【解説】トランプ前大統領が冒頭陳述 “4つの裁判・91の罪” 週4出廷で大統領選にも影響か SNSを主戦場に

アメリカ・ニューヨークで22日、トランプ前大統領が不倫相手への口止め料を不正処理した罪に問われる刑事裁判の冒頭陳述が行われた。
トランプ前大統領は、不満を表明しつつ、裁判の場を利用してSNSで支持者にアピールしようとしている。

不倫口止め料を巡る裁判「脅迫があった」との告発も

アメリカ・ニューヨークで22日、トランプ前大統領が不倫相手への口止め料を不正に処理した罪に問われている刑事裁判で、冒頭陳述が行われた。

大統領経験者を裁くアメリカ史上初めてとなる刑事裁判は、トランプ前大統領が不倫関係にあったポルノ女優に支払った口止め料を「弁護士費用」と偽って、業務記録を改ざんした罪などに問われているものだ。

冒頭陳述で、検察側は「トランプ氏は自身にダメージを与える情報を不正につぶそうとし、選挙をねじ曲げた」と主張し、今後の法廷で証拠を示していくとした。

一方、弁護側は、無罪を主張したうえで「選挙対策をすることは違法ではない」と反論。
トランプ前大統領は「私は各地で選挙活動をしているべきだ。長い間ここに座り続けることになり、不公平だ」と、水曜日以外の平日は出廷することが求められていることに対し、不満をあらわにした。

トランプ前大統領の裁判が、いよいよ本格的な審理に入った。

ここからはフジテレビ・立石修取材センター室長が解説する。

トランプ前大統領の出廷の様子は、世界中のメディアが注目していて、ニューヨーク中心部の自宅・トランプタワーから出てきて、車で移動する様子もヘリコプターで撮影している。
黒塗りの大型車両で、上空から見るかぎり約10台の車列で移動している。

トランプ前大統領は、全部で91の罪に問われているが、「不倫口止め料」、「機密文書持ち出し」、「大統領選開票に干渉」、「議会選挙の扇動」の4つの裁判を抱えていて、今回は、そのうちの最初の裁判になる。

この裁判は、トランプ前大統領が2016年の大統領選出馬にあたって、不倫関係にあったアメリカのポルノ女優ストーミー・ダニエルズさんに2000万円の口止め料を支払い、その費用を「弁護士費用」などと改ざんした罪に問われているものだ。

ストーミーさんは45歳で、トランプ前大統領はストーミーさんとの不倫関係について否認をしているが、ストーミーさんはCBSの番組に出演して、「トランプから手を引け」と脅迫されたこともあると告発している。

今回は「業務記録の改ざん」の裁判だが、検察側は不倫がばれないように、トランプ前大統領サイドが工作することで、選挙をねじ曲げたと主張している。

また裁判の中で、トランプ前大統領にネガティブな情報が出てくる可能性もあるため、大統領選挙への影響も出てくるとみられ、ストーミーさんサイドから詳細な事実が出てくると、かなりセンセーショナルに報道されると思われる。

SNSで若者層の取り込み狙う…1日29回の投稿も

ただ、こうしたピンチすら力に変えてしまおうというのが、トランプ前大統領だ。

23日の冒頭陳述でも、「これはすべてバイデンの裁判だ。これが選挙妨害だということは誰でもわかる。魔女狩りであり、残念なことだ」と発言し、トランプ節がさく裂している。

そして終了後に報道陣の前に姿を見せ、「初日は非常にうまくいった」と振り返り、本来は選挙運動をしているはずが、「こんなところ(法廷)に座っている、不公平だ」と主張している。

裁判の舞台も利用して、力強いフレーズで大きな権力と闘う自分というものを演出しており、アンチヒーローやダークヒーローのような存在であるということをアピールしていくという意思が見える。

さらに最近は、SNS上を主戦場に変え、自らが立ち上げたSNS「トゥルースソーシャル」への投稿を活発化させている。

ワシントンポスト紙の調査では、1日29回も投稿しており、これまでの大統領選をはるかに上回るペースだという。

投稿の文字も工夫しており、目に入りやすいように、すべてを大文字で書くことが増えており、2023年11月から3月までに、760件の投稿が大文字で書き込まれている。

本来ならネガティブになる裁判というものを、大統領選のPRに変えてしまおうという意向が受け止められる。

また若者に人気の中国系SNS「TikTok」について、バイデン大統領が安全保障の理由から禁止しようとしていることにトランプ前大統領は反対を表明していて、「もしTikTokが禁止されれば、バイデン大統領の責任だ!」と発言し、若者層の取り込みを狙っている。

トランプ前大統領らしい発言が随所に見られており、こういった影響もあり、これまでは不人気だった若者からの支持も拡大しているようだ。

2020年の大統領選では、18歳から29歳の若年層の62%がバイデン大統領に投票し、トランプに投票したのは35%だった。

2024年の支持率は、ロイター通信の調査によると、18歳から29歳の若年層の支持率がバイデン大統領が29%なのに対して、トランプ前大統領が26%と接近しており、トランプ前大統領に勢いがある。

「もしトラ」という言葉も広がっているが、各国の首脳クラスが次々とトランプ前大統領に会いに行っている背景には、こうした事情もあるのかもしれない。

アメリカ訪問中の麻生副総裁が、24日にトランプ前大統領と会談する方向で調整しており、その内容にも注目が集まっている。
(「イット!」 4月23日放送より)

© FNNプライムオンライン