定員割れが続く現状の是正に期待する一方、入学後に学力差が生じることを懸念した。生徒の心理的負担や教員の業務的負担の増加を心配する声もあった。

 進学プラザグループ山形本部校の鈴木一郎校舎責任者は「受験機会が複数になることはいいことだと思う」と歓迎しつつ、「評価割合がどうなるかが注目だ。評定の重要性が増すのかどうかによって受験する生徒の懸念材料にもなる」と危惧する。さらに定員割れが目立つ状況に触れ、「各校の受験時期の多様化や、高校ごとに特色を出した試験内容が打ち出されることで是正につながることが期待される」と話した。

 山形練成会の深尾忠博塾長は、県内の一部で定員割れが続いていることを挙げ、「改善に向けた新たな試みは評価できる」と話す。一方で、入学後に生徒間で学力差が生じる可能性を指摘し「前期で合格が内定した生徒も学習を続ける環境づくりや、進学校の前期選抜では一定の学力試験を課すことも検討してほしい」と求めた。

 「受験機会が増え、生徒の特性を多様な観点から評価できることは利点だが、生徒や教員の負担が増えるのでは」と導入後の影響に懸念を示すのは東北大進学会の藤本佳胤(よしつぐ)山形本部長。前期で不合格となれば精神的な負担ものしかかるとし「後期で志望校のレベルを下げる生徒が増えるようでは本末転倒」と強調した。

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